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勤務時間外のメールは無視OK。欧米で拡大する、つながらない権利

ネット環境やスマホなどの通信手段の発達で、ある意味いつでも「囚われの身」状態にある私たち現代人。仕事上のメールには即レスに近いものを求められるなど、非常にストレスフルでもあります。健康社会学者の河合薫さんは、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、欧米で広がりを見せる「つながらない権利」を紹介するとともに、「週末だけでもデジタルデトックスを」と呼びかけています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年10月31日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

求む!「つながらない権利」

勤務時間外のメールは無視してオッケー!」――。そんな夢のようなルールが海の向こう、ニューヨーク市議会で検討中との報道がありました。

条例案では、企業(従業員10人以上)に「時間外のメールに返信する必要がない」などのルールの明文化を義務付け、返信しないことによる懲罰的な扱いも禁止。企業が違反した場合は、罰金も科すなど、徹底的に働く人たちの「つながらない権利=right to disconnect)」を保障する内容になっています。

今回のムーブメントは欧州に追従するもので、既に1年前にフランスやイタリアでは法律が成立。自主的に規制する企業もあり、ドイツのダイムラー社では、休暇中の社員あてのメールが自動的に消去される仕組みを導入し、メールの送信者は、社員の休暇終了後に再送するか、緊急の場合は同僚にメールを転送するかしなくてはならないそうです。

…うらやましい。マジ、うらやましいです。

日本も「こういうのを働き方改革で検討してよ!」と、私の脳内の突っ込み隊は大騒ぎです。

今の政府が取り組んでいるのは「働き方改革ならぬ働かせ方改革」。働く人たちの健康など眼中にないのでは?と文句の一つや二つ言いたくなるものばかりです。

真の働き方改革、というのは、それまで見過ごされていたこと、仕方がないとされていたことを「みんなの問題」として考え、解決しようと努力することなんじゃないか、と。

かくされてきた悲鳴を掘り起こし、「今まで当たり前」だったことを「本当に当たり前なのか?」「本当に必要なのか」と考えてみる。

「つながらない権利」は、まさにそれ。時間外まで追いかけ回し、「今、この時間に解決しなければならない問題」など、そんなにあるわけないのです。

おそらくお偉い人たちは「たかがメールだろ?」と口を尖らせているかもしれませんが、メールに四六時中拘束される状態は、働く人だけではなく、家族関係にも悪影響を及ぼす可能性がある、極めて悪質なストレッサー(ストレスの原因)です。

休日も心が仕事から解放されない緊張状態はテレプレッシャー(telepressure)」と呼ばれ、「部下は上司に即レスすべし」「従業員は顧客に即レスすべし」「深夜や休日にレスしない社員=ダメな社員」といった暗黙のルールが存在する企業に勤める人ほど、テレプレッシャーは高まります。

ノーザンイリノイ大学のラリサ・K・バーバー博士らの調査では、強いテレプレッシャーを感じている労働者の睡眠の質は低く、「仕事に行こうという気にならない」「自分は電池切れのように感じる」「集中できない」といった傾向が強い。

また、バージニア工科大の研究チームの調査では、父親が高いテレプレッシャーを感じていると、家族の幸福感が低下することもわかりました。

ただでさえ、現代の仕事は精神的緊張を強いられがち。職場ではひたすらパソコンの画面を見つめ、時間的なプレッシャーに晒され無駄話もせず、黙々と仕事する。…プレッシャーだらけの24時間を強いられているのが現代の労働者なのです。

精神的緊張で疲弊した心が元気を取り戻すには、十分な睡眠に加え、家族や友人とおしゃべりを楽しんだり、美味しいものを食べたり映画やテレビをボ~ッとみたり、趣味に没頭したり…といった時間が必要不可欠。

たかがメール。されどメール。

せめて週末だけでもデジタルデトックス」をやってみてください。

週明けにメールをたちあげたときに、なだれ込む何百通ものメールにうんざりするかもしれませんが…、それでもせめて「つながらない権利」を。是非!

image by: Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年10月31日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

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※『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年10月31日号)より一部抜粋

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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