よく噂には聞いている「離婚したら元配偶者の年金を半分もらえる」という話、これは本当なのでしょうか? 今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、この「年金離婚時分割」というものについて詳しく解説しています。
年金離婚時分割ってつまりはこういう事!
年金の離婚分割はいろいろ細々とした内容はありますが、ザックリするとこういう事です。
離婚分割する時に、よく元配偶者から最高50%の年金を分けてもらうという話は出ますが、分けてもらうのは年金そのものではなく厚生年金の算出に使う今までのお給料(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)を分割するという事です。
ちなみに国民年金から支給される基礎年金は分割されません。基礎年金は個人単位で与えられた最低限の保障された年金だから。
で、分割するのはあくまで婚姻期間中にの厚生年金記録(共済組合の期間も)のみ。
例えば、婚姻期間に夫が稼いだお給料と賞与の総額が8,000万円だとします。8,000万円だったとしたら厚生年金額は概ね438,480円(→8,000万円÷1,000×5.481)。その間、妻は2,000万円稼いだとします。なお、年金分割の時に使う婚姻期間というのは「対象期間」と呼ばれます。
「さあ、離婚分割で元配偶者から最高50%貰いましょう!」ってなった時に、夫のお給料と賞与の総額(対象期間の標準報酬総額)8,000万円の50%である4,000万円をもらえるのか?
そうではないです。そんなかわいそうな事しないです(笑)。
まず、当事者同士のお給料の総額(対象期間の標準報酬総額という)を求めます。そうすると夫8,000万円+妻2,000万円=1億円になりますよね。この1億円を50%にしようって事なんです。この50%を一般的に「按分割合」と言います。これは夫婦の合意で決めたり、裁判所で決める。
按分割合は下限20%(→0.2)<按分割合≦上限50%(→0.5)の間で決める。
20%というのは、夫婦の標準報酬総額の1億円に対し、妻の2,000万円が占める割合。つまり分割される側の妻の報酬総額を下限として、その下限より上の分割割合で決めて50%を上限にしてくださいねって事。まあ、離婚分割を希望する夫婦の9割以上は50%で決着してますけどね…。
上限の50%で1億円を分割するとなれば、お互い5,000万円ずつになりますよね。夫の対象期間標準報酬総額は3,000万円減って5,000万円になる。一方、妻は3,000万円増えて5,000万円になる。夫婦が望んだ按分割合50%通りに分割されました。
この時、夫の8,000万円から3,000万円が妻に分割されたという事になりますよね。3,000万円というのは、8,000万円に対して0.375(→3,000万円÷8,000万円)の割合が分割されたわけです。
どういうことなのか。
按分割合通りの離婚分割を実行するために、「改定割合」という数値を求めないといけないんですね。その改定割合というのがさっきの0.375。この0.375を求めるために、以下のような計算をします。
・改定割合→按分割合0.5(50%って事)-(妻の報酬総額2,000万円÷夫の報酬総額8,000万円)×(1-按分割合0.5)=0.375
となります。この0.375を夫婦の報酬総額に掛ける。
・分割する側である夫は、8,000万円×(1-0.375)=5,000万円
8,000万円を1として、0.375の割合を分けますよ! っていう意味。お給料総額が5,000万円に減ったら厚生年金総額は概ね274,050円(→5,000万円÷1,000×5.481)。
・分割される側の妻は2,000万円+8,000万円×0.375=5,000万円
夫の8,000万円から0.375の割合を頂戴します! って事。つまり、按分割合50%通りに年金分割できましたって事です。
按分割合が0.5(50%って事)なのに、改定割合が0.375となって下がってる! 按分割合通りになってないやんかo(`ω´ )o! というわけではなく、改定割合というのは「元夫婦が決めた按分割合通りに分割するために求める数値」なので、全く別物と思ってもらったほうがいいですね。
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