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安倍総理も出席する会議に金正恩を招待したプーチンの「皮算用」

プーチン大統領が9月に自国で行われる経済フォーラムに、金正恩朝鮮労働党委員長を招待したことが報じられています。同フォーラムには安倍総理も出席予定とのことで「日朝首脳会談」の実現も期待されるところですが、そもそもなぜプーチン大統領は金委員長を招くのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、「ロシアにとっての朝鮮半島問題」の分析を記すとともに、プーチン大統領が金委員長を招いてまで伝えたいメッセージの内容を推測しています。

プーチン、金正恩を招待、なぜ?

ロシア大統領、9月の極東フォーラムに正恩氏招待=外相訪朝で伝える

6/4(月)17:55配信

 

【モスクワ時事】ロシア下院のメリニコフ第1副議長は4日、プーチン大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を9月に極東ウラジオストクで開催される「東方経済フォーラム」に招いたことを明らかにした。モスクワを訪問した北朝鮮最高人民会議代表団との会合で語った。

「東方経済フォーラム」は、9月11日~13日に開催されるそうです。安倍総理も参加される予定ですから、「日朝首脳会談」も行われるかもしれません。

ところでプーチンは、金に会って、何をいうつもりなのでしょうか?

基本から抑えておきましょう。プーチン・ロシアの本質は、「アメリカが悪の根源だ!」という信念です。なぜ、そういう信念が形成されたのでしょうか? まず、「共産主義教」がそう教えていた。共産主義教は、「資本主義が悪の根源」と教えます。そして、「悪の資本主義の総本山は、アメリカ(とイギリス)である。それで、1917~1991年までつづいたソ連の主敵は米英でした。

1991年末にソ連が崩壊すると、新生ロシアと米英の関係は一時よくなった。しかし、関係は徐々に悪化していきました。ロシア側にいわせると、理由は、「アメリカがNATOを拡大したから」となります。NATOは、いうまでもなく「反ロシア軍事ブロック」。ソ連崩壊後、NATO加盟国は13か国増えた。そのほとんどは、かつてロシア(ソ連)の影響圏だった東欧の国々です。

バルト3国は、旧ソ連、つまりロシアにとっては、「かつて自国領だった国々」である。さらに、アメリカは、これも旧ソ連で、ロシアの隣国、ウクライナ、グルジアをNATOに入れようとしている。

反ロシア軍事同盟をどんどん拡大している

プーチンがアメリカを憎悪している理由は、ここにあるのです。

ロシアの西側は、こんな感じ。東側はどうでしょうか? こちらには、アメリカの同盟国・日本と韓国がいる。北朝鮮の位置づけは、「アメリカの侵略を防ぐ『緩衝国家』」。ですから、プーチンは、ロシアの国益のために北朝鮮と金を守ります。彼は、どうやって金を守っているのか? ここでは長くなるので詳述しません。興味のある方は、こちらをご一読ください。

プーチンにとっての北朝鮮核問題

では、プーチンにとって、北朝鮮核問題はどうなのでしょうか? 彼は主張は、以下のとおりです。

なぜこういう話になるのでしょうか? ロシアが、北朝鮮の非核化を支持しているのは確かです。しかし、その理由は、日本、アメリカ、韓国とは違う。日米韓が、北の核に反対するのは、「核攻撃されるリスクがあるから」。とても深刻ですね。一方、ロシアには、「北から核攻撃される」というリスクがありません。しかし、ロシアは「核の寡占状態を維持したい」ので北の核に反対します。もし「北の核はOK」という話になれば、日本や韓国の核武装を阻止できる根拠がなくなってしまう

次に、なぜロシアは、戦争反対、対話支持なのでしょうか? これは、わかりますね。戦争になれば、必ずアメリカが勝つ。そうなると、「緩衝国家は消滅し、戦後、ロシアと北の国境に米軍基地ができる可能性が高い。これは困ります。

プーチンは、金に何をいうか?

6月12日の米朝首脳会談でどうなるかにもよりますが。それでも、プーチンが金に伝えるメッセージは、同じだと思います。つまり、「決して、決して、決してアメリカを信じるな!」。

プーチンは、アメリカのイラク戦争に反対でした。しかし、守り切れず、フセインは殺された。プーチンは、2011年の米英仏によるリビア攻撃に反対でした。しかし、彼は当時首相で、大統領はアメリカ好きのメドベージェフだった。メドは、アメリカに取り込まれ、カダフィを見捨てた。結果、カダフィは殺されました。そしてプーチンは今、シリアのアサドを守っています。アメリカは、熱心に「反アサド」を支援していましたが、7年の内戦を経て、いまだにアサドを倒せないでいる。

ロシアは、「緩衝国家」の長・金正恩を、これからも可能なかぎり守ることでしょう。日本にとって、とても迷惑なことですが、「ロシアの国益は何で、プーチンの考えはこうで」ということは、正確に知っておく必要があるでしょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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