3月8日に投開票された石川県知事選は、現職だった馳浩氏が敗れるという意外な結果に終わりました。そんななか、特に注目を集めたのが高市早苗首相の異例とも言える選挙応援です。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、石川知事選の一連の出来事の構図を人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』になぞらえて考察しています。
『すべては自民党のシナリオ通り』か? サナエゲリオンの暴走
3月8日(日)、任期満了に伴う石川県知事選で、自民党と日本維新の会が推薦した現職の馳浩氏(64)が、自民党出身の無所属新人で元金沢市長の山野之義氏(63)に敗れました。現職の馳浩氏は、能登半島地震の発生以来、後手後手の対策が続いて来ましたし、被災地のインフラ復旧が手つかずの状況で大阪万博に1000万円もの協力金を支出するという、被災者の神経を逆撫でするような政策も批判されて来ました。
そもそも馳氏は、自民党安倍派の裏金議員だっただけでなく、東京五輪の誘致では当時の安倍晋三首相の子分として、内閣機密費を1000万円以上も使って、1冊10万円もする「思い出アルバム」を作り、100人を超えるIOC委員にワイロとして配ったという前科もありました。
こうした背景の中、今回の選挙戦では常に劣勢が報じられて来た馳氏でしたが、最後の望みの綱が高市早苗首相の応援でした。いくら自分が蒔いた種とは言え、ここまで劣勢だと、2月の衆院選で裏金議員だらけの自民党を大勝に導いた高市首相にすがるしかなかったのです。そして、高市首相はと言えば、自民党時代に安倍派だった馳氏とは古くから親交があったため、応援の依頼を二つ返事で引き受けたのです。
しかし、現職の首相が知事選の応援に入るという異例の行動を強行したのにも関わらず、馳氏は負けてしまったのです。この一連の流れについて、翌3月9日(月)のTBSラジオ『森本毅郎 スタンバイ!』の月曜コメンテーター、時事通信社の山田惠資(けいすけ)氏は、次のように解説しました。
山田惠資氏「(高市首相の予定は)イスラエルがイランを攻撃した直後だったので、東京を出発するかどうかの連絡が入り、行かないという選択肢もあったのですが、結局は行ったと。もう少し言いますと、実は自民党の調査では馳さんのほうがずっと負けてたんです。で、高市さんが行くと、ひょっとしたら負ける選挙に行ってしまうことになるため、自民党の選対としては本音は行かせたくなかった。でも高市さんは『人気のある私が行けば勝つ』と、選対の助言を聞かずに行った。それなのに負けたんです」
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この日の午後5時からの文化放送『ニュースパレード』の中でも、官邸に詳しい元共同通信社の後藤謙次氏が電話出演し、次のように解説しました。
後藤謙次氏「(石川県知事選は)高市さんが衆院選で圧勝してからちょうど1カ月だったんですね。自民党推薦の馳さんの敗北は、高市さんの常勝イメージに傷がつくかもわかりません。しかも高市さんは、イスラエルとアメリカがイランへの攻撃を開始した直後に東京から空路で応援のために金沢に駆けつけているんですね。そういう曰く付きの選挙で負けたということが、恐いものなしの高市人気にも限界があるということを証明しました」
山本香記者「そもそも現職の総理が知事選の応援に行くというのは異例なんですよね?」
後藤氏「おっしゃる通りです。とりわけ今回の馳さんの選挙応援に関しては、総理が行っても負ける、傷が大きくなるからやめた方がいい、という声が自民党内からも出ていたんですね。にも関わらず、高市さんを止める側近がいなかった。これが今の政権の今後の課題ですね」
‥‥そんなわけで、今回の高市首相の暴走を見て、あたしは3年前の奈良県知事選を思い出しました。2022年9月25日、自民党奈良県連会長に選出された高市早苗氏は、翌2023年4月9日に行なわれる奈良県知事選に、自分が総務大臣だった時に秘書官を務めていた平木省氏を擁立すると発表したのです。
