「このご時世にメモ?」などと思っている方、もしかしたら貴方はメモがもつ「効用」に気付いていないのかもしれません。今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では著者で現役弁護士の谷原先生が、メモの効用は「忘れることにある」と前置きした上で、頭をクリアな状態に保つための「メモ術」を公開しています。
メモは古い?
こんにちは。
弁護士の谷原誠です。
時間管理に関するツールが多様化しています。PCやスマホなどIT技術の発展もあり、ノウハウも常に高度化。機能性の高いスケジュール帳、またアプリやクラウドなどでスケジュールを管理するのも一般的になっています。
仕事の管理ツールの種類を整理すると、まず、子供の「おつかい」の覚書の様に、すべきタスクが一つ一つ書かれたメモ等があります。また、それらのタスクを、優先順位を考えながら並べるのが「todoリスト」と考えられます。
そして、このすべきことを、実際にいつ行うのか、時間の流れの中に位置付けていくのがスケジューリングです。そう考えると、スケジューリングはいわば時間管理の当面の最終形。スケジューリングツールを使いこなせば、従来のメモ等はいらないようにも思えます。
しかし、意外とそういうことにはなりません。多くのビジネスパーソンは、スケジューリングツールを使いこなしながら、手書きのメモを手元に置いたり、机やパソコンのディスプレイに付箋を貼ったり、パソコンで単純なtodoリストを常に作ったりしています。私もメモや付箋を使いますし、Evernoteも使っています。
これらのメモ等の効用は何なのでしょうか。私は、メモ等の効用は、覚えることではなく、「忘れる」ことにあるのだと思っています。
例えば、ある時間に、誰かに電話しなくてはならないといった、ちょっとした用があるとき、それを覚え続けるのは意志がいることです。こういった用事について、ほかの仕事をしている時に頭を占めているのはとても無駄なことです。つまり、仕事に完全い集中できていないのであり、脳を効率的に使っていない、ということになります。
この用事をメモに書き、目の前においておくと、「これからすべきことはメモに書いてあるから、忘れていても大丈夫」という安心感につながります。メモという外部記憶に情報を投げ込むことで、自分の頭がクリアになり、ほかのあらゆる仕事に対する集中力が高まるのです。
弁護士の仕事では、何度も行う類型的な仕事で「チェックリスト」をよく使います。その案件で、依頼者のために調べておかなくてはならない法律や判例、見落としやすく、依頼者に不利益を与えてしまう恐れのあるポイントなどをまとめたもので、仕事の区切りの際に、リストに照らし合わせ、総仕上げしていきます。
もちろんそれらは、理論としては頭に入っています。しかしそれを覚え続け、毎回その記憶を呼び出すのは困難です。また、それができたとしても、「何か忘れているのではないか」と不安になります。「チェックリストがあるから大丈夫」という安心感は、仕事の質を上げてくれます。
そして、憶えておくべきタスクをすべてスケジューリングする、というのも難しいものがありますし、スケジューリングする時間がもったいないようなことも多いと思います。
きっちりとスケジューリングしないといけないタスクと、忘れないようにすればいいだけのメモは目的が異なります。それぞれのツールの特質を考えながら、適切に使い分けていくことが、仕事の効率を上げるために重要なことだと思います。
今回は、ここまでです。
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