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訪朝の文在寅大統領に出されなかった「人造肉」という飢餓の産物

先日、平壌で第3回南北首脳会談が行われましたが、回を重ねるごとに両国間の友好ムードが高まりを見せています。北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さんは自身が主宰するメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』で、平壌国際空港での金正恩氏の出迎えや沿道の市民が手にした歓迎の旗などから北朝鮮サイドの「思惑」を推測。さらに「平壌市民がよく行く食堂に」と希望した文在寅氏を金正恩氏が案内した場所や北朝鮮国民に人気の食物等を紹介しています。

文在寅大統領が希望した平壌市民の食堂として案内されたのは…

3回目の南北首脳会談に臨むために、韓国の文在寅大統領夫妻は平壌に空路で降り立った。空港では金正恩が国内線の出入り口から出てきて迎えた。国際線の出入り口ではなく、国内線の出入り口を利用したのは、韓国がもはや外国ではない」という認識があったのか。

沿道では15万人の平壌市民が歓迎の旗を振っていたが、韓国の太極旗ではなく統一旗と北朝鮮の国旗(韓国では人共旗=インゴンギ)であった。本来なら外国の元首を迎えるのであるから、韓国の国旗でなければならないのだが、金正恩政権は「韓国はもはや外国ではないのだから太極旗は必要ない」と思ったのだろう。

これに対して、文在寅大統領は違和感を抱かなかったのだろうか。文大統領は18日の夕食会の歓迎会で「金正恩委員長がいかにして北朝鮮の国づくりを行っているかが分かった」と持ち上げた。

会場の木蘭館のレセプション会場の壁に統一旗が掲げられていたが、鬱陵島と同じくらいの大きさで竹島韓国では独島が描かれていた(済州島よりもはるかに小さな島々なのに、これと同じくらいの大きさで描かれていた)。

北朝鮮は平昌冬季オリンピックの時もこの2つの島が入った統一旗を会場に持ち込んで物議をかもしたが、それにしても大きな竹島の図には驚いた。

次の日に文大統領は「ピョンヤン市民がよく行く食堂で食事をしたい」と要望していたので、北朝鮮側は最近話題となっている大同江岸にできた、新鮮な刺身が食べられるという食堂(平壌大同江水産物食堂)に案内した。

確かに平壌市民がよく行く食堂かもしれないが、高級店である。新鮮な刺身なら韓国でいくらでも食べれるはずだが。文大統領は中国を国賓として訪問したとき、ある日の昼食だったか朝食だったかを、1人で、それこそ北京市民がよくいきそうな食堂で食事を体験したので、そのときのことを思い出して「平壌市民がよく利用する食堂」を要望したのだろうが、案内された店はどう見ても「北朝鮮の庶民がよく利用する店とは言い難い

私は文大統領が「平壌の庶民が食べているもの」を要望したなら、金正恩は何を提供するだろうか考えてみた。かつて、金正恩の父親の金正日総書記は「私は我が人民がいまだにカンネンイサルトウモロコシ米を食べていることを恥ずかしく寂しく?思う」と言ったことがある。

「カンネンイサル(トウモロコシ米)」は、いまだに食されており、平壌の庶民といえども「三食白米というわけにはいかない。その他、平壌の庶民が牛肉などの食感が味わえると人気の「インジョコギ人造肉)」を提供すれば、文大統領夫妻も韓国では味わえない「インジョコギ」に舌鼓を打ったかもしれない。人造肉は金正日時代の苦難の行軍時代に作られたといわれており、食糧難による飢餓状態から脱するために、この大豆かすの搾りかすからできた人造肉を好んで食べたのである。

金正恩にとっては父親時代の飢餓の産物である「人造肉」を提供するのもよかったのではないだろうか。

問題は次の20日に白頭山に登頂した時の出来事であるが、次号に述べる。

宮塚コリア研究所代表 宮塚 利雄

image by:shutterstock

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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