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現役医師が警告。高齢者以外にも急増してる「レジオネラ肺炎」

レジオネラ属菌を吸入することで罹るとされるレジオネラ肺炎。これまでは高齢者や糖尿病などで免疫が低下状態にある方々が罹りやすいとされていましたが、最近ではそれ以外の年齢層への感染例が増えていていると話すのは、現役医師である徳田安春先生。悪化すれば死に至ることもある、このレジオネラ肺炎の予防法を自らのメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』にて紹介しています。

レジオネラ肺炎が増えている理由とは?

私の普段の仕事は、沖縄のさまざまな病院で定期的に開かれている症例カンファレンスで研修医を指導することです。そこでは、研修医が最近自ら経験した、比較的珍しい病気の教訓的な症例について発表してもらっています。2018年夏のカンファレンスで、偶然にも同じ種類の病気が異なる病院で発表されるということがありました。

しかし、偶然は必然でもあります。私は、その病気が増える傾向にあることに気付きました。その病気とは、レジオネラ肺炎です。劇症型肺炎と呼ばれる死亡率の高い重症肺炎をきたすもので、レジオネラ属菌という細菌による肺炎です。従来は市中でみられる肺炎のうち全体の約5%程度でしたが、今はもっと増えていると私は考えています。実際、国立感染症研究所のデータも、この肺炎が近年増加傾向であることを示しています。

レジオネラ肺炎はレジオネラ属菌が経気道感染して起こる感染症です。肺炎以外には、若年層が感染したときの感冒型があります。ヒトからヒトへの感染はありません。肺炎の潜伏期間は2~14日といわれています。よくみられる症状は、発熱、咳、呼吸困難、意識障害、下痢、腹痛(2.3%)です。高齢患者では、呼吸困難を感じる割合が高くなります。

水に注意せよ

レジオネラ属菌の最大の特徴は水を好むことです。レジオネラ属菌は水中や湿った土壌中などにアメーバ等の原虫類を宿主として存在しています。高温環境を好み、20~45度で繁殖し、36度前後で最もよく繁殖します。温泉やサウナ、エアコン、ビルのクーリングタワーなどから周辺の空気中に排出される靄(もや)や水滴などに含まれており、それを肺に吸入することが原因になります。

2007年から約10年間に報告された約1万例の統計をみると、毎年7月に多く発生していることがわかりました。つまり、レジオネラ肺炎は増えています。しかも夏の重症肺炎としてです。水温が36度前後で最もよく繁殖することから、酷暑で水分を含む環境で増えた可能性が高いと考えられます。これらのことを合わせて考えると、レジオネラ肺炎の増加は地球温暖化が要因であるといえます。

これまでは、温泉やサウナが代表的な感染経路でした。しかし、地球温暖化によって、市中のあらゆる場所が温泉やサウナのような状況となりました。エアコン、クーリングタワー、噴水、庭の土壌など、暑い中で水が撒かれるところでは、レジオネラ属菌がいると認識しましょう。そこで、靄や水滴を吸入すると菌の曝露となるのです。

レジオネラ肺炎にかかりやすい人とは

私の病院群のカンファレンスで拝見したレジオネラ肺炎のお二人の患者さんは、中高年の男性で50代と60代の患者さんでした。しかし、いずれも特に大きな病気を持っていない、比較的健康な方々だったのです。お一人はエアコンの設置や点検作業を行う仕事をしていました。もうお一人は、病院周辺の庭を管理し整理する仕事をしていました。感染経路は、それぞれ水系と塵埃によるケースと考えられました。

レジオネラ肺炎にかかりやすい人は、これまで高齢者や、糖尿病などの免疫低下状態がある方々でした。しかし、我々の経験した患者さんもそうでしたが、それほど高齢でもなく糖尿病などの病気もない方々でも、みられるようになったのです。国立感染症研究所の調査でも、50代以上からレジオネラ肺炎患者数の増加が顕著ということがわかりました。

では、今後レジオネラ肺炎に罹らないようにするにはどうすればよいのでしょうか。まず、糖尿病などの生活習慣病にかからないように体調管理することです。また夏の暑い時期には、温泉やサウナ、エアコン、ビルのクーリングタワーなどから排出される靄や水滴などをなるべく吸入しないようにすることです。そして最も大切なことは、地球温暖化を人類皆で最小限にする行動を起こすことだと私は思います。

文献
JT Walker. The influence of climate change on waterborne disease and Legionella: a review. Perspectives in public health 138 (5), 282-286, 2018

image by: Shutterstock.com

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