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嘘は最後までつき通せ。時間稼ぎで持ちこたえる安倍官邸の往生際

愛媛県が国会に提出した新たな内部文書で、安倍首相の明らかなウソがまた国民の前に露呈しました。2015年2月25日に加計理事長と面談し、安倍首相は「新しい獣医大学の考えはいいね」と発言したと記録されていたのです。そして、首相秘書官の今井氏はこの期に及んで沈黙を破り、月刊誌『文藝春秋』のインタビューに応じましたが、加計学園や森友問題に関する新事実は特に明らかにされずされず仕舞い。元全国紙社会部記者の新 恭さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、その今井氏が安倍総理夫妻の関与を全面否定したことに「論拠が薄弱だ」と鋭い批判を展開しています。

ウソは誰もが見抜いている…往生際の悪い安倍官邸

昨年1月20日まで加計学園の獣医学部新設計画を知らなかったという安倍首相の明らかなウソ。

国家戦略特区や事業者の決定過程に自分が全く関与していないと言うための方便だったが、ウソの上塗りによる辻褄合わせも、いよいよ限界だ。

愛媛県が国会に提出した新たな内部文書により、加計孝太郎理事長が安倍首相に3年以上前に計画を説明していたことがわかった。

2015年2月25日に加計理事長が安倍首相と面談したさい、獣医学部新設計画を説明、安倍首相がそういう新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたという。

安倍首相は例によって、「その日加計理事長とは会っていない」と否定している。自分に都合が悪いと、自治体が国会に提出した公文書の信用性さえ貶める。

加計学園側が愛媛県の担当者に話した内容であるにもかかわらず、学園側も「そんな事実はない」と声を揃えた。

愛媛県に、文書を虚偽作成したり、改ざんする動機はない。首相が「腹心の友」とまでいって憚らない加計氏との濃密な交遊関係から、それがウソであることをすでに国民は見透かしている。

加計理事長と安倍首相の会談後、柳瀬氏は学園側に資料を求めるなど、さっそく動き始めた。2015年4月2日、加計学園、愛媛県、今治市の幹部を官邸に招き入れ、特区申請によって規制の壁を破るための作戦会議」を開いたのが具体的な第一歩だ。

柳瀬氏の独断でやったことのように見せかけてはいるが、そんなことはありえない。このメルマガでずっと指摘してきたように、安倍首相が政務担当の今井尚哉首席秘書官に絵を描かせ、実行部隊の中心ラインを柳瀬氏や内閣府で特区を担当していた藤原豊氏が担っていたに違いない。

作戦会議から2か月後に愛媛県と今治市は共同で国家戦略特区提案を申請。4か月後には、地方創生推進室次長だった藤原氏が加計学園の岡山理科大を訪問、同学園の車で今治市の獣医学部建設予定地に向かっている。官邸と内閣府が、加計学園と一体となって走りはじめていた。

愛媛県の新たな文書には、加計学園事務局長が柳瀬秘書官に「内閣府の藤原次長を紹介いただいたことに対しお礼を述べたい」と語ったことが記されている。安倍首相の「分身」とさえいわれる今井秘書官の意を受け、柳瀬氏が藤原氏と連絡を取り合いながら、「総理案件」を前に進めていったと推察される。

加計疑惑についてむりやり無関係を装っている安倍首相と今井秘書官だが、それを突き崩す文書の続出で外堀を埋められ、ひたひたと危機が迫っていることを感じているのか、ここへきてメディア対応にやや変化が見られる。今井秘書官の文藝春秋デビュー」はそのひとつだ。

安倍首相と同じく、今井秘書官も国民が知りたい肝心なことは一切喋らない人である。そのことが、同誌6月号のインタビュー記事でよくわかった。

今井氏はメディアの単独インタビューに応じたことはなかった。その人がなぜ突然…。インタビューしたノンフィクション作家森功氏は前文にこう書いている。

「私はこの日の午後、今井氏にこれまでの取材成果を踏まえて事実関係を問ういくつかの詳しい質問を官邸にFAXで送っていた。すると夕刻、今井氏から担当編集者に「これはしっかり説明にうかがいたい」と電話があり、急遽、インタビューする運びとなった」

森氏は同誌に「『総理の分身豪腕秘書官の疑惑」と題する記事を寄稿。そのなかで取り上げたモリカケ疑惑や、ロシア外交をめぐる外務省との軋轢など、いくつかの問題について、質問を送ったようだ。

森氏の言う「この日」は4月下旬のことらしく、文芸春秋社に今井氏が「どうせ批判されるなら正当に批判されたいと思って」と皮肉を言いながらやってきたという。

今井秘書官は疑惑のキーマンとされ、野党から証人喚問まで要求されている。官邸記者クラブのメンバーは、オフレコ懇談でエサ情報を与え、情報遮断を恐れさせることによって、ある程度コントロールできる。しかし、フリーのノンフィクションライターである森氏の場合は、そうはいかない。

