パスタは洋風・和風・中華と、ソースや具を変えることによってさまざまなバリエーションが楽しめるのが大きな特徴のひとつ。しかし、あえてメニューをナポリタンとミートソースのみに絞った店が人気を集めています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、ナポリタン専門店「スパゲッティのパンチョ」の戦略・戦術を分析しています。
メニューを絞る意味
業績好調なナポリタン専門店を分析します。
● B級グルメ研究所が展開するナポリタン専門店の「スパゲッティのパンチョ」を分析します。
戦略ショートストーリー
昔ながらのナポリタンが好きな方をターゲットに「昔懐かしのナポリタンへのこだわり」に支えられた「昔ながらの懐かしい味」「満足できるボリューム」等の強みで差別化しています。
パスタの種類をナポリタンとミートソースに絞り込みつつも、ボリュームやトッピングなどで、顧客の好みに応じたメニューを提供することで、顧客から支持を得ています。
■ 分析のポイント
メニューを絞る意味
一般的なパスタチェーン店では、多彩なパスタが楽しめるお店が多いと思います。例えば、洋麺屋五右衛門では、ミートソースやトマトソースに加えて、カルボナーラ、ペペロンチーノ、たらこスパゲッティなどを展開していますし、ポポラマーマでは、オリーブオイル、和風味、トマト味、ジェノベーゼ味、クリーム味、スープタイプといった形で、様々な味のメニューを展開しています。
これらのパスタチェーンは、より多くの方にパスタを楽しんでもらう(来店してもらう)ためには、メニューの充実を図ることが重要だと考えたうえで、様々な種類のパスタを展開していると想定されます。
この考え方を逆に言うと、メニューを絞ってしまうと集客は難しくなるという見方もできます。ですから、この考え方のもとでは、メニューを絞るのは怖いでしょうし、なかなか真似することができないと思います。
では、なぜ「スパゲッティのパンチョ」はナポリタンとミートソースに絞り込んだのでしょうか。理由はいくつか考えられますが、まず、対外向けな理由としてあげられるのが専門店としてのイメージ作りです。
例えば、ラーメン店の場合、しょうゆラーメン専門店、みそラーメン専門店、とんこつラーメン専門店、しおラーメン専門店といった専門店としょうゆ、みそ、とんこつ、しおなど、多彩なメニューを展開するラーメン店のどちらに行きたいですか? 自分の好きな(食べたい)ラーメンが、決まっているのであれば多くの方は専門店を選択するのではないでしょうか。しょうゆラーメンが好きな方は、しょうゆにこだわっていそうなしょうゆラーメン専門店のほうが魅力的に映りますからね。
やはり、顧客へのメッセージとして、「あれもこれも美味しいよ」より「これだけは誰にも負けないよ」の方が、顧客に刺さりやすいです。「スパゲッティのパンチョ」は、顧客へのメッセージが明確であることが人気となっている要因の一つと言えるでしょう。
また、社内的な理由としてはオペレーションの簡素化につながることも重要な要素だと思います。様々な味のパスタをラインナップするためには、材料も多岐にわたりますし、作り方も異なりますので、作る側としては、管理もオペレーションも煩雑になることが懸念されます。「スパゲッティのパンチョ」のようにメニューを絞れば材料の管理もしやすいでしょうし、作り手にとっても非常にやりやすいと思います。
現在、特に外食は、人員の確保が困難となっており、オペレーションの簡素化を課題としている企業は多いですから、メニューを絞るということは理にかなっていると言えるでしょう。
ちなみに、「スパゲッティのパンチョ」は、より少人数で店舗を運営できるよう、店舗のレイアウトを見直すなど、オペレーションの簡素化に取り組んでいるようです。こういった、たゆまぬ企業努力があるからこそ、手ごろな価格で美味しいパスタを提供できているのだと思います。
ラーメン店の場合、専門店が多い印象がありますが、パスタ店の場合、「スパゲッティのパンチョ」のような専門店は珍しい存在だと思いますので、今後、「スパゲッティのパンチョ」がどのように拡がっていくのか注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):パスタ専門店(ナポリタンとミートソース)
- 競合(お客様の選択肢):パスタ専門店、洋食屋 など
- 状況:国内のイタリア料理店の市場規模は微増傾向のようです
■強み
1.昔ながらの懐かしい味
- もちもちの太麺に自家製トマトソースがよくからむ
2.満足できるボリューム
- 小盛りでも一般的なパスタ店より多い300g
3.手ごろな価格
- 同一価格で、小盛、中盛、大盛が選べる
4.カスタマイズできる
目玉焼き、ベーコンなどのトッピングで自分好みにカスタマイズできる
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
「昔懐かしのナポリタンへのこだわり」
- 昔ながらの食材、調理方法にこだわる
→前日に茹で置きした、極太麺を使用、ソースは毎日お店で手作り - ナポリタンを世の中に広めていきたいという思い
上記のような、こだわりが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 昔ながらのナポリタンが好きな方
- ボリュームを重視される方
◆戦術分析
■売り物&売り値
「ナポリタンとミートソース2種類のスパゲッティを中心としたラインナップ」
- ナポリタン:690円
→同一価格で、小盛300g/中盛400g/大盛600gが選べます。 - ナポリタン全部のせ:1,240円
→トッピングメニュー(焼きチーズ、ハンバーグ、ベーコン、目玉焼き、ポテトサラダ)をすべて乗せたナポリタン。キャッチコピーは「限界突破の黄金武装」 - ナポリタン星人(総重量2.3kg):1,650円
- 白ナポリタン:790円
→トマトソースではなく、カルボナーラ風に卵とニンニクで仕上げた、真っ白なナポリタン。元々はナポリタンの専門店であるパンチョの賄い飯として食べられていたものが、スタッフからの熱い要望に応え商品化 - ミートソース:690円
などなど
■売り方
- パンチョの日(10/10)やナポの日(7/10)などを設定し、キャンペーンを実施しています
- Instagramにて、「改めてナポリタンが旨かった写真」をハッシュタグ付きで投稿すると抽選で5名の方にナポリタン全部のせをプレゼント
■売り場
- 首都圏に10店舗
- ナポリタンを前面に出した看板やのぼりなどを設置
- その他、伊勢丹新宿店などでも販売している
※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by: 【ナポリタン専門店】スパゲッティーのパンチョ - Home | Facebook