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「4割値下げ発言」でさらにハードルが上がった楽天携帯の実現度

先日、総務大臣政務官を務める衆議院議員・小林史明氏にインタビューを行ったという、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。楽天の携帯電話参入に関して尋ねたところ、小林氏は「まずは民間で頑張ってもらう」と、当面のところ支援策は考えていないと発言。このところ大きな話題となっている菅官房長官の「4割値下げ発言」の余波も相まって、石川さんは「楽天携帯の前に立ちはだかるハードルはさらに高くなった」と、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で論じています。

総務省・小林政務官が語る「楽天の携帯電話事業参入」━━新技術の導入で「大手キャリアの4割引き料金」を実現できるか

今週、総務省・小林史明政務官にインタビューする機会を得た。

菅官房長官の「4割値下げ発言」についての疑問を、小林政務官にぶつけたので、その詳細は日経電子版「モバイルの達人」を読んでほしい。

小林政務官には、実は楽天の携帯電話参入についても質問している。

「楽天、本当に大丈夫なのか。総務省として支援策などは用意しないのか」という質問に対して、小林政務官は、

まずは民間で頑張ってもらう。楽天は覚悟を持って携帯電話市場に参入してきた。新しい技術を使ってチャレンジしてくるのを見守るしかない。邪魔が入らないのが重要であり、何かあれば、阻害要因は取り除く」というコメントであった。

総務省としては第4のキャリアとして期待しているようで「国内でローミングでサービスを提供するとなると、他キャリアの戦略もある。しかし、海外を見ても、上手にやっている地域もある。民間の間でどういう戦略を取るか選択肢はいろいろあるのではないか。楽天としては様々な事業を持っており、それらの事業とのシナジーを出せると判断し、覚悟して参入してきたのではないか。頑張って欲しい」と語った。

今後、楽天が既存キャリアに対して、ローミング接続を申し入れるも、既存キャリアからは「ビジネスベースでの交渉」で、相当な額をふっかけられ、総務省に泣き寝入りするという可能性も考えられるが、そうしたときも、総務省としては「まずは民間で頑張ってもらう」として突き放すことになるのかもしれない。

今週、楽天に関しては日経電子版が「基地局メーカーにノキアとアルティオスター・ネットワークスを採用したのではないか」と報じた。

専用設備ではなく、汎用サーバーを用いてネットワークを構築することで安価に抑え、設備投資を6000億円でまかなうつもりではないかという。

このタイミングでゼロからネットワークを構築するのだから、NFVで作り上げてくるのは当然だろう。問題はネットワーク側ではなく、街中に基地局の敷地を確保し、工事する費用の方ではないか。ネットワーク側が仮想化されたとしても、基地局の土地や人件費は仮想化できない。特に土地や人件費が10年前よりも安くなったという話は聞かない。そうしたコストは、今まで変わらないかむしろ、値上げしているわけで、NFVを採用したからといって、コストが劇的に下がるわけではないだろう。

菅官房長官の発言により、楽天の料金プランは、3キャリアが提供する4割以下の料金設定でなければならない雰囲気ができつつある。

果たして、ゼロから全国にネットワークを構築しながらも、4割以下の料金設定を実現できるのか。楽天のハードルは上がりつつあると言えそうだ。

KDDIが5GとIoTのビジネス開発拠点「DIGITAL GATE」を開設━━5Gネットワークを活かすパートナーの争奪戦が始まるか

KDDIは東京・虎ノ門に5GとIoTのビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」を開設。9月5日にはメディアに披露した。

虎ノ門に施設を作るという話は以前からしており、「どこに作るのかな」と思っていたら「虎ノ門ツインビルディング」とのこと。ここはかつて、NTTドコモが入っており、その後、イー・アクセスもオフィスにしたこともあるなど、通信業界関係者にとっては馴染みの深いビルといえる。KDDIは、富士通が入っていたフロアに施設をオープンさせたとのこと。

他キャリアは5G開始に向けて、5Gのソリューションを展示したり、実験が行える施設を相次いでオープンさせている。KDDI DIGITAL GATEが他と一線を画すのは、5GとIoTに加えて、アジャイル開発の環境や、スタートアップ支援も行っている点にあるだろう。これまで渋谷にあったKDDIムゲンラボも虎ノ門に移転している。

高橋誠社長は「これからは回線数の差で各キャリアが争うのではなく、クリエイティビティ、創造性の差になる。新しいビジネスモデルをいかに作れるか、そこにどんな価値をもたせられるかが重要になりそうだ」と語る。

その上でも、次のビジネスモデルを語れる場所を虎ノ門に設け、通信インフラだけでなく、スタートアップなどの支援も一緒に行う必要があるとしたようだ。

ここ最近、キャリア関係者に話を聞くと「5Gはこれまでの4Gのように面的にエリアを広げるのではなく、様々な企業とキャリアがパートナーとなり、その企業が必要とするエリアを5G化させていく方向性もあり得るのではないか」という声が多い。

つまり、建設工事の現場であれば、建設重機メーカーとキャリアが組み、そのエリアを5G化して、ショベルカーなどを遠隔操作できる環境を整備するというわけだ。その際の費用負担は、キャリアがすべて持つ場合もあるし、メーカーと折半、メーカーがすべて負担するなど様々だ。

各キャリアとも5Gに向けて「共創」といった言葉を使い始めているが、今後は回線数の獲得競争というよりも、いかに魅力的なパートナーを見つけ出せるかというのが重要となってきそうだ。5Gのポテンシャルを理解し、新しいビジネスモデルを一緒に作れるパートナーを他社に先駆けて見つけ出せるか、あるいは一緒にアイデアを出し合って形にできるか。

まさに5G時代全く新しい競争軸で、キャリア間の戦いが繰り広げられそうだ。

image by: shutterstock

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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