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いい大人が遊び倒してみて分かった「ミニスーファミ」3つの誤算

1990年代の懐かしのゲームハード「スーパーファミコン」を、手のひらサイズで復刻させた「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン(ミニスーファミ)」。これまで「ドライビングターボ」「ゲーム&ウォッチ」といった、数々の昭和オモチャを蘇らせてきたライターの小暮ひさのりさんも当然のように手に入れたようで、遊び倒してみたからこそ分かった忌憚のないレビューが、さっそく届いています。

名作タイトルが21本も収録

「うわ、また古いゲーム機引っ張り出してきた」

ゲームにほとんど触れたことが無い妻でも、この形状が「スーパーファミコン」だということはわかったのでしょう。しかし、それが1990年に発売されたそれではなく、2017年10月5日に発売された「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン(以後ミニスーファミ)」だということは、わからなかったようです。

今でもプレイすることもあるスーパーファミコンとの比較。手のひらに乗るほど小さくコンパクトになりました。

テレビとの接続はスーパーファミコンは赤白黄のAVケーブルでしたが、こちらは液晶テレビには標準となっているHDMIケーブルでの接続。ACアダプターはスマホの充電などに利用されるmicroUSBケーブルで、モバイルバッテリーでも動かすことができます。

本体上部のカセット挿入口はダミー。スーパーファミコンのカセットは利用できません。しかしその代わり、当時話題になった名作タイトルが21本も収録されています。収録タイトルは以下のとおり。

スーパーマリオワールド
F-ZERO
がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻
超魔界村R
ゼルダの伝説 神々のトライフォース
スーパーフォーメーションサッカー
魂斗羅スピリッツ
スーパーマリオカート
スターフォックス
聖剣伝説2
ロックマンRX
ファイアーエムブレム 紋章の謎
スーパーメトロイド
ファイナルファンタジーVI
スーパーストリートファイターRII
スーパードンキーコング
スーパーマリオ ヨッシーアイランド
パネルでポン
スーパーマリオRPG
星のカービィ スーパーデラックス
スターフォックス2

どれもゲーム史に、そして私たちの心に深く残る名作たちです。また後述しますが、やむなく発売中止となった幻のタイトルも、このミニスーファミには含まれているのです。

本当の強者は「おばけぬま」で勝負する

みなさんも、これらのタイトルの中から「このゲームは極めた!」というものや、今でも頭の中にシーンが浮かんだり、手が自然に動くものがあるのではないでしょうか。私もさまざまな作品をプレイしてきましたが、これらのなかであえて1作「今何をプレイしたいか?」と問われたら、間違いなく「スーパーマリオカート」と答えます。

現代までさまざまなマリオカートが発売されていますが、間違いなく至高の名作はこのスーパーファミコン版であり、最も完成度の高いコースは「キノコカップ・おばけぬま」であるという確信を得ています。

1vs1のレースでは、私は絶対的な自信を持っています。

このコースは速いだけでは勝てません。コーナーでは相手を突き落とし、ショートカットを駆使し、ショートカット出口にバナナを仕掛け逆転を防ぎ、ありとあらゆる手を使って勝ちを奪う。そしてその後物理的な勝負にまで発展する魔のコース、レースゲームという名の総合格闘技、それが「キノコカップ・おばけぬま」。当時中学生だった私は、小さなコミュニティのなかでしたが、村勇者として突き抜けた勝率を誇っていました。

25年ぶり……でしょうか。久しぶりにプレイした私の指は、当時のままにコース取り、タイミング、仕掛け、どうバナナを置けば勝てるのか? といった当時の嫌がらせ、もとい研鑽を、ほぼ完璧に再現できました。

ミニスーファミでは当時のゲームをソフトウェアで再現しているわけですが、ゲームスピードも当時のまま。ホンモノのスーパーファミコンではないにせよ、その再現度は完璧です。

当時のブラウン管を再現した描画モードや、「どこでもセーブ」機能も

画面の描画はクッキリとした描画だけでなく、アナログテレビを再現したモードもあります。このあたりはお好みで。個人的にはアナログテレビモードの方がドットの粗が目立たず、当時の雰囲気を味わえます。また、スクウェア(当時)のタイトルなどでは、アナログテレビモードで若干のにじみを与えることで、柔らかな陰影が再現され、ファンタジー世界の表現力が増す印象です。おそらくブラウン管テレビへの表示を想定したドット打ちが行われているのでしょう。当時のグラフィッカーのこだわりを感じさせられます。

ゲームをプレイしやすくする機能として、いわゆる「どこでもセーブ(中断ポイント)」に対応しています。長いRPGでも、難易度の高いアクションでも、この機能を活用すればカジュアル。子供の頃のようにまとまった時間が取れない生活の中でも、自分のペースで少しずつ進められることでしょう。

