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日大アメフト事件と登山家死亡事件で感じた「ネットの時代」

ここ最近、日本で話題になっているニュースといえば、未だ収束しない日大アメフト部悪質タックル事件と、5月21日エベレストで起きた登山家・栗城史多氏の死亡事故。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者でアメリカ在住の世界的エンジニア・中島聡さんが、何の共通点もないように感じられるこの二つの出来事が遠く海を隔てたアメリカまで届いた理由について論じています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年5月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

ネットの時代だからこそのトップニュース

ここ1~2週間、「ネットの時代」だとつくづく感じさせる事例が二つほどありました。

一つ目は日大アメフト部の選手が、プレーが終わった後の無防備な状態の関学のクォーターバックに後ろからタックルして怪我をさせた事件。まず先に映像がネットを駆け巡り数日後にマスコミが騒ぎ始めるという時間差がなんとも不思議でした。

あまりにも映像がショッキングだったため、ネットの力が総結集して「血祭り」が始まった感もありました。普段はこの手の「血祭り」を嫌う私も、さすがに今回だけは徹底的にやるべきと思いました。これを見過ごしては、アメフトというスポーツが成り立たなくなります

そしてタックルをした選手による告白会見、「コーチに指示されてやったものの、とても反省しており、自分は二度とアメフトをする資格がない」という真摯な態度は、危機管理のあるべき姿を見せてくれました。結局のところは、真実を正直に語ることが相手からの信頼を勝ち取る唯一の方法であることを教えてくれた、とても良い教材でした。

それに対する日大の態度は本当にお粗末で、日大ブランドは地に落ちたと言って良いと思います。私が日大OBであれば、大学に乗り込んで、内田元監督の理事からの解任、アメフト部の廃部を迫ると思います。あれだけの酷いプレーを選手にさせた内田元監督には大きな責任があり、理事からの解任とアメフト部の廃部というけじめを付けない限り、日大のイメージは最悪の状態に止まると思います(これに関しては、「日大は、どこで判断を間違えてしまったのか」という記事が良く書けています)。

二つ目は、エベレストの登頂に失敗して亡くなられた冒険家栗城史多氏の件です。そもそも、彼の名前すら知らなかった私に、彼が登頂中に死亡したこと、それがあまりにも無謀であり、登山の専門家の中には、彼が帰らぬ人になることまで的確に予測していた人がいたことまでが、一気にソーシャルメディアで伝わって来ました

栗城史多氏は、2012年のエベレストへの挑戦で両手の指9本を凍傷で失ったそうですが、その理由が、自分の冒険する姿をスマートフォンで中継するために、指先に穴の空いた手袋をしていた、という事実は、結構ショックでした。

ユーチューバーが視聴者欲しさに無謀なことをして怪我をするとか法律を犯すということが頻発していますが、そのもっとも極端な例が、今回のエベレスト登山だったとも言えると思えます。

冒険家とユーチューバーを同列に置くことに違和感を感じる人もいるでしょうが、良く考えれば本質は同じだと思います。冒険家は、「人間の限界に挑戦する」という大義名分はありますが、結局はスポンサーがいなければ成り立たないのです。ユーチューバーには大義名分はありませんが、他の人に出来ないことを映像で見せることにより、広告料で稼いでいるわけで、その中には「自分が限界に挑戦する姿を見せる」人もいるわけです。

いずれにせよ、より多くの人が反応したものがネット上に拡散される、というアルゴリズムによって、この二つのニュースが、トップニュースとして、米国にいる私に届いた、というとても興味深い2週間でした。

image by: 日本大学 アメリカンフットボール部 PHOENIX - Home | Facebook

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