せっかく死ぬ気で頑張ったダイエットなのに、「途中で空腹が我慢できなくなってリバウンドしてしまった」という経験をお持ちの方も多いのでは?今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では著者で現役医師の徳田安春先生が、リバウンドの起きにくいダイエット法として注目を集める「ケトン体ダイエット」を、デメリットも含め詳しく紹介しています。
リバウンドの起きにくいダイエット法
中年以降になると体重増加が気になりますね。毎年、多くの人々がダイエットに挑戦しています。最初の数ヶ月で数キロの減量に成功する人は結構いると思います。しかしながら、減量中に起こる食欲亢進は辛いものです。当初はこれに打ち勝つことができた人でも徐々に食欲を抑えることができなくなり体重が元に戻ってしまうケースがかなり多いと思います。
これはよくあるリバウンドですね。最近の研究によると、リバウンドが起こるのは、ダイエットで減量した際に、食欲を刺激するホルモンが過剰に分泌されることであることが原因だとわかりました。これまでは、本人の意思が弱いのだ、などとされていました。しかしながら実際はそうではなく、ホルモンの影響だったのです。そのホルモンとはグレリンなどです。
そこで、リバウンドの起きにくいダイエット法がないかどうか試みられました。そこで注目されてきたのがケトン体ダイエットです。ケトン体ダイエットだと、血中のグレリンなどのホルモンの上昇が抑えられるため食欲を抑制し、体重のリバウンドが起きにくくなることがわかりました。すなわち、成功しやすいダイエットとして注目されてきたのです。
ケトン体ダイエットによる脂肪分解モード
では、ケトン体ダイエットとは何でしょうか。ケトン体とは肝臓で脂肪が分解されたときに作られる物質です。ケトン体には、アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3つがあります。でも、ケトン体ダイエットとはこのケトン体を食べるわけではありません。糖質を制限して、脂肪は多めにとることによって、ケトン体が作られやすくなるようなダイエットとの意味です。
砂糖やデンプンなどの糖質を制限して脂肪を多めにとる食事療法を導入すると、膵臓はインスリンの分泌を低下せ、1週間以内に体脂肪の分解へと向かいます。脂肪が肝臓で分解されるとケトン体が作られるようになります。これを栄養学的ケトン体血症と呼びます。ケトン体は血液脳関門を通過することができるために、脳細胞のエネルギー源として利用されることができます。また、ケトン体は、脳細胞以外の組織の細胞でも利用されます。
以前、アメリカで有名になったものに、アトキンズダイエットというのがありました。これは低糖質ではありましたが高タンパクの食事療法であったため、アミノ酸がブドウ糖に変換されるため、ケトン体の合成は抑えられていました。ケトン体ダイエットではタンパク質も制限する一方で、脂肪分やトータルカロリーの制限はほとんどしない方式をとっています。
ケトン体ダイエットの臨床効果
ケトン体ダイエットでは、最初の2週間で4キロもの体重減少を認めることがあります。これは、ケトン体が尿中に排泄されやすいために、利尿効果を持つためとされています。それに加えて、体が脂肪分解モードに入ることと、ケトン体そのものに食欲抑制作用があるために、さらに体重が落ちていきます。
ケトン体ダイエットは2型糖尿病の食事療法としても注目されています。この食事療法では、インスリン感受性が良くなるので、減量ができてヘモグロビンA1Cが改善するだけでなく、必要とする薬の量も減っていきます。また、血糖だけでなく、血圧、内臓脂肪の量、中性脂肪値を下げる効果があります。LDLコレステロールが上昇する人がいますが、動物性脂肪ではなく植物性脂肪を主体とするメニューに切り替えることでそれを防ぐことができます。
しかしながら、注意すべきは、ケトン体ダイエットにも副作用があることです。ケトン体の利尿作用で、水分と電解質が喪失することがあります。予防には、水分とカリウムやマグネシウムを十分に摂取することが勧められます。
また、薬を内服中の糖尿病の患者さんの場合には、この食事療法によって低血糖が起こるリスクがあります。糖尿病や高血圧などの病気を持つ方で、この食事療法を導入したい場合には、前もって担当医や栄養士とよく相談してみましょう。
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