しかし、その時の現職の奈良県知事だった荒井正吾氏は、自民党の元参議院議員で、小泉政権下では外務大臣政務官を務め、奈良県知事を4選もしている大ベテランでした。当然、この年の知事選も5選を目指して出馬する予定でした。奈良県は常に自民党が勝つ保守王国なので、これまで通りに自民党の推薦で出馬すれば、荒井正吾氏の5選は確実でした。
それなのに、嗚呼それなのに、それなのに‥‥というわけで、自民党奈良県連会長の座に就いた高市氏は、自分の可愛がって来た元秘書を知事にするため、現職の荒井氏を切り捨てたのです。荒井氏にしてみれは青天の霹靂でした。高市氏のやり方に憤慨した荒井氏は、自民党本部に掛け合い、当時の森山裕選対委員長や二階俊博氏の協力も得た上で、知事選に出馬したのです。
その結果、今回の石川県知事選のように自民党同士の「保守分裂選挙」となったのですが、この選挙には大阪以外への勢力拡大を目論む日本維新の会からの刺客、山下真氏も出馬していたのです。そして、本来は自民党候補が一人勝ちするはずの得票が真っ二つに割れてしまい、維新の山下真氏が当選してしまったのです。
当時、前大阪市長の松井一郎氏は「自民党が割れた事による漁夫の利」とドヤ顔でツイートし、高市早苗氏は「県連会長でありながら保守分裂を招いて惨敗したA級戦犯」として自民党内で厳しく吊し上げられたのです。つまり、高市首相が自民党内の声を聞かず、自分のワガママだけで暴走して自分の掘った穴に落ちるというのは、今に始まったわけではないのです。
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‥‥そんなわけで、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の第拾六話「死に至る病、そして」には、稲垣早希ちゃんのモノマネのレパートリーでもお馴染み、アスカのこんなセリフがあります。
アスカ「やれやれだわ。独断専行、作戦無視。まったく自業自得もいいとこね。昨日のテストでちょっといい結果が出たからって、お手本を見せてやる?はっはーん、とんだお調子者だわ」
これは、シンジの身勝手な行動を皮肉ったセリフですが、この中の「昨日のテスト」を「先日の衆院選」に置き換えると、まるで高市首相に対して言っているセリフのように感じられませんか?
そして、エヴァへの搭乗を拒否するなど身勝手な行動を繰り返したシンジは、ようやくエヴァに搭乗したと思ったのも束の間、第拾九話「男の戦い」では、最強の第14使徒ゼルエルとの戦いの途中で初号機の内部電源が切れてしまい、一方的に攻撃を受けてしまいます。窮地に陥ったシンジは、次のように叫びました。
シンジ「動け、動け、動いてよ!今動かなきゃ、今やらなきゃ、みんな死んじゃうんだ!もうそんなの嫌なんだよ!だから、動いてよ!」
すると、電源のない初号機が雄叫びを挙げて暴走!しかもシンクロ率400%という未知の領域に踏み込んだ初号機は、ゼルエルを取り込んで引きちぎられた左腕を再生し、瞬殺したゼルエルをムシャムシャと食ってしまったのです!
さて、『新世紀エヴァンゲリオン』と言えば、その根幹にあるのが「人類補完計画」ですが、それでは先ほどのシンジのセリフに「人」という文字、すなわち「人偏(にんべん)」を補完してみましょう。
サナエ「働け、働け、働いてよ!今働かなきゃ、今やらなきゃ、みんな死んじゃうんだ!もうそんなの嫌なんだよ!だから、働いてよ!」
そう、アスカに「独断専行、作戦無視」と指摘され、今回の馳浩氏への応援の空振りを「まったく自業自得もいいとこね」と笑われてしまった高市早苗首相が、就任時の挨拶で「働いて働いて働いて働いて働いてまいります!」と述べたのは、自分のことではなかったのです。高市首相が「自分のための労働力」だと思っている「国民」に対しての言葉だったのです。そして、これこそが、現実世界でのゼーレとも言える「自民党」の描いたシナリオだったのです‥‥なんちゃって♪(笑)
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