米国の家電業界や国内大手企業は今、最先端の「スポーツ用品」の開発をこぞって進めているそうです。無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者・梅本泰則さんは、これら他業種のスポーツ市場参入について「チャンスでもある」として、スポーツ業界ができること、取り組むべき課題などを記しています。
家電業界がスポーツ市場に参入するのか
日本で大きな成長をとげた小売業の多くは、米国のやり方を真似したものです。大手スーパー、専門店チェーン、ディスカウントストアなど、米国に学んだ業態が次々と市場を席巻していきました。ネットショップもネットオークションも同じです。ですから、米国の流通業の動きを見ていると、今後の日本の市場がどうなっていくのか、ある程度は予想できます。そして、その米国の家電業界で面白いことが起こっているようです。
全米最大の消費者家電見本市(CES)という展示会があります。ジェトロの「米国スポーツ市場・産業動向調査」によれば、そこには「スポーツ・ゾーン」というコーナーが設けられているというのです。そのコーナーでは、スポーツ用具やスポーツウエアに組み込まれる先端技術が発表されています。例えば、
- ランナーの走行状態をAI(人工知能)で分析し適切なコーチングをするイヤホン
- 選手目線でとらえたアメフトの試合映像が見られるヘルメット埋め込み式小型カメラ
といったものです。その他、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)によるスポーツ観戦ツールも発表されているとあります。この展示会は、日本でも盛んに開催されているイノベーション技術の展示会ではありません。家電の展示会なのです。
CESにおける「スポーツ・ゾーン」の規模はまだまだ小さいかもしれません。しかし、やがてこうした先端スポーツ用品が米国の家電チェーンやネットショップで販売されるようになることでしょう。気が付いたら大きな市場になっていたということも十分にあり得ます。
今後の流れ
しかも、映像や音を使った電化製品は、家電業界の得意な領域です。AI、VR、AR、配信映像を活用したスポーツ用品を家電店が積極的に扱っても何の不思議もありません。つまり、米国のCESで発表されたような先端スポーツ用品は、やがて家電業界の一つのジャンルとなることでしょう。
もしかしたら、その流れが日本にやってくるかもしれません。すでに日本の家電店でもフィットネス家電を販売しているのですから、スポーツ家電を扱うことは自然の流れのような気がします。
しかし、スポーツショップの皆さんは、そうした流れを黙って見ていていいのでしょうか。また、スポーツメーカーさんも何らかの対策を考えなくてもいいのでしょうか。
もちろん、大手スポーツメーカーさんは、いくつかの先端スポーツ用品を開発されています。ランナー用のデータ計測器やゴルフや野球のスイング解析器、といったところですね。しかし、AIやVRなどの技術を使ったスポーツ用品の開発はまだまだのようです。
その一方で、パナソニックなどの大手家電企業、キヤノンなどの映像技術企業、ドコモなどの通信技術企業が、こぞって先端的なスポーツ用品を開発しています。また、ベンチャー企業も続々とスポーツ市場に入ろうとしています。
ですから、スポーツメーカーさんは、こうした他業界の企業とタイアップをしてはどうかと思うのです。
スポーツ用品業界のチャンス
そこで先日、そうした業界の動きを見ようと大阪で行われた「スポーツビジネスジャパン2018」を訪ねました。残念ながら、さしたる先端スポーツ用品は出品されてはいませんでした。それでも、スポーツ市場に新しい波を起こそうという機運は感じることができました。確実に世の中は動いています。
とはいえ、このビジネスショーに出展していたスポーツメーカーさんは、たったの1社。しかも、未来のスポーツ産業への提案とは違ったものでした。これではいけません。スポーツ用品業界の感度が鈍すぎます。
家電や映像企業やIT関連企業が先端スポーツ用品を開発してくれているのはとてもありがたいことです。しかし、一方では家電企業やIT企業にスポーツに関する高度な知見やデータが十分にあるとは思えません。その点では、スポーツメーカーさんの方が、はるかに優れています。
それならば、先端技術を持った企業とスポーツメーカーさんが手を組めばどうでしょう。さらに優れた商品を作ることが出来るのではないでしょうか。はるかに競技者に役に立つ商品や、スポーツ観戦者がわくわくする商品が開発できると思うのです。
しかも、スポーツ用品業界には、スポーツショップという受け皿があります。スポーツに詳しい人たちが、そこには居るのです。つまり、スポーツ用品業界には家電売場で販売する商品ではなく、スポーツショップで販売できる商品を開発できる能力があります。それなのに、このままぼんやりとしていたら、市場を家電業界にとられてしまうことにならないでしょうか。
CESの「スポーツ・ゾーン」のことを知って、これはちょっと大変だと感じました。逆に言えば、スポーツ用品業界やスポーツショップにとっては、一つのチャンスなのではないでしょうか。
■今日のツボ■
- 米国では先端的なスポーツ用品が家電として開発されている
- 日本のスポーツメーカーは他業界の先端企業と手を組むべき
- スポーツ家電は、スポーツ業界にとって一つのチャンスとなる
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