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専業主婦の年金が増額も。第3号被保険者特例ってオイシイの?

国民年金の支払いが免除される専業主婦などの「国民年金第3号被保険者」ですが、かつて自ら届出をしなければならなかった時期があることをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、これを知らずに未届出のままで年金受取額が少なくなっている人がいることを指摘。さらに、今からでも間に合う「第3号被保険者特例」の使い方についてもわかりやすく解説しています。

過去に配偶者の扶養に入ってたはずだけど届出を忘れちゃって年金額に反映されていない事がある

僕はよく、国民年金第3号被保険者っていう用語を使いますが、ちょっと復習ではあるんですけど、この人達はサラリーマンや公務員(国民年金第2号被保険者という)の配偶者の扶養に入っていて、国民年金保険料(平成29年度月額16,490円)を支払わなくても支払ったものとして将来の老齢基礎年金に反映する人です。主に専業主婦(主夫)あたりが該当。パートやアルバイトのような人も主に年収が130万未満である人が該当。

保険料を支払わなくても未納どころか支払済みとみなされて将来の年金額にも反映するから批判がよくあるんですが、この第3号被保険者の保険料分はサラリーマンや公務員が支払う厚生年金保険料分に含まれている形になっている。

第3号被保険者というのは昭和61年4月から始まり、女性の年金権を確立して自分名義で将来の年金が受け取れるようにされたもの。昭和61年3月まではサラリーマンや公務員の専業主婦は国民年金には強制的に加入しなくても良かったから、加入してなかった人は将来全く年金が出ない事になっていたし、加入してない時に万が一障害を負っても障害年金が出ないリスクがあった。女性の年金権が確立された為、当時は非常に評価された制度。

しかし、「共働き世帯」が「専業主婦世帯」の数を逆転してきた平成9年あたりから働く女性からの批判が強まり、第3号被保険者は不公平だ! と叫ばれるようになってきた。しかし、両者の世帯の収入と比べると世帯で受給する年金額は結局同じになるから不公平になっておらず、制度自体は合理的。結構感情的な面で批判されてるっていうか…。

年金が優遇される「専業主婦」は本当に得なのか、比較検証してみた(まぐまぐニュース参考記事)

健康保険も扶養に入ってたら、被扶養配偶者分の健康保険料を支払わなくても3割負担とかで医療が受けられるわけで、こちらの医療の面は特別何か不平不満はあまり聞かないんですけどね。健康保険は保険料を負担させなくてもいいけど年金はダメ! っていうのもなんでかなーって感じです…^^;。

さて、その第3号被保険者は今はサラリーマンや公務員の夫(妻)が働いている会社の事業主経由で、年金事務所に届け出て配偶者を第3号被保険者にするという形を取っています。ただ、昭和61年4月1日から平成14年3月31日までは自ら第3号被保険者を市区町村に届け出ないといけなかった。ちなみに昭和61年4月1日時点で第3号被保険者の条件に該当してた人は事業主が届け出ている。

だから、第3号被保険者に該当する条件を満たしていたのに未届けであるが為に未納というか未加入状態になり、年金額に反映していない人もいる。未届け期間が多かったのは昭和61年4月から平成14年3月までの自ら第3号被保険者になる事を市区町村に届け出なければならなかった期間。

普通は保険料の過去の滞納とかは保険料徴収の時効が過去2年間が限度なので、2年を過ぎると保険料徴収権の時効で届け出が遅れた分は認められなかった。よって、平成17年4月から第3号被保険者特例というのが設けられ、過去の未届け期間を第3号被保険者期間とする事が出来るようになっています。まあ、平成7年4月から平成9年3月まで一時的に特例を設けた時もありましたが…。

この第3号被保険者特例が認められると過去の第3号被保険者期間になってない期間が第3号被保険者期間になり、将来の老齢基礎年金額に反映する。平成17年3月まではなぜ届け出なかったのかの理由は問われないが、平成17年4月以降の未届けは未届けについてやむを得ない理由がある事が必要。届け出が遅れた理由書等を書いてもらわないといけない。

ただし、当時の扶養状況を見ないといけない為に所得証明書など所得がわかる書類が必要になりますが、所得証明書は過去5年度分しか発行されないので、未届け期間中に健康保険の扶養に入ってたとかで全国健康保険協会(協会けんぽ)のデータにその記録があれば第3号被保険者特例が認められる事もある。よって、過去に第3号被保険者に該当してると思うけどなぁ~みたいな人はまずは年金事務所相談になる。ちなみに第3号被保険者の未届けは年金請求時に、年金記録を確認する時に見つかりやすい。よって事前に過去の年金記録を確認しておく事が大事。

というわけで、第3号被保険者特例が認められた場合の事例を少し…。

1.昭和24年10月29日生まれの女性(今は68歳)

年金記録は20歳になる昭和44年10月から平成2年6月までの249ヶ月は国民年金保険料納付済み。平成2年7月にサラリーマンの夫と婚姻し専業主婦になる。しかし、自ら第3号被保険者の届け出を市区町村にやるのを忘れていてそのまま夫の扶養であった平成13年5月までの131ヶ月未納になっていた。

平成13年6月から平成18年5月までの60ヶ月は国民年金保険料納付済み。平成18年6月から60歳前月である平成21年9月までの40ヶ月は国民年金保険料未納。で、65歳になってからは老齢基礎年金309ヶ月分の年金を受け取っていた。

しかし、平成29年10月である今月に第3号被保険者特例を知り、この届け出が認められた。となると未納131ヶ月の部分は第3号被保険者期間となり、国民年金保険料納付済み期間が309ヶ月から131ヶ月プラスの440ヶ月となる。よって老齢基礎年金額は、

増額する。なお、年金記録漏れとは異なり、年金受給権が発生した時点まで年金額は遡らない為(この女性なら65歳時点)、第3号被保険者特例の請求をした月の翌月からしか年金額は増額しない。よって平成29年11月分からの年金額の増額となる。なので、請求月に影響を受けるので3号特例が使えそうな場合は早めに年金事務所相談を。できれば、老齢基礎年金の支給が開始される65歳までには過去の自分の記録を確認しておきましょう。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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