ミニスーファミに起こった3つの誤算

今回私がミニスーファミを手に入れ、過去の思い出や未プレイだった名作たちに触れる中で、3つほどの誤算がありました。良いものも、そうでないものもです。

1.今では斬新さが伝わらなかった未来の可能性「スターフォックス2」

3Dポリゴンでゲームを描いたシューティング「スターフォックス」。スーパーファミコンには3D描画能力がないにもかかわらず、ゲームカセットに特殊描画チップを搭載し、疑似3Dを表現するという力技は当時でも大きな話題となりました。そして、その続編として開発されていながらも、お蔵入りになった幻の作品「スターフォックス2」が、今回のミニスーファミには収録されているのです。

これが判明した時には、ゲームファンの間では大きなざわめきが起こりました。「まさか2017年の現代に、失われた幻の作品を楽しむことができるのか! 」と、僕も期待感を募らせていました。

しかし、幻はあくまでも「当時の幻」でした。

3D演出は確かにスーパーファミコンの限界を超えていると言えます。しかし、画面に表示されるのは、「スターフォックス」同様にペラペラとした飛行機。「スターフォックス2」ではガウォーク形態になるといった変形ギミックが追加されていますが、やはり高度な脳内補完能力が問われます。そもそも「スターフォックス」は、3Dという新たな演出手法をテーマにしたチャレンジ作であり、そのチャレンジはあの時代だからそこ魅力へと還元されたのでしょう。

もし「スターフォックス2」を心から楽しみたいのであれば、後の3D対応ゲーム機が発売される前、初代「スターフォックス」が発売された1993年まで魂をタイムスリップさせなければなりません。そうすれば、失ってしまった未来の可能性、本来受け取られるべき感動を得られるはずです。

2.形・大きさが再現されたコントローラーには、まさかの互換性

ミニファミコン(ニンテンドークラシックミニファミコン)が発売された時、多くの人が懸念したのがそのコントローラーのサイズ。本体が小さくなったのと同様に、コントローラーまで小さくしてしまいました

一方でミニスーファミは、コントローラーのサイズ・デザインが当時のままなのです。これには本当に「よくやった!」と言いたいです。ミニスーファミ収録タイトルのなかには、かなり本格的なアクションゲームやレースゲームなどが含まれます。コントローラーが同じサイズ・デザインなら、当時の操作感まで再現できるのです。

そして、端子部の形状がWiiリモコン用コントローラーと同じで、Wii用コントローラーが利用できるのところも、嬉しい誤算でした。

ノスタルジックさは落ちるものの、アクションゲームはWii用の「コントローラーPro」のほうがホールド感が高く、操作も快適でした。

3.品薄となるも、活かされたミニファミコンの教訓

以前発売されたミニファミコンでは、そもそものニーズが出荷数を大きく上回ったうえに、販売後も再販が行なわれなかったため、転売により価格が高騰してしまいました。今回のミニスーファミも予約スタート直後から、転売屋による価格のつり上げが行われ、単純にゲームを楽しみたいファンからは怒りの声が巻き起こっていました。

しかし、です。

いざ発売されてみると、当日販売分は潤沢に用意されており、当日抽選を狙って朝から並んだ人でも抽選せずに全員が買えるという、ある意味異常事態となりました。以前から購入を狙っていたファンにとっては、無事に購入できたという嬉しい誤算。その反面で転売を狙っていた者にとっては、本当に誤算であったことでしょう。

しかし、販売日の10月5日は平日だったため、予約漏れをし、なおかつ当日販売分も抑えることができなかった層。また、こういったレビューや話題を見聞きしているうちに欲しくなった層などは、現段階で手に入れるのは難しい状況です。

原稿執筆時の10月10日現在、家電量販店を中心に4店舗ほど回ってみましたが、どの店舗もすでに売り切れ状態でした。Amazonなどの通販サイトでは、Amazon以外の出店者から1万2000円前後の値段が付けられています(参考価格は税込み8618円)。しかし、任天堂の公式Twitterでは、10月5日以降も出荷を行なうという旨の投稿があります。

また私が任天堂に直接問い合わせてみたところ、生産は2017年末まで継続して行なわれ、順次出荷していくとの回答を得られました。焦らずとも、年内には欲しい人にはおおよそ行き渡るのではないかと予想されます。

そうです、今すぐは無理だとしても、少し待てば買えるのです。往年の名作たちに再びまみえる時を待ちましょう。

時代とともにゲームの演出やシステムは進化を遂げ、我々のゲームを見る目も肥えています。ひょっとしたら画面とコントローラーを通じて得られるのは、当時そのままの熱狂ではないかもしれません

しかし、クラスのみんなと情報を交換した休み時間、夕飯までの時間でコツコツ進めた思い出、友だちと集まって回しプレイしたあの賑わい。クリアして得た感動、クリアできなかった悔しさ……。スーパーファミコンを通じて生まれた数々の思い出たちは、きっと元の色を取り戻すことでしょう。

小暮ひさのり

文/ 小暮ひさのり

ガジェット類が大好物。雑誌やWebで執筆しているテクニカルライター。群馬県在住で農業が趣味であるため「兼業ライター」と揶揄されることもあるが、本人的には農業1割、執筆9割。

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