昨年末、森氏は「悪だくみ加計学園の悲願を叶えた総理の欺瞞」という著作を刊行、さらに文芸春秋で今井氏自身に焦点をあてる記事を今後も、かなりの分量で出稿するかまえをみせている。

アメとムチでメディアを抑え込む安倍官邸の司令塔でもある今井氏は、書き放題を恐れたのであろう。ブレーキをかけなければという焦りからか、ついに黒子であるはずの首相秘書官でありながら月刊誌のインタビューに応じるという、これまでにない行動を起こした。

おかげで、文藝春秋は6月号において、森氏の記事「『総理の分身』豪腕秘書官の疑惑」と、今井氏へのインタビュー記事「今井首相秘書官一問一答」を併載し、インタビュー記事のほうを表紙の目玉に据えることに成功した。

加計学園問題に関して文藝春秋社は、週刊文春で前川喜平氏の告白インタビュー記事を朝日新聞とともに他に先がけて報じた。今井尚哉氏についても、「東芝『原発大暴走』を後押しした安倍首相秘書官 今井尚哉」と題する文春2017年4月13日号の記事を放ち、話題を呼んだ。

このところ、安倍官邸がらみのヒット記事が陰をひそめた感があっただけに、官邸司令塔の来訪は願ってもないことだっただろう。

同誌は今井インタビューに「昭恵夫人が無関係とは言えない」という大見出しをつけた。森友事件に安倍夫妻が関係したと秘書官が認めたのだとすれば、超ド級のニュースである。まずは、その部分をみてみよう。

「ーいま安倍政権は窮地に立たされています。これはとにもかくにも、森友・加計問題における数々の疑問に対して国民が納得できる説明がなされていないからじゃないですか。」

今井「そこは安倍政権として正直に説明していくほかありません。…森友問題は、いくら値引きしろとか、そういう話に昭恵夫人がかかわっていないことだけは間違いありませんが、交渉の過程で名前があがっていたのは事実ですから、無関係とは言えません。…安倍総理にも間違いなく道義的責任があります。だから、この点に関しては、安倍さんにも進言して、国会で謝罪してもらいました。」

国有地値引きにはかかわっていないが、無関係とは言えない。だから謝罪した。それでいいではないか。国民が納得できないのなら正直に説明していくほかなー。いかにも勝手な解釈である。正直に説明しないからこうなったのだ。

もとはといえば、森友学園への国有地売却価格だけは非開示にされ、それに疑問を持った豊中市議らが動き出したからこそ、本当のことが明らかになったのである。安倍夫妻案件でなければ財務省が特別扱いしないし、ましてや決裁文書を改ざんすることもない

佐川宣寿前国税庁長官と今井氏は財務省、経産省と、省こそ違うが82年の同期入省組で、若いころはよく飲みに行った間柄だという。しかし、今井氏は佐川氏の携帯やメールアドレスも知らないし、森友学園の件は国会で問題になるまで知らなかったと主張する。

つまり、森友問題への関与を全面否定したわけだが、その論拠は薄弱だ。

「森友学園に僕が関与していれば大阪地検に呼び出されているはずでしょう」。

これは、単なるご都合主義に過ぎない。

一時は森友学園の教育方針に心酔していたはずの安倍首相が、大阪地検に逮捕、起訴された籠池泰典氏をまだ裁判すら行われていないのに「詐欺をはたらく人物」と決めつけてしまったのも、昭恵夫人の責任を回避するためのご都合主義だ。

今井氏の発言パターンは安倍首相そっくりである。

「役人が決裁文書を変えることはあってはならないことです。…財務本省と近畿財務局にはしっかりと説明してほしい」

政府の不祥事なのに、他人事のように原則論を言って身をかわすのだ。首相の発言を裏でコントロールしているのだから、似ていても当然といえば当然かもしれない。それにしても、よく、しゃあしゃあと言えるものだ。

モリカケ、自衛隊日報、裁量労働制のデータなどで露呈した安倍政権の隠蔽、欺瞞体質、官僚を萎縮させる恣意的人事政策…果てることなく膿が流れ出て国民は倦んでいるはずなのに政権はまだもちこたえている。

その背景にあるのは、反知性と欺瞞だ。真実を語らず、問題を先送りし、時間稼ぎをする。その間に米国軍需産業や日本の経済界が喜びそうな政策を強引に進める。

ウソは最後まで徹底してつき通せ。安倍首相とその周辺の長い寡頭支配は、歪んだ成功法則を生み出したのだ。

image by: Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

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