スペインのカタルーニャ州がスペインからの独立を求めて住民投票を行ったことが大きなニュースとなっています。「国家と地域の対立」など日本では想像もできないことですが、欧州では国家からの独立を目論む地域はカタルーニャ州だけに限ったことでは無いようです。メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者・高城剛さんは、カタルーニャ州に続き独立の可能性があるとして、日本ではほとんど語られないドイツの「ある地域」について明かしています。
カタルーニャに続けとばかりに独立を宣言しかねない、ある地域のこと
今週は、もしカタルーニャがスペインから独立に成功しEUに留まれた場合、次にそのような独立を目指すのは、どの地域になるのか、私見たっぷりにお話ししたいと思います。
長い歴史を持つ欧州は、20世紀に2度にわたる大きな大戦を経て、EUという大きな枠組みを作ることに成功しました。
もともと大陸ではなく、ユーロとは違う独自通貨ポンドを使い、一度も戦争に負けたことがない英国がEUから離脱するのと違い、カタルーニャのスペインからの独立は、20世紀に枠組みされた国家という体制が崩壊し、地域とより大きな集合体の時代に突入したことを意味します。
現在、EUはカタルーニャの独立に反対しています。
その真意は、EUがこのように地域独立を認めてしまうと、他の地域も続々と独立表明しかねない可能性が高まり、その最大の懸念地域が、ドイツのバイエルンです。
ミュンヘンを抱えるドイツ南部のバイエルン州は、ドイツでは最大の州であり、スイス、チェコおよびオーストリアとの国境に位置します。
BMWやアウディがある欧州随一の裕福な州で、歴史を振り返りますと、10世紀に神聖ローマ帝国によってバイエルン大公国(公国)が設けられて以後、幾つかの戦いを経てドイツ諸国はバルト・ドイツ人やスラヴからなるプロイセン王国と、バイエルン人のオーストリア帝国という二大国だったことからもわかるように、バイエルンは、いわゆるドイツ人とは異なります。
それゆえ、自らを「ドイツ人ではなくバイエルン人だ」という人も少なくありません。
これは、カタルーニャの人たちが、「スペイン人ではなくカタランだ」と話すのに似ています。
また、宗教も政党も異なります。
ドイツは全般的にプロテスタントが大半で、メルケル首相率いるCDU(キリスト教民主主義)もプロテスタントを支持母体にしています。
しかし、バイエルンは半数以上がカトリックなのです。
それゆえ、ドイツ与党CDUがこの州には存在せず、代わりにCSU(キリスト教社会同盟)の牙城となっており、CDUと協力関係にあります。
しかし、先月のドイツ総選挙でCSUの支持が急落し、一方、4.4ポイントから12.5ポイントと極右政党AfDが票を大きく伸ばしました。
このAfDのバイエルン支部が、国境を超えて同じく極右政党オーストリア自由党との協力関係(ブラウ同盟)を構築したことは、昨年大きく報じられましたが、さらに接触しているのが、バイエルン愛国党です。
バイエルン愛国党は、バイエルン王国の復活を目論む政党で、事実上地域独立を目標に掲げた政党です。
AfDのバイエルン支部が、国境を超えて極右政党オーストリア自由党との協力関係を結んだことからわかるように、バイエルンはドイツではなく、オーストリアの一部勢力とともに、失われたバイエルン王国の復興を目指していると考えられます。
もし、国家的に票を伸ばす極右政党と地域的極右政党が国境を超えた地域で手を結ぶと、なにが起きるのか分かりません。
もし、欧州一裕福なバイエルンが地域独立すると、EUそのものが破綻してしまいます。
ドイツ一強と言われるEUですが、そのドイツはバイエルン一強なのです。
EUから英国が離脱したように、いま、なにが起こっても不思議ではありません。
それだけが、唯一の真実だと思います。
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