ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズなど、革新的な発明で「新たな時代」を築いた起業家たち。彼らにはどのような共通点があり、そして他の同業者たちと何が違うのでしょうか。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』が明らかにしています。
「苦労」物語 「苦労」して、こうできた
ソニーが「トランジスタ・ラジオ」つくったこと、ビル・ゲイツが「ウィンドウズ」をつくったこと、さらにスティーブ・ジョブズが「iPhone」を、古くはエジソンが「白熱電球」「活動写真」「蓄音器」をつくったこと、ここから予測されていなかった「現在」が生まれています。「コンビニ」は、鈴木敏文さんがアメリカから導入して定着しました。
当然だと思っている現在の「日常的な暮らし」は、経営者の“リスク”を恐れることなく、むしろ「突き動かされた熱情」でなさしめられたものであって、その結果が私たちの「今の暮らし」を形づくっています。ドラッガーは「起業家的世界とは、自然物理ではなく人間社会の世界である」言っており、未来は人間が関与する社会であるとしています。未来は、革新的な起業家のたゆまぬ試みの成果によって実現されるのです。
ところで、エジソンの名言に「天才は1%のひらめきと99%の努力」というのがあります。実際に言いたかったのは「1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄になる」だったそうですが、一方で「成功しない人がいたとしたら、それは考えることと、努力すること、この二つをやらないからではないだろうか」と言う言葉もあります。
またこんなことも。
「1日8時間労働制に感じた危機感は、労働時間の不足などではない。働くということが、ただの“決まりきった作業”になってしまうということだ」
「朝7時に起き、夜11時に就寝すれば、たっぷり16時間ある。大抵の人は一日中何か仕事をしている。ただ一つ違うのは、彼らの仕事は非常に多岐にわたり、私は“たった一つの仕事”に全てのエネルギーを集中する点だ」
とも言っています。
ソニーがテープレコーダーを開発したとき、そのテープづくりから行ったのですが、最初は幅8ミリの紙に飯粒を糊として乳鉢ですり潰したマグネット粉を貼り付けるといったことから始めています。多くの画期的な発明は、何度も何度の失敗を重ねた忍耐強い試行錯誤の末に“ヒラメキ”を得て革新的な製品づくりに至っています。
日清食品のチキンラーメンは、何度試作品をつくってもうまく行かなかったのが、ある日、安藤百福さんが奥さんが天ぷらを揚げているのを見て、そこで“ヒラメキ”を得て商品化にこぎつけました。
多くの中小企業の経営者の方に会って感じられることなのですが、「マネジメント」の基本機能である「マーケティング」と「イノベーション」が理解されず、かつなされていないことをつくづく痛感させられます。最も心配になるのは多くの後継者の方で、より多くの思い違いがあって気が付けば「剣ヶ峰」の刃先であるということになります。
企業がいつも対象にしなければならないのは外部つまり“顧客”と“社会”であって、なぜなら企業に「対価」「利益」をもたらしてくれるのは“顧客”と“社会”であるからです。そして、その“顧客”と“社会”が求めているものは“満足”や“感動”で、その企業が生産する「効用(商品・サービス・コト)」をもとにします。
ところが、恵まれた(実際は恵まれない)環境にある、努力なく経営者になった方や成功した方は、往々にしてそこに知恵を至らせないのです。今日の安泰や成功の「いわれ」や「構造」を理解されないのです。またさらに皮肉なのはたまたまの「幸運」でも、提供している「貢献効用」の“余韻”がある限りにおいて、その“錯覚”が強化されるのです。
いつも思い知らされるのは“余韻”がなくなった後で、そこで出てくるつぶやきが「今までうまくいっていたのに、なぜでこうなるのだ。何かがおかしい」なのです。ダイソーの創業者の矢野博丈さんは、これを「恵まれる不幸せ」と表現しています。
成功の方程式というのは、その“原則”はいつも同じで「顧客に、今現在私たちが最も最適・最高の“満足”“感動”を与えているかどうか」です。
さてここからです。このように“原則”を述べると、すばらしい論理展開をする高学歴の幾人かの人から次のような声が聞こえてきそうです。「原則は分かったから、そうしたら何をどのようにしたらいいのだ」と。
ここでお伝えしたいのは「それが何か、どのようにしたよいか」は、もうお判りいただいていると思うのですが「それを悩んで自分で閃いて、不安と恐怖感に打ちのめされても、それでもやり遂げる」。そうでなければ「テープレコーダー」「チキンラーメン」は世に出なかったと言えます。
ここで少し付け加えます。「そうしたら、そのようにすればすべてうまく行くのか」ということですが、あのスティーブ・ジョブズでも、思い込んでやった事業でこけてアップルを追い出され、黒澤明でさえも最初のカラー作品は不評で終わりました。すべてが上手くいくわけでもないのですが、進まなければ知識は得られず、知恵は深まらず、新たな「機会」は開かれません。
どんな立派な「戦略計画」であっても、それは実行しなければただの思い込みでしかありません。難しいのは「失敗する勇気」がなければ物事は始まらず「失敗」を経験し、そこから多くを学ばなければ、他に勝れる諸々の「強み」を形成することはできないと言えます。
経営(マネジメント)は“論理”だけで処せるような代物ではなく、それが“成果”を実現させるのは、多くの矛盾を包摂している「苦労」を伴う“原理”活動を強烈な意思を持って行い続けるときのみです。矛盾を伴う知恵の領域の活動なので、例え倒産であっても大病をした人でも、そのことを思い知った人が学んで身につけられるものなのです。
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