ネットショップの台頭で、リアル店舗が窮地に立たされていると言われる昨今。もう何も手立てはないのでしょうか? 無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者・梅本泰則さんは、「ネットショップにできない強みを持てば必ずお客様は戻ってくる」と、リアル店舗の生き残る術を伝授しています。
嬉しいお客様の声
知人から、こんなメールがありました。
この間、うちの娘(中2)が陸上のジョギングシューズを買いに近所のスポーツ店に行きました。お相手をしてくださったのは、以前買ったときにもアドバイスをくれた店員さんでした。娘を見てももちろん思い出せないでしょうが、なんと、古びたクツを出したとたんに、「あ、このクツは、1年前にこのあたりに置いてあったクツで、そのとき買ってくださったんですね」と。
娘ももう、ビックリ。時期から値段から、そのクツをすすめた背景まで覚えているんですね。その方が薦めた次のクツを買ったのは言うまでもありません。A社製のフィット感のいい靴になって喜んでいる、娘の記録が少しでも伸びると嬉しいです。お店のこだわりがスタッフに浸透しているのを感じました。
この「近所のお店」にとって、何とも嬉しい「お客様の声」です。一方、お客様にとっては、「なくてはならないお店」なのだと思います。
あなたのお店にも、きっとこんな声がたくさん届いていることでしょう。そして、この嬉しいメールの中から、いくつかのことが読み取れます。
・このお店は、スタッフの教育に熱心である
・お客様のことを覚えるという文化がある
・「記録をのばす」というお客様のニーズを理解している
・スタッフは高い商品知識を持っている
・お店が目指すところを、スタッフが分かっている
私は、このようなことを読み取りました。どれも、繁盛店としての必要なことばかりです。きっとこのお店は繁盛しているに違いありません。
リアル店舗の強み
そして、これらは「リアル店舗」の強みでもあります。と同時に、町のスポーツショップの強みと言っても良いでしょう。
これらをもう少し整理してみますと、町のスポーツショップの強みは次のようなことだと言えます。
・個々のお客様の情報をしっかりと持っていること
・こだわりのある特徴的な商品をそろえていること
・スタッフの商品知識と接客力が高いこと
・お客様が相談しながら商品選びができること
・お客様に商品の正しい使い方を伝えられること
いかがでしょうか。もちろん、町のスポーツショップの「強み」は、まだまだ他にもあげられますが、これだけでも、かなりの強みといえるでしょう。それなのに、ネットショップや大手チェーンにお客様をとられてしまうとびくびくしているお店があるのは、どうしたことでしょう。
良い例が、お客様の「ショールーミング」です。「せっかくお客様に合った商品を選んで丁寧に説明してあげたのに、うちの店で買わずに、その商品をネットで買うお客様には、参ってしまう」。切々とそう訴えられた店主もいます。
私は、そのお店の方には、こう言いました。
「いいではないですか。お客様に商品の説明が出来ただけでも良いことをしました。そのお客様は、いずれまたあなたのお店で買ってくれますよ」
なぜでしょうか。それは、お店で探した商品をネットで買っても、ネットショップはその後のフォローを十分にはしてくれないからです。
ネットショップには出来ないこと
例えば、商品が壊れたり傷んだりしても、ネットショップではうまく修理が出来ません。買った商品のサイズが合わないとき、その返品交換手続きは手間がかかります。
また一方、商品の説明を受けた「リアル店舗」でスポーツ教室やイベントが企画されたとしても、その案内は届かないでしょう。ネットショップには、そんな企画やサービスを提供するところはありません。つまり、ネットで買ったお客様は、リアル店舗で購入した時のメリットを手に出来ないのです。
やがて、お客様はそのことに気が付きます。そして、丁寧な説明をしてくれたお店のことを思い出すのです。すると、あなたのお店に戻ってきてくれます。ですから、少しも心配することはありません。
要するに、ネット販売では、お客様とお店が「心」でつながることはないのです。リアル店舗は、まさに人間対人間の世界です。ですから、経営者の人間力が問われます。当然、そこで働くスタッフの人間力にも影響を与えます。優れた経営者の下では、スタッフも優れた人間になっていくことでしょう。それが、組織というものです。これが、お店の「強み」となって現れます。
先に紹介したお店のように。そうしたお店とつながったお客様は幸せです。また、おのずと、そのお店は地域を元気にしたり明るくしたり、社会貢献をしてくれます。スポーツ用品を扱いながら、地域貢献ができるのは嬉しいことではないですか。
これはネットショップにはできないことです。ネットショップばかりでなく、大手スポーツチェーンにもできないことかもしれません。最近の世相に流されないで、リアル店舗としての強みを発揮していきましょう。そして、最初に紹介したような「お客様の声」がたくさん届くよう、お客様との「心」をつないでいきましょう。
■今日のツボ■
・リアル店舗には、多くの強みがある
・そして、リアル店舗は人間対人間の世界である
・ネットショップは、お客様と「心」がつながっていない
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