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「こんなふうに育ってね」を共有しなければ子どもはそう育たない

ビジネスの現場では、企業と社員の価値観が正反対のため目標達成がうまくいかないというシーンが多々見られますが、子育ての現場でもそれは同様のようです。今回の無料メルマガ『子どもが育つ「父親術」』では、親の価値観を子どもとうまく共有し、具現化する方法を紹介しています。

インセンティブ設計

私事で恐縮ですが、私は自営業で業務設計コンサルティングを行っています。会社や組織のありたい姿、推進したいビジネス、改善したい内容に応じて「ちゃんとその方向に進むような業務の仕組みや評価制度を作る」というサービスです。

仕事の中で頻繁に出会う問題点のひとつが「会社がメンバーにやってもらいたいことメンバーが会社でやりたくなること」が噛み合っていない、というもの。ここを修正するだけで組織が活力を取り戻すケースもあるくらい、重要な要素でもあります。また、ここでつまずく組織の多くは、「メンバーが会社でやりたくなること」というのが(命令や指示ではなく)インセンティブ構造に応じて決まる、ということに対する理解が不足しています。

単純化した例をいえば「『もっと新しいことにチャレンジしろ』と言われた。新しいことに夢中になって売上げが落ちたら、評価が下がった」のような状態です。

会社が「やって欲しかったこと」は2つ。

社員が「やりたくなること」は2つ。

「単純化した例」と言いましたが、これくらい会社のベクトルとメンバーのベクトルが正反対に近い組織も実在します。それもなかなかの確率で…。

本題に入りますが、子育てにおいてもこの観点はとても重要です。

今日は最初にクイズです。

Q:下の各ケースで、子どもはどんなインセンティブを受け取り、どんな行動・習慣が「やりたいこと」となっていくでしょうか?

1-A
新聞を読んでいたら、退屈した子どもがミニカーを持ってきて新聞の上を走らせ始めた。なので一緒に遊んであげた

1-B
新聞を読んでいたら、退屈した子どもがミニカーを持ってきて新聞の上を走らせ始めた。なので「邪魔しないでおくれ」と言った。

1-C
新聞を読んでいたら、退屈した子どもがミニカーを持ってきて新聞の上を走らせ始めた。なので黙って隣室に移った

2-A
シャツがまだうまく着られないわが子。頭が通らず「パパ、着させて~」と半泣きになったので、「自分で着なさい!と突き放した

2-B
シャツがまだうまく着られないわが子。頭が通らず「パパ、着させて~」と半泣きになったので手伝った

2-C
シャツがまだうまく着られないわが子。頭が通らず「パパ、着させて~」と半泣きになったので手伝った。「今度は自分で着るんだよと励ました

ビジネスの場面と同じで、まずは親が自分の価値観・ビジョンを持って自覚する必要があります。

などです。これについては以前に第014・015・016号「子育ての目的とは(上~下)」で触れたこともありますし、個人毎に多様な価値観があることが自然なので、ここでは省きます。

次のプロセスは、その価値観・ビジョンを親子間で共有すること。会社組織とは違って、家庭ではこの点で大きくつまずくことはあまりないかも知れません。「あえて口に出して言っていることは少ないかな」と思うようであれば、言葉にして伝えるよう気に留めるだけで充分でしょう。3~4歳を過ぎれば、ちゃんと理解してくれます。

「パパはね、ウソだけはついちゃいけないと思うんだ」
「○○ちゃんが自分のことを自分でできるようになってほしいから、いろいろ教えたり手伝ったりするね」

そして最後が肝要なポイント、その価値観・ビジョンを具現化する仕組みです。子育てにおいては、

ことがその「仕組み」となります。特に注意が必要なポイントが2つあります。

(イ)インセンティブに「何を」提供するか

私の経験では、子どもにとってのインセンティブ=「うれしい状態」は以下のようにランク付けできると考えています。

(a)自分が満足していて、親にも認められている状態
(b)親に認めてもらえていないけど、少なくとも構ってもらえている状態
(c)親に構ってもらえていない状態

(ロ)正しいタイミングを逃さない

言われたことをちゃんとできたら褒める」との場合はあまり問題ないと思います。ただ、実際のところ親の価値観の中には「望ましいと思う状態では目に付きにくく望ましくない状態になると気がつく」もの──具体的には「自分でやる」「××しない」など──が多く、注意が必要です。

この(イ)(ロ)の2点を見落とすと、

とのパターンを作ってしまうことが非常に多くなります。

下段での親の反応が「優しく指摘する」であれ「厳しく叱る」であれ、極論すると「叩く」であったとしても、(b)であることには変わりありません。親が(b)と(c)しか提供してあげられていないため、子どもは少しでもマシなbを受け取れる行動がやりたいことになっていくという悪循環が生み出されてしまうのです。

また、インセンティブ(a)を意識するあまり「すごいね」「えらいね」を連発してしまうことにも、別のリスクがあります(参考:第001号「『パパ、見て~』と言われたら?」)

うまく(a)を提供するコツは、子ども自身の「ひとりでできた!という満足感、「ちゃんとわかるもんという誇らしい気持ちに寄り添うスタンスです。その満足感や誇らしい気持ちを認めてあげるような声をかけてあげてください。

さてクイズですが、引っ掛け問題みたいな出題でごめんなさい。「解答」を載せる代わりに「私だったらこうする」の考えを。あくまで私個人の価値観・ビジョンに基づく「参考例」とご理解ください。

(1)新聞を読み始めたらすぐ、こっそり子どもの様子を見る。オモチャ箱でミニカーを漁っているうちに大きめの声で独り言を言う。「うん。新聞を読むのがはかどるなぁ。ああ助かる助かる」

もし新聞紙の上にミニカーが走り始めたら、再度独り言。「うむ。新聞が読みにくいなぁ。困った困った」

読み終わったら、子どもに声をかける。「パパが新聞を読みたいって分かってくれていたんだね。○○ちゃんが邪魔せず遊んでいてくれたから、いっぱい読めたよ! さて、何して遊ぼうか?」

(2)シャツがまだうまく着られないわが子。でも果敢にシャツを手にして頭に被る。「お。自分で着替えているんだね!」。

でも頭が通らない。「シャツに頭を通すのは難しいんだ。手伝って欲しいことがあったら言っても良いよ」

「パパ、着させて~」
「おう、いいよ。ええと、シャツの背中の方を引っぱるとうまく頭が通るんだよな…」
「シャツを着るのは難しいものさ。でも何度もやれば慣れて簡単にできるようになるんだよ。今日もけっこううまい具合にやっていたから、○○ちゃん、案外早く着られるようになるんじゃないかな」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 パパコーチ くろさわ 【発行周期】 週刊

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