無責任な政治家や学者、マスコミを実名で斬るエッセイが話題を呼んでいます。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、そのなんとも痛快な内容を紹介しています。
『マスコミ偽善者列伝 建て前を言いつのる人々』
加地伸行・著 飛鳥新社
加地伸行『マスコミ偽善者列伝 建て前を言いつのる人々』を読んだ。著者は大阪大学名誉教授、82歳。専門の中国古典を引いて、無責任、無定見な政治家、学者、マスコミなどを実名で斬りまくる、何とも痛快な本。産経連載のタイトルは『古典個展』、コテンコテンで容赦がないが、クレームはないらしい。
「言説」を実名で斬られた人は浜矩子、澤地久枝、浅井基文、樋口恵子、湯浅誠、桐野夏生、山崎正和、岸井成格、前川喜平、寺島実郎、小沢隆一、島田雅彦、長谷部恭男、米谷ふみ子、鈴木邦男・なかにし礼、加藤典洋、平野武ら。それぞれ辛辣なタイトルもステキだ。教育、貧困・格差と社会保障、マスコミ、憲法、戦争、政治家、宗教と儀礼、老生の立場について、という章立てである。
浜某は動機を勝手に特定しての噂話のばらまきで、おそろしくレベルが低い。「アホノミクス」という笑えない下品な造語は、「どアホノミクス」に更新したらしい。単なる政権全面否定だけで、己が考え出した具体的提言が一切ない。裏返すと無能。安倍首相が「戦後レジームからの脱却」と言っている以上、それは戦前=大日本帝国に戻ることを意味するとしか解釈できない、という人。
「浜某の立場は己の思い込みという、単純な個人的感情表白に過ぎず、そこに論理性がまったくない」。もう「論」ではなくて「感情」であり、井戸端会議での噂話の域。こんな低レベルの輩が、同志社大学大学院の教授だというんだから、学生が可哀想である。この人、自著の表紙に顔出ししているがナントモ……。
かつては元気だった左筋のなれの果て、似非者どもの愚説愚論を山ほどひいて、めったくそ笑い飛ばす。常に反対のための反対をすることが左筋の本質。とにかく保守政権の悪口を言っておれば、「高度の批判」風にみせかけることができる。そのために捏造だって平気という荒廃。こんな気楽な商売はない、と。
島田雅彦は朝日新聞の約3,000字もの寄稿文で「憲法は法律ではなく日本人の倫理の経典である」と、恐るべきことを書く。日本国憲法はまがりなりにも、国会で承認された法律である。それが倫理の経典であるというのなら、〈倫理〉を国会が決めたということなのか。法律は義務であり強制される。倫理道徳は良心に依り、法は義務に基づく、これは倫理学・法学の基本の基である。
倫理学的にも法学的にも通らない珍説を「護憲学者は、島田某のこの珍説をどうするのか。同意するのか、しかと答えよ。島田某の珍説は通らない。通らない話をそのままそのまま載せるのが〈表現の自由〉というのか。編集の権威にかけて書き直させる、或いは没にすべきであろう」。島田雅彦は小説でも護憲派でさえ赤面する、憲法至上の小説書いているんだから依頼した方が愚かだ。
2014年に集団的自衛権が閣議決定された。それ以前の半年間、朝日や毎日が中心になって連日、反対運動をしていた。さまざまな方面の人に反対論を述べさせていた。共通点は1つ、日本は戦争に巻き込まれ、若者は死んでゆく、これであった。あれからずいぶん経つが、日本は戦争に巻き込まれていない。いつになったら戦争になるんですか。お答えください。答えられないではないか。
実名を出しての厳しい論評。世の〈論〉と称するものは、論は何もなく「ただキャアキャア感情だけをぶつけ己の中身はなにもないのに正義の味方を気取っている型も多い。(略)その〈エエ格好シイ〉をいたぶるのは楽しい」ということで、年寄りの憎まれ口のオンパレードを読むのはじつに楽しい。
編集長 柴田忠男
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