中小企業にとって深刻な問題となって久しい後継者難。どうにも打つ手がなくやむなく廃業という選択をする経営者も多いと聞きます。そんな企業の強い味方となるのが、今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』で著者の梅本泰則さんが紹介している「事業引継ぎ支援センター」。記事中梅本さんは同センターについて詳しく記しています。
後継者を探せ
スポーツショップにおいても、後継者の問題は切実です。店主が高齢になっても、後継者が見つからないお店もあります。一方、私が親しくしているお店の多くは立派な後継者がいますし、後継者候補もいます。後継者がいなくて困っているお店に比べれば何とも恵まれたお店です。
とはいえ、そんなお店にも少しだけ不安があります。それは、先代と後継者の間で十分な話し合いがされていないところがあるからです。例えば、事業の思いや方向性について、十分に話がされていなくて、しかもお互いの考え方が違っているお店があります。特に親子の場合は起こりやすい問題です。のちのち、経営トラブルになる可能性があります。
また、こんなことも先代は後継者に伝えていません。
- 資金繰りの上手な方法や、財務の勘所
- 銀行との折衝の仕方やいい関係の作り方
- 自分となじみのお客様の情報
- メーカーさんや問屋さんなど取引先の人脈
- 個人保証や担保についての引き継ぎ方
- 自社株式の評価
これらは、代替わりする直前で良いと考えているか、経営を引き継いだら自然と覚えるだろうと思っているからです。なかなかそうはうまく行きません。ですから、伝えていないことがあれば、今のうちから伝えておくことです。とはいえ、これらを直接はうまく伝えられません。実は、先代はなかなか後継者に厳しいことや細かいことは言えないのです。どうしたらいいでしょう。
それは、第三者の手を借りることです。先代だけでなく、後継者は後継者で言いたいことがあります。それを、顧問弁護士とか税理士とかコンサルタントとか、信頼のおける人にぶつけてみましょう。そうすれば、間接的ですが、うまく伝わるはずです。
後継者のいない店
さて、問題なのは、後継者のいないお店です。この問題は、スポーツ業界に限ったことではありません。「中小企業白書2017」には、後継者がいないか、または決まっていない企業の割合が経営者の年代ごとに示されています。それによれば、中規模企業の後継者不在・未定の比率は
- 50代経営者の企業では、75%
- 60代経営者の企業では、52%
- 70代経営者の企業では、41%
となっています。また、小規模企業におけるその比率は
- 50代経営者の企業では、72%
- 60代経営者の企業では、41%
- 70代経営者の企業では、30%
です。一番企業数の多い、60代経営者の企業では、中規模企業で5割、小規模企業で4割の後継者がいない、ということになります。スポーツショップでも、そんな割合なのかもしれません。そうであれば、深刻な事態です。後継者がいなければ、「廃業」ということにもなりかねません。これは何とかしたいものですね。何か良い手があるのでしょうか。
考えられる方法として「事業引継ぎ支援センター」を利用するというものがあります。「事業引継ぎ支援センター」をご存知でしょうか。
事業引継ぎ支援センターを活用
「事業引継ぎセンター」とは、公的機関で、全国都道府県に設置されています。事業承継、主にM&Aを推進することを役目としています。ご存知のように、M&Aとは事業譲渡、買収のことです。
このM&Aというと、何だか大企業が行うことのように感じますよね。ところが、ここ数年、小さな企業のM&Aが増えてきているそうです。その証拠に、民間のM&A仲介企業が急成長しています。その民間仲介企業で、中小企業の案件が増えているのです。それと同じように、「事業引継ぎセンター」での相談件数が増えています。
そこで、「愛知県事業引継ぎ支援センター」の方のお話を伺ってきました。お話によると、愛知県の場合は、この6年間で600件の相談があったとのこと。その企業の平均年商は2.4億円で、2億円以下の企業が9割とのことでした。予想以上に小さい規模ですね。しかも赤字の企業は34%もあったといいますから、びっくりです。また、その平均従業員数は16名で、10名以下の企業は6割に上ります。もちろん、全部の相談企業がM&Aに成功したわけではありませんが、ほとんどが小さな規模の企業であったことは確かです。
そして、譲渡先を探すのに、民間仲介企業25社と提携をしているそうですから、心配はいりません。さらにいえば、直接民間企業と相談するよりも、かかる経費は低いそうです。そうであれば、後継者のいないお店は、事業引継ぎセンターを頼ってみるのも一つの選択肢です。長年築き上げてきたお店の信用やノウハウを引き継いでもらえます。何よりもお客様や従業員を守ることもできるでしょう。後継者がいないからということで悩んでおられるお店は、一度検討されてはいかがでしょう。
■今日のツボ■
- 先代から後継者に思いを伝えるには、第三者を利用する。
- 60代経営者の企業では、4割から5割の企業で後継者がいない。
- 事業引継ぎセンターを活用して、後継者問題を解決する。