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本当に効率良い?いま流行りの「マルチタスク」に弁護士が疑問符

インターネットやSNSの普及で、今や「マルチタスク」と呼ばれる同時並行の作業スタイルが定番化しています。ビジネス書などでも「有能」「効率的」という意味で紹介されることが多いですが…、無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』の著者で現役弁護士の谷原先生は、「生産性が高いように見えているだけで、実際は一つの仕事に集中した方が効率が良い」との異論を唱えています。

マルチタスクはやめよう

こんにちは。

弁護士の谷原誠です。

最近、「マルチタスク」という言葉をよく聞くようになりました。もともとは、パソコンの性能向上に伴い、ソフトを多数立ち上げ、同時に作業することが一般的になったことから注目されるようになった用語。転じて、パソコンに限らず、様々な仕事を同時に行うスタイルを指す言葉として定着しています。

パソコン上で文書作成をしながら、エクセルも同時に立ち上げ、新着のメールもチェックするといったことは日常茶飯事。また、その間も、手書きの作業をしたり、部下に指示を送ったり、電話対応したりといった、アナログな動作を同時に行っている人も多いと思います。

時間管理の観点からみると、複数の作業を同時に処理することで、効率が上がっているのかどうかが問題になります。マルチタスクはいかにも時間内の仕事の総量が増えそうで生産性が高いように思えますが、現実には疑わしいことが多いのではないでしょうか。

並行して複数の仕事をしていると、あちこちに思考が飛び、元の仕事に戻る時、今までの仕事内容と進捗を復習してから、改めて「ゾーン」に入らなくてはなりません。人は結局まったく同時に二つのことはできないのですから、どうしても時間のロスが生じます。メールやSNSに気を取られ、デスクワークに集中できなくなったことは誰でもあるはず。

また、集中しようとしたとき、上司や同僚から話しかけられたり、電話がかかってきたりして、イライラした経験がある人も多いのではないでしょうか。時間を本当に有効に使うには、並行して複数の仕事をこなす方法ともさることながら、一つの仕事に集中しそれを妨げるものを排除する方法を考えるべきです。

現実的に、上司から指示を受けた場合に無視することはできないでしょう。自分に電話がかかってきた場合も、放置するのは難しいと思われます。自分の仕事だけに集中できるのは、これらの優先順位が高い仕事が、頻繁に入らない時間ということになります。

たとえば、電話があまりかかってこない時間を探してみると意外とあるものです。始業時間前かもしれませんし、昼休み、夕方以降かもしれません。また、同僚や部下に電話対応を頼める時間もあるでしょう。その時間帯を、集中できる時間として意識します。

また、メディア特性も重要です。メールであれば、返信が2、3時間後になったからといって問題はありません。緊急の用事であれば、電話など他の方法を使うはずです。そのため、集中する時間は緊急度が低い用事を視界から排除する必要があります。時には、人に「今から集中するから話しかけないで」と頼む必要があるかもしれません。これは自然にできることではなく、厳しい決断が必要なこと。集中する時間を作るということは、ほかの心地よいこと、楽しいことを犠牲にすることでもあるのです。

マルチタスク全盛の時代は、一人になれる時間を作るのが難しい時代。そして、シングルタスクを確保する方法を自ら考えださなくてはならない時代でもあります。現代の忙しいビジネスパーソンが、効率よく仕事を行うため、最も意識しておくべきポイントのひとつなのではないでしょうか。

今回は、ここまでです。

image by: Shutterstock.com

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人生で成功するには、論理的思考を身につけること、他人を説得できるようになることが必要です。テレビ朝日「報道ステーション」などでもお馴染みの現役弁護士・谷原誠が、論理的な思考、説得法、仕事術などをお届け致します。

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【著者】 谷原誠 【発行周期】 不定期

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