少子化問題が叫ばれ始めて久しい日本ですが、お隣台湾は我が国以上に深刻な状況に陥っているようです。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、少子化が止まらない台湾社会の現状とその原因を紹介するとともに、日台両国とも医療制度や年金制度が立ち行かなくなる前に手を打つべきと記しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年5月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【台湾】社会福祉が中国人に食い物にされていることが台湾の少子化の一因
台湾の少子化がとまらないようです。以下、記事を引用します。
台湾で独立志向の民主進歩党(民進党)の蔡英文政権が発足してから2年となった20日、蔡総統がインターネットによるライブでネットユーザーと交流し「少子化問題は台湾にとり最大の試練の一つだ」と訴え、政府の取り組みをアピールした。台湾の出生率は1.17と日本よりも低く、人口に占める65歳以上の高齢者の割合が今年3月末に14%を超えて高齢社会に突入。中国からの統一圧力が強まる中で、少子高齢化は安全保障問題にも結び付きかねず、対策を迫られている。
台湾の大規模な人口推移は戦後までさかのぼります。戦後、日本が台湾から出ていったかわりに中国大陸から国民党とともに大量の中国人難民が押し寄せました。その数は100万人とも200万人とも言われています。台湾から引き上げた日本人の数は50万人ほどだったため、その倍から4倍の人口が爆発的に増えたことになります。終戦当時の台湾の総人口は450万人ほどとなっています。
さらに、日本統治時代に台湾の医療や交通、農業や就学率などの向上が推進されたことによって、戦後台湾の社会は豊かになっていました。そのため、寿命は伸び、死亡率は低下しました。
それに加えて中国からの爆発的な人口流入です。台湾社会が人口抑制に向かったのは言うまでもないでしょう。その後、社会が成熟するに従って、女性の社会進出、晩婚化などが加速して、2~3人兄弟が主流となり、やがて一人っ子または子供を産まないという家庭が一般的となり、出生率は低下していきました。出生率に関しては、台湾社会も同じような過程をたどっています。そして今、台湾のほかにシンガポール、香港、韓国などの東アジア各国は少子化問題に悩まされています。
● 世界各国の出生率(内閣府)
少子化社会とセットでやってくるのは高齢化社会です。台湾も少子化対策として、幼稚園の公立化などを進める一方で、高齢化社会への対策も同時進行させています。台湾の出生率が日本よりも低いのは、台湾ならではの事情もあります。
台湾社会は夫婦共働きが主流です。しかも妻はパートタイムではなく、フルタイムで働くのが一般的です。子供は祖父母、あるいは外国人メイドなどに預け、夫婦はせっせと稼がなければ、台湾の物価に家計が追いつかないという現実もあります。
特に都市部では、若夫婦と祖父母の生活を維持するためには共稼ぎでなければ厳しいでしょう。さらに、台湾では家族や親戚が大勢で食事をする文化がある一方で、小吃や一人鍋などおひとりさま用の食事も豊富にあります。女性も男性も結婚の必要性を感じる場面が減っているのも確かです。こうして少子化がどんどん進み、教育機関の減少も出てきているようです。以下、報道を一部引用します。
台湾は長い年月をかけて高等教育機関を拡充し、総合大学126校、単科大学19校、短期大学13校がひしめき合うまでになりました(2016年報道より)。しかし今となっては、学生の獲得に頭を悩ませている学校も少なくありません。台湾教育省(MOE)は、大学生の人数が2016年から減少傾向にあり、国内の公立・私立大学の入学者数は2013年から2023年の10年間に31万人も減少するだろうと推定しています。
2015-2016年の新入生の数は、前年の27万人から25万人に減少(対前年比で7.4%減)しましたが、この傾向は大きくなり、2019年の新入生の数は前年比で3万人減少すると推測されています。その結果、公立・私立に関わらず国内の大学の52校が閉鎖もしくは合併されるとの見方もあり、少子化が高等教育機関に大きな影響を及ぼすようになっているのです。台湾の人口を維持するには合計特殊出生率2.1が必要とされる中、増加が見通せず、学校運営の見直しを迫られる大学が出てきています。
教育機関の減少は学力の低下にもつながりかねず、ひいては国力の減退にも結びつきます。李登輝が種を撒き、蔡政権時代になってやっと中国と対等に渡り合おうとしている大切な、国力が低下してしまっては心もとないというものです。根気強く少子化対策を続け、なんとか出生率を上昇させて頂きたいものです。
少子高齢化が深刻なのは、日本も中国も同様ですが、より深刻なのは台湾と韓国です。こうした国々においては、労働人口の減少は避けられません。中国の総人口は13億人とも15億人とも言われていますが、仮にその間を取って14億人だとしても、すでにインドに追い越されています。しかも少子高齢化問題は、どれだけ「どう改善するか」を協議しても、人の意思と決意で完全にクリアできる問題ではありません。日本の国会も、他の問題を棚に上げてでも、もっと早く真剣にこの問題に取り組むべきです。
中国も、少子高齢化問題が表面化して以来、一人っ子政策を廃止して少子化に歯止めをかけようとしていますが、すでに手遅れです。中国の若者世代は、経済的状況またはライフスタイルなどを理由に子供を多く持とうとしません。亡国の危機を感じた共産党政府は、国外から人材をかき集めています。例えば、日本の定年退職した技術者たちの誘致、台湾の大学教授や学生たちの誘致などです。こうした中国のなりふり構わぬ慌てぶりについては、台湾と日本も学んでもいいでしょう。日台は、この問題について深刻な危機感を持っているとは思えないからです。
台湾は、蔡政権になってから経済成長率は伸びているにもかかわらず、人気は低迷しています。その理由としては、このメルマガでも取り上げたことのある年金制度改革問題をめぐる中国統一派の存在などがあるでしょう。台湾の医療制度はかなり質の高いものですが、台湾に流入してくる中国人に喰い物にされているという実態もあります。年金制度と医療制度の改革はなかなか難しい課題です。少子化がこれ以上昂進して医療制度や年金制度が立ち行かなくなる前に、日台政府は手を打つべきです。
image by: 中華民國行政院 - Home | Facebook
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2018年5月分
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