日本はアメリカの戦略構想の中から完全に締め出されている──。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、50年以上ホワイトハウスに密着した御年83歳のジャーナリストが執筆した。柴田さんも思わず「ほんまかいな」とつぶやく一冊。どのあたりが「ほんまかいな」なのでしょうか。
『日本人の知らないトランプのアメリカ』
日高義樹・著 海竜社
日高義樹『日本人の知らないトランプのアメリカ』を読んだ。39代大統領カーターから始まって、45代大統領トランプ至るまで、50年の長きにわたってホワイトハウスに密着取材を続けているジャーナリストによる深層レポート。トランプのアメリカはいま、想像を超えた大変化を起こしつつある。
トランプ政権のナショナル・セキュリティ・ストラテジー(国家安全保障戦略)は、2018年に入ってから詳しい内容が発表された。53ページに及ぶ文書にはアメリカの世界的な戦略構想が明らかにされているという。しかし、わたしはそういう報道を目にした覚えがない。まさか書籍で初見とは。本当のことなのか。
著者が驚き注目したのは、「日米安全保障条約」という項目も言葉もまったく見当たらないことだった。日本について言及しているのは、「日本はアメリカと協力して北朝鮮のミサイルを撃墜するためのミサイル防衛システムを配備している」という点だけである。日本はアメリカの戦略構想の中から完全に締め出されてしまった。本当か。そんな重要な話、どこからも聞いていない。
新しいアメリカの核戦力の基本になっているのは現実的国防戦力(リアリスティック・ストラテジー)である。今後アメリカは、他国とは軍事同盟を結ばず、軍基地を海外には置かない。国際紛争解決の第一線兵器として使われるのが、新しい小型核兵器だ。アメリカ第一主義のもと、アメリカの利権を守るためだけに戦う。日米同盟体勢も消滅するとか……。だから、聞いていないって。
アメリカのリベラルなメディアは依然として、トランプをアメリカの歴史始まって以来の最低の大統領だとこきおろしているが、トランプはそうした攻撃をものともせず、オバマが進めてきた社会主義的な政策をすべて撤廃し、アメリカ経済を自由主義的な方向に押し戻した。このため、トランプの指導者としての力量、政治家としての指導力を認める方向にアメリカが動き始めている。
トランプ戦略のもとになる三つの考え方がある。まず、外交戦略というのは戦いであり、必ず勝敗がある。二つ目は国際社会はジャングルのようなもので、常に間断なく戦闘が行われている危険な場所である。三つ目は外交では主義主張、道徳性、善悪については考えない。わかりやすいな。トランプが戦争につながる国家戦略に頼らざるを得なくなったのは、今までの大統領の失敗である。
トランプ直前の8年間、アメリカの軍事力を弱体化させ続けたオバマ、その前の8年間、軍事力の余裕がないまま9.11後のテロリストとの戦いを始め中東戦争の泥沼にアメリカを引き入れたブッシュ、その前の8年間、中国とロシアとの友好に力を入れアメリカの軍事的な立場を失わせたクリントン、あわせて24年間の軍事的失敗がトランプ政権にのしかかっている。最悪なのはオバマだ。
オバマは社会主義的色彩の濃いオバマ政治を維持するために、大統領になりたいだけで改革の理想も意志も持っていないヒラリーを後継者に据えようとした。その新しい体制づくりの中の重要な要素が、アメリカのマスメディアを自らの陣営にとりこみ、強力な宣伝機関をつくることだった。リベラルな官僚も、司法省やFBIもオバマ陣営の重要な戦力なのだ。生臭いな、オバマってやつは。
このレポートはくどい。表現を少し変えたくりかえしが多い。もってまわった表現も少なくない。50年もホワイトハウス通い(?)していると、日本語が下手になるのか。筆者の名前は20年前に「日本国初代大統領 桜木健一郎」という漫画の原作者として知っている。いま83歳。ほんまかいな? な本。
編集長 柴田忠男
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