「ブラック企業」は、従業員を不幸にするだけでなく、一度そのレッテルが貼られていまえば企業の信頼は失墜し、相応の社会的制裁を受けることになります。そんな事態を避けるために、今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で社労士の飯田弘和さんがブラック企業の特徴を挙げるとともに、「ブラック企業大賞2017」にノミネートされた企業の実態も紹介しています。
御社は、ブラック企業になっていませんか?
「ブラック企業」の定義、知っていますか? もともと、「ブラック企業」とは、「新興産業において、若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使い潰し、次々と離職に追い込む成長大企業」というものでした。「ブラック企業」という言葉が、広く一般に知れ渡るようになってからは、もっと広い意味で使われるようになりました。最近では、「ブラック企業」という言葉が独り歩きしてしまい、ちょっと気に入らないことがあると、「ウチの会社はブラック企業だ!」「あの会社はブラック企業だ!」などと言って回る者もいます。
今では、次のような企業を「ブラック企業」と呼ぶようです。
- 法律を守らない企業
- 働いている人を、人間として扱わない企業
- 違法な長時間労働を強いて、労働者の心身を危険にさらす企業
- パワハラがまかり通っている企業
- 悪徳業者(これはちょっと違うような気がしますが…)
では、「ブラック企業」の特徴とは、どの様なものがあるのか? これから10項目挙げます。この10項目を、御社では、絶対に行わないでください。
ブラック企業チェック10項目
- 労働条件通知書や労働契約書がない
- 長時間労働を強いる
※1ヶ月の時間外労働80時間が、過労死ラインです - 社員を、「名ばかり管理職」や「請負」にして、残業代を支払わない
- セクハラやパワハラが横行している
- 退職届を出しても受理しない(辞めさせない)
- 平均勤続年数が短い(離職率が高い)
- 試用期間がやたらと長い(3~6ヶ月を超えれば、長過ぎでしょ!)
- 社会保険や労働保険制度への未加入
- 経費を社員に自己負担させたり、損害を全額弁償させている
- 違法行為を強いる
まだまだ沢山ありますが、せめてこの10項目だけでも、当てはまる事がない様にしてください。もし、「ブラック企業」と世間から認知されれば、御社の「信用」と、従業員の「士気」を一気に失い、御社は、社会での居場所を失います。
ちなみに、「ブラック企業大賞2017」ノミネート企業は、以下の顔ぶれ。
・ゼリア新薬工業株式会社
2013年4月にMR(医薬情報担当者)として入社した当時22歳の男性社員が、新人研修受講中の同年5月18日に自殺した。
・株式会社いなげや
2014年5月、「いなげや」志木柏町店(埼玉県志木市)のチーフだった男性社員が勤務中に突然呂律が回らなくなり救急搬送され入院。一度は仕事に復帰したが、店の駐車場で倒れているところを客に発見され、意識が戻らないまま同月21日に脳血栓により亡くなった。いなげやでは2003年10月にも従業員が過労自殺し、のちに労災と認定されており、過労による死者が出たのは二度目である。
・パナソニック株式会社
2016年6月、パナソニックデバイスソリューション事業部に勤務する40代の男性社員が自殺。男性の残業時間は2016年5月で100時間を超えていたという。
・新潟市民病院
2016年1月、37歳女性研修医が、長時間勤務が続いたことで睡眠薬を服用して自殺した。女性の月平均残業時間は187時間、もっとも長い月で251時間だった。
・日本放送協会(NHK)
2013年7月、当時、31歳だった女性記者がうっ血性心不全で死亡した。亡くなる直前の2013年6月下旬から7月下旬まで1カ月間の時間外労働(残業)は159時間37分。5月下旬からの1カ月間も146時間57分にものぼった。
・株式会社引越社、株式会社引越社関東、株式会社引越社関西(アリさんマークの引越し社)
引越社関東所属の男性営業社員をシュレッダー係に配転したり、懲戒解雇したしりした。懲戒解雇においては、その理由を「罪状」などと記載して男性の顔写真を入れた書類(罪状ペーパー)を、引越社グループの店舗に掲示するなどした。さらに、同社は同様の文面を全従業員に送る社内報にも掲載し、送付した。
・大成建設株式会社、三信建設工業株式会社
東京オリンピック・パラリンピックで使用するメインスタジアム「新国立競技場」の建設工事の元請け企業である。今年3月、三信建設工業の新人男性社員(当時23歳)が自殺した。男性が自殺する前の1カ月の残業は約190時間であったという。
・大和ハウス工業株式会社
2017年9月、同社が埼玉西支社に営業職として勤務していた20代男性に違法な時間外労働をさせ、川越労働基準監督署から同年6月29日付で是正勧告を受けていたことが、男性が加盟する「ブラック企業ユニオン」の会見で明らかになった。男性の残業時間は2015年5月には月109時間に到達。長時間労働の末うつ病になった男性は、2016年5月に退職を余儀なくされていた。
・ヤマト運輸株式会社
2016年12月には、神奈川平川町支店のセールスドライバー(SD)に対して残業代の未払いなどがあったとして横浜北労働基準監督署から是正勧告を受けたほか、2017年5月にはパート従業員の勤務時間改ざんと賃金の未払いがあったとして、同社西宮支店に西宮労働基準監督署から是正勧告を受けている。さらに17年9月20日には、博多北支店のSDに対し労使協定で定めた残業時間上限(1カ月95時間)を超える月102時間の残業を違法にさせていたとして、法人としての同社と、同支店の幹部社員2人が労働基準法違反の疑いで福岡地検に書類送検されている。
以上を踏まえて、あらためてお聞きします。
「御社は、ブラック企業になっていませんか?」
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