業績が芳しくなくなってきた経営者から相談を受けたという、無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者・梅本泰則さん。聞けば、経営理念や行動規範はしっかりと持っているようなのですが…、それが業績に繋がらない理由は、意外なところにありました。
経営者のリーダーシップ
あなたは何のために経営をしていますか。売上や利益を上げるためですか。お客様に喜んでもらうためですか。社会の役に立つためですか。
いきなり、難しい問題になりましたね。
実は、経営者はどうあるべきかということに悩んでいる方に出会いました。どうも、最近の業績が芳しくないようです。そこで、その原因について聞いてみました。その経営者は、いろいろと原因を並べます。
- 子供の数が減ってきている
- 毎日やることが多すぎて、じっくりと戦略を練る時間がない
- 競合店が増えてきて、価格競争におちいっている
- 目新しい商品が少ない
- 以前に比べて広告宣伝の効果が薄くなっている
- 問屋さんが協力的でなくなっている
- 在庫コントロールが難しくなっている
大変ですねえ。しかし、これらは本質的な原因ではないような気がします。その本質的な原因をさぐろうと、次のようにたずねてみました。
「会社の目指しているところは、どんなことですか」
経営者から、明確な返事が返ってきました。
「会社にたずさわる人たちが幸せになることです」
なるほど。悪くありません。
続いて質問をしました。
「そのために、社員の人たちにどんな心構えを持っていただいていますか」
つまり、社員の皆さんの行動規範はあるか、ということです。さすがにそれは持っていないだろうと思っていました。そんなスポーツショップは珍しいからです。ところが、即座に返事が返ってくるではありませんか。
社員の人たちとの話
経営者は言いました。
「わが社の行動規範は
- お客様に感動を届ける
- 自分の強みを活かしつつ楽しんで仕事をする
- 自分で考えて行動する
ということです」
すごいですね。しっかりとした考えを持った経営者です。しかし、こんな立派な方針があるのに、会社の業績がよくありません。不思議です。
そこで、経営者にお願いして、主だった社員の方何人かに集まってもらい、30分ほど話を聞かせていただくことにしました。経営者がいると話しづらいでしょうから、彼には席を外してもらいます。
いろいろ質問をしましたが、中にこんな質問を混ぜました。
「仕事は楽しいですか?」
すると、皆さん顔を見合わせています。私は、てっきり「はい!」という声が聞こえるとばかり思っていました。楽しんで仕事をすることを方針にしているからです。しかし、皆さんの表情からすると、どうも仕事を心から楽しめてはいないようです。
こんなことも聞きました。
「この会社は、何を目指していいると思いますか?」
先ほど経営者にした質問と同じです。皆さん「??」という表情をしています。質問の意味がわからないようなので説明しました。しかしそれでも返事は返ってきません。そして最後に、「会社の行動規範をご存知ですか?」と尋ねますと、「聞いたことがあるようなないような」という返事でした。
うーん。これは問題です。まったく会社の方向性が社員の皆さんに伝わっていません。どうしてそんなことになってしまっているのでしょうか。
伝わらない理由
理由は簡単です。経営者が社員にしっかりと伝えていないからです。いえ、伝えているのかもしれませんが、「伝わって」いません。これが、この会社の業績が振るわない原因のような気がします。
業績が悪くなり始めると、小手先の販売戦略やプロモーションにいくら力を入れても事態が良くならないことが多いです。そういう場合は、根本に立ち戻らなければいけません。つまり、会社の理念やミッション、目標、行動指針といったことです。そうした、基本的なことが、社員の皆さんに浸透していません。
これは、社員を同じ方向に向かせるという、経営者のリーダーシップに問題がありそうです。本気で「会社にたずさわる人たちが幸せになる」ことが目標ならばそのことを毎日でも言い続けなくてはいけません。
そのための行動規範も言い続けなくてはいけません。社員の一つ一つの行動がその規範に沿っているかどうか、確認します。それが、経営者の発揮すべきリーダーシップです。
業績が良かったころは、たいしてそんなことを考えなくてもうまく回っていました。そこで経営者は勘違いしたのかもしれません。「皆、会社の方向性を分ってくれている」と。しかし、目先のことばかりに目を奪われていると、肝心の大切なことがおろそかになります。会社が守るべき指針を社員全体で共有することができなくなってしまうのです。
ですから、この経営者はもう一度全社員に会社の目指す方向性をしっかりと伝え、浸透させる必要があります。すでに「あるべき姿」や「行動指針」が明確になっているのですから、大丈夫です。経営者がリーダーシップを持って運用していけば、きっと早いうちに業績は回復していくことでしょう。
あなたのお店はどうでしょうか。経営者としてのリーダーシップを十分に発揮していますか。
■今日のツボ■
- 理念や方向性が社員に伝わっていないと、業績の回復がむつかしい
- 経営者のリーダーシップによって、それを伝えて浸透させる
- 目先の解決策ではなく、本質的な問題の解決をしていく
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