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ザッカーバーグが課題書に選んだことで20万部も売れた話題の書

ザッカーバーグが主宰する「ブッククラブ」の第1回課題図書に選ばれるや、全米で売り切れ書店が続出した話題の書「権力の終焉」。センセーショナルなタイトルですが、どのような内容なのでしょうか。メルマガ『佐々木俊尚の未来地図レポート』で、佐々木さんが詳しく紹介してくださっています。

ザッカーバーグお勧めの本「権力の終焉」を読む

● 『権力の終焉』 モイセス・ナイム・著 日経BP社 

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが今年から始めた「ブッククラブ」で、第1回の課題書に選んだ本。これによって全米で20万部超のベストセラーとなったそうです。非常に興味深く拝読しました。

さまざまな情報が手に入るようになって、たとえ終身雇用の会社に勤めている人であっても、「会社の中のことしか知らない」というようなあり方はなくなってきています。自分の世界と外界はシームレスにつながるようになってきているということなんですね。「権力の終焉」はこう書いています。

ほとんどの人々は、世界、隣人、従業員、勢力者、政治家、政府を、自分たちの親が見ていたようには見ていない。それはいつの世でも、ある程度あったことだ。しかし、現代はかつてないほど広い範囲で、かつてなく安い費用で、移動したり、学んだり、他人とつながったり、通信したりできる資源と能力が得やすくなった。そんな状況が人々の認識や感情に与えているインパクトが、豊かさ革命と移動革命の相乗効果によって大幅に増大している。この事実が、世代間の意識、そして世界観の隔たりを否応なく際立たせているのである。

振り返って見れば、ヨーロッパの絶対王政のころから近代の国民国家にいたるまで、国家というシステムは「上意下達」でした。システムの管理者は権力者として上座にいて、国民を上から指示し命令し、規範を押しつけていたのです。管理する側とされる側は、分離した存在だったといえるでしょう。だから「殺す側と殺される側」「権力者と反権力」といった二分論が成立したのです。この二分構造で社会や政治を語る人は、いまの日本にもたくさんいます。

しかし、いま起きているマイクロパワーの台頭は、まったく違う権力構造をつくり出そうとしているのです。国家の力が相対的に下がり、さまざまなマイクロパワーが相対的に増大し、そこでは権力は上からやってくる所与の力としてではなく、さまざまなパワーの相互作用というようなものへと変質していくことになるからです。

もちろん政府や自治体が統治機構としての意味をなくすわけではありません。でも、それらの統治機構は、人々や組織などさまざまなパワーの間の相互作用としてしか生成されません。マイクロパワーが相互につながり、さまざまなパワーゲームを行うことによって生まれてくるネットワーク的なものが新しい統治の形態となるということなのです。

私はこの構造変化をくり返し訴えてきており、本書の主張にはたいへんうなずけるものがありました。お勧めの本です。

 

佐々木俊尚の未来地図レポート』より一部抜粋

著者/佐々木俊尚(ジャーナリスト)
1961年生まれ。早稲田大政経学部中退。1988年毎日新聞社入社、1999年アスキーに移籍。2003年退職し、フリージャーナリストとして主にIT分野を取材している。博覧強記さかつ群を抜く情報取集能力がいかんなく発揮されたメルマガはメインの特集はもちろん、読むべき記事を紹介するキュレーションも超ユースフル。
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