昨年来、ブームとなっている「あごだし」。「あご」と呼ばれる飛魚を使った最高級のだしが多くの日本人の舌を魅了していますが、そんなあごだしを自販機でも販売する企業が注目を集めています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、話題となっている「二反田醤油」の戦略・戦術を徹底分析しています。
消費者の注意をひく
料理に使われる「だし」の自販機で話題の企業を分析します。
戦略ショートストーリー
だしにこだわる方をターゲットに「最高級のだし(素材=トビウオ)へのこだわり」に支えられた「美味しい料理が手軽にできる」「コクが深く、豊かな香り」等の強みで差別化しています。
だしの自販機というユニークさやトビウオが丸ごと1匹入ったインパクトで注目を集め、購入者が品質の良さを紹介したSNSが話題になることで、人気が高まってます。
分析のポイント
消費者の注意をひく
大手企業が展開するような有名ブランドを持たない中小企業には、より消費者の注意をひくことが求められます。なぜなら、存在に気づいてもらえなければ、購入してもらえないですからね。
しかし、小売店では、大手のブランドがより多く、より目立つ場所に陳列されますので、中小メーカーの商品は、あまり目立たず、消費者の注意をひくことが難しいと言えます。そのような中で「二反田醤油」は「だし」の自販機というユニークな打ち手を展開することで、話題になり、消費者の注意をひくことに成功しました。
ちなみに、自社の自販機で販売するのメリットの一つが並べる商品を選ぶことができることです。「二反田醤油」の場合は、自社商品しか置いていませんので、売り場(自販機)において、比較対象が自社の商品のみとなります。つまり、小売店では埋もれてしまう存在を際立たせることができるわけです。
そして、商品を卸せば売れる大手メーカーにとっては、自社で自販機を展開することは非効率ですし、卸業者との関係もありますから、真似をされる可能性は低いと思います。
また、話題になれば、売れるというわけではないです。いくら珍しいからといって、それが直接購入に結び付くかというとそれほど簡単ではありません。実際に「だし」を自販機で売っていると聞いて、買いたいと思いますか? 恐らく、買う方がいるのかと疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
プロモーションで重要なことは見込み客に買いたいと思わせることです。いくら話題性を高めても、買いたいと思わせることができなければ、あまり意味がありません。
今回、注目したい点は、「だし道楽」を話題にしている方、つまり、SNSやブログなどで「だし道楽」を紹介している方は「だし」の自販機のユニークさを伝えるとともに、自販機で売られている「あごだし」を使った「だし道楽」という商品の良さ、美味しさも伝えていることです。これにより、試してみたい(買いたい)と思う方が増えることにつながっていると思われます。
どういうことかというと
- だしの自販機 → 注目を集める
- だし道楽を使った感想の拡散 → 買いたいと思う方の増加
という流れになっているわけです。要するに、認知を高めて、認知した方に買いたいと思わせるプロモーションになっているということです。しかも、自販機設置のコストはあるにしても、広告宣伝費はほとんどかかっていないと思われますので、費用対効果の高いプロモーションといえるでしょう。
上記のように大きな広告予算を持たない「二反田醤油」のような中小メーカーでも、売り方の工夫により顧客の支持を集めることができるという好事例だと思います。
今後、「二反田醤油」の自販機がどこまで拡がっていくのか注目してきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):あごだしの製造・販売
- 競合(お客様の選択肢):だしを製造しているメーカー、あごだしを製造しているメーカー など
- 状況:和風だしの素の市場規模は縮小傾向のようですが、その中でも「あごだし」は成長カテゴリーとなっています。
■強み
1.美味しい料理が手軽にできる
- そのままかけて、卵かけご飯、釜玉うどん、お豆腐に
- 隠し味で、パスタ、みそ汁、野菜炒め、チャーハンに
- お水で希釈すれば、鍋物、煮物、おでん などに
2.コクが深く、豊かな香り
- 魚の臭みやクセが少ない
- 上品であっさりした甘みがある
- 高級感があり、深いコクのあるうまみが特徴
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
「最高級のだし(素材=あご)へのこだわり」
- 商品の品質
- 商品開発力
上記のような、こだわりが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- だしにこだわる方
◆戦術分析
■売り物&売り値
「だし道楽 焼きあご入り(500ml):700円」
「だし道楽 プレミアム『焼きあご・宗田節・昆布入り』(500ml):750円」
- 飛魚(トビウオ)のことを山陰や九州地方では「あご」といい、和風料理では、「あごだし」が最高級のだしといわれています
- 長崎近海で漁獲された「トビウオ」を炭火で焼いた「焼きあご」を丸ごと1匹と昆布が入ったつゆの素です。
→お水で薄めるだけで美味しいお料理が手軽にできます - 煮物、おでん、鍋もの、ぞうすい、炊き込みご飯、茶碗蒸し、だし巻き玉子等が、だし道楽を使えばおいしく手軽に作ることができます
■売り方
「注目を集める仕掛け」
- だしの自販機というユニークさ、珍しさ
- 利便性と話題性を考慮して自販機の設置場所を選定
⇒実際にSNSで話題になっており、多数のメディアに取り上げられています
■売り場
- 直営のうどん店
- オンラインショップ
- 自動販売機
→主にコインパーキング(三井のリパーク)の一角に設置
※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by: だし道楽(二反田醤油)