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安倍総理の譲歩にトランプ上機嫌。日米首脳会談は成功だったのか

9月26日の日米首脳会談で日米物品貿易協定(TAG)締結に向けて交渉が開始され、安倍首相が米国の貿易赤字削減に積極協力する姿勢は賛否を呼んでいますが、果たして国益に適う結果は得られるのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、トランプ大統領の「有言実行外交」を解説し「日本の譲歩がプラスに働く理由」について持論を展開しています。

日米首脳会談、三つのポイント

皆さんご存知のように、安倍総理は26日、ニューヨークでトランプさんと会談しました。結果はどうだったのでしょうか?

  1. 日米物品貿易協定(TAG)の締結に向け、二国間交渉が開始されることになりました
    TAGってなんでしょう? FTA(自由貿易協定)とは、何が違うのでしょうか? TAGは「物」の貿易に関する協定。FTAは、「物」+「サービス」(金融も含む)。TAGは、対象が物だけに限定されているのですね。
  2. 交渉継続中、自動車などへの関税引き上げ措置は発動しません
  3. 農産物については、「過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限」ということで合意しました。日本は、TPP交渉で農産物の関税引き下げに合意した。日米TAG交渉でも、「そのレベルまでしか下げなくていいよ」と

以上三つが今回の首脳会談の重要ポイントです。トランプさんは満足しているようです。

「安倍首相と会ってきた。我々は日本と貿易交渉を開始している。日本は長年、貿易の議論をしたがらなかったが、今はやる気になった」

 

トランプ大統領は26日、国連総会を締めくくる記者会見で、真っ先に日本との貿易交渉の開始という成果を取り上げた。

(朝日新聞DIGITAL 9月27日)

ちなみに、RPEでは、「シェールガス、シェールオイル、攻撃型武器の輸入を増やすことで、アメリカの対日貿易赤字削減に協力しましょう」と書いてきました。報じているのは朝日新聞だけみたいですが、こんな話もありました。

さらに「私が『日本は我々の思いを受け入れなければならない。巨額の貿易赤字は嫌だ』と言うと、日本はすごい量の防衛装備品を買うことになった」と自身が日本から大きな譲歩を引き出したかのように語った。
(同上)

日本はすごい量の防衛装備品を買うことになった」そうです。これ、批判する人もいるでしょうが、私は「とてもいいこと」だと思います。日本は、GDP世界3位の大国でありながら、北朝鮮のような小国に脅されても何もできない。ですから、攻撃型の武器をそろえることが必要です。

普通、日本が軍拡すると、アメリカも含む周辺諸国が騒ぎます。しかし、今は「アメリカの貿易赤字を削減するため」といえる。トランプさんは喜び、日本は、ちゃっかり軍事的自立にむかっていくことができる

日米首脳会談は、成功か?

皆さん、どう思いますか? 私は「成功だった」と思います。なぜ? 9月6日にトランプさんがなんといっていたか、思いだしてください。

トランプ氏は6日、安倍晋三首相との親密な関係についても「(通商問題で)どのぐらい(対価を)払わなければならないかを伝えた途端、(関係は)終わるだろう」と語り、日本を貿易問題の「次の標的」にする姿勢を強めている。
(毎日新聞 9月8日)

トランプさんは、「安倍総理との良好な関係は終わるだろう」といっていた。ところが、日米首脳会談を終え、安倍ートランプ関係は良好なままです。そのために日本側が払った代償は、「TAG交渉を開始することに合意した」こと。

もちろん、大きなできごとではあります。しかし焦点となっている農産品については、「TPPで合意したレベルまでしか引き下げない」ことで、トランプさんも納得した。自動車については、「交渉継続中は、関税を引き上げない」ことで合意した。これで、良好な日米関係が保つことができたのは、ありがたいことです。

野党の皆さんは、「自分は何もやらなくていい」ので、総理を批判しています。しかし、米中関係をみてください。いまや、アメリカは、対中制裁第3弾を発動しています。安倍総理がとても愚かであれば、日米関係は、米中関係ほどに悪化する可能性があった。そうなれば、日本経済は、潰滅的打撃を受けるでしょう。

カナダについては、こんな情報があります。

米大統領:カナダ首相との会談拒否-貿易交渉に不満

Bloomberg 9/27(木)7:05配信

 

トランプ米大統領は26日、カナダとの貿易交渉に不満であり、国連総会に際してトルドー首相との2国間の会談を拒否したことを明らかにした。同大統領は「われわれはカナダとの交渉、同国の交渉スタイルに非常に不満だ」と述べた。

これを見ると、トランプさんは、やっていることが良い、悪いはともかく、「有言実行」であることがわかります。そして、同盟国でも容赦ない日本には、残念ながら、アメリカとケンカする力はありません

一方で、中国は、「日本には沖縄の領有権もない!」と宣言している。全国民必読証拠はこちら。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

日米関係が破壊されれば、中国は遠慮なく尖閣を奪いにくるでしょう。ですから日本は、何がなんでも日米関係を良好に保つ必要がある。これ、「ダメージをできるだけ減らす」といった、うしろ向きな「被害者意識」をもたなくてもいいと思います。たとえば、前述のように「攻撃型武器」を買えば、アメリカも喜ぶ。日本は、軍事の自立に大きく前進できるのですから。

というわけで、安倍総理タフな交渉お疲れ様でしたと感謝したいです。

image by: 首相官邸 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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