テクノロジーの進歩により、私達の生活は大きく変化しました。例えば携帯電話。ガラケーからスマートフォンに進化したことは、世界的に大きな変革をもたらしました。そして、その次に注目されるのが「自動車」です。メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的プログラマーの中島聡さんは、日産の新型リーフ発表を例に、同社が米自動車メーカーテスラにも劣らない良い立ち位置を占めている理由を解説しています。
新型日産リーフ
先週、日産が新型リーフを発表しました。旧型と比べ、航続距離が(1回の充電で)100マイルから150マイルに伸び、デザインも洗練されたものになりました。また、自動運転機能も、アダプティブ・オートクルーズやオート・パーキングなど、テスラと同じレベルになっている様です。
発表イベントは生で見ましたが(ここで全編を見ることが可能です)、典型的な「WHAT」だけを語る日本的なプレゼンで、とても残念でした。私であれば、まずは電気自動車へのシフトがなぜ重要か、そしてどんな速度で起こっているのかを語った上で、日産がパイオニアでありリーダーであることをしっかりと強調した上で、どんな思いでモデルチェンジをしたのかを語った上で(つまり「WHY」)、WHATを語ることにより説得力を増す、というアプローチをとったと思います。
日産リーフは、2010年に発売された電気自動車で、(2012年に発売された)テスラのModelSや(2015年に発売された)ModelXよりも早く市場に導入された上に、安価なこともあり、累計で30万台と「世界でもっとも売れた電気自動車(参照:The Leaf Is the World’s Best-Selling Electric Car. Now, Nissan Needs to Catch Up With Tesla)」となっています。
ただし、航続距離が短く(100マイル)、あまり高級感もないため、「短距離の通勤向けに電気自動車は欲しいけれども、ModelSやModelXの値段は出したくない」と言う層に受け入れられて来た、ある意味「ニッチ」な存在でした。私の知り合いでは、会社のエンジニアが一人と、テニスコーチが愛用しています。
市場は、今回の発表を、日産によるテスラ Model3へのレスポンスと捉えており、日産自身も発表の中でテスラをライバルとして名を上げていますが、私は大きな違和感を感じています。
確かにModel3は、値段という意味では日産リーフに近づいて来ましたが、電気自動車の市場自体が拡張している今の段階で、真っ向からModel3と対決してもあまり良いことはない様に思えます。Model3があれだけ注目されているのは、Elon Muskやテスラという会社が大好きだけれどもModelSやModelXには手が届かないという、カルトとも呼ぶべきファンが大量にいるからです。
それよりも、「ガラケーからスマートフォンへのシフト」に匹敵する「電気自動車へのシフト」が起こっていることに注目しテスラとは上手に住み分けをしながら一緒に市場そのものを大きくしていくことが何よりも大切だと思います。
私と同じ様な意見を持つ人もいる様で、Electrekの「Nissan calls out Tesla by name and reignites ‘Tesla killer’ nonsense with the new Leaf」という記事は、新型リーフを「Tesla Killer」と呼ぶこと自体がナンセンスだと厳しく指摘しています。
いずれにせよ、この「電気自動車へのシフト」はまだまだ序の口で、これから3~5年の間に自動車市場が大きく変わることはほぼ確実だと私は見ています。その中で、テスラはもちろん、日産もとても良い立ち位置を占めていると私は思います。
image by: NISSAN