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いじめ自殺未遂に開き直り。教育委の呆れた逆ギレと逃げた北杜市長

山梨県北杜市で起きたいじめ自殺未遂事件に関する市長や市教育委員会等の対応が大きく報じられ、批判が集まっています。これまで数々のいじめ事件を探偵として解決してきただけでなく、いじめの解決を支援をする専門集団「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」を同志と立ち上げ全国を駆け回る阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんは、自身のメルマガ『伝説の探偵』に当案件のにわかに信じがたい詳細を記しています。

北杜市いじめ自殺未遂事件への北杜市教育委員会の杜撰な対応

山梨県北杜市でいじめ事件放置事案が連日報道されている。

北杜市とは

北杜市は、須玉町・高根町・長坂町・大泉町・白州町・武川町・小淵沢町、北巨摩郡などが合併して発足した市であり、最近では移住者も多い地域となっている。自然や天然水の産地としても有名であり、長閑な田舎町という印象を受ける。

こんな長閑な田舎にいじめなんてという意見もあるだろうが、そもそもその根拠はあるのか、いじめはどこでも発生しているし、いじめがないはずの地域ほど深刻で根が深いいじめが多い。学校にはいじめ対策に対して経験値がなく、そもそもいじめ防止対策推進法を始め、各いじめ対策についてアンテナすら立てていなかった田舎ほど、いじめ対処が後手後手で、結果、市政などの恥としていじめ被害に蓋を閉めようとするものである。

つまり、隠蔽多発地帯は地方である。

いじめの経緯と北杜市教育委員会

被害一家は、東日本大震災の被災者である。まさか、いじめに遭うとは思ってもみなかったはずだ。被災し、やっと行き着いた先が、北杜市であった。

記録によれば、嫌がらせが始まったのは2014年ごろ、被害生徒A子さんが小学3年生からであった。2017年、A子さんは、北杜市内の中学校に進学し、その年の11月、自殺を図った。一命を取り留めた後、学校のアンケートに9月からいじめを受けていたと回答した。

2018年1月には、複数の生徒からボールをぶつけられる暴力行為を受け、不登校になった。

この中学校では、こうした被害相談がありながら、適切な対処は一切と言ってよいほど行っていない。学校長は、被害家族との話し合いの際に、「さぁ、みんなで手を取り合って!」と輪を作るようにいい、「チームA子ちゃん手を取り合って頑張ろう!おー!」と叫んだそうだ。

自殺未遂がある重大事案を前に、何をしたいのか…もはや、教師以前に、人間として重要なスキルをどこかに忘れてきてしまっているのであろう。

一方、当時、北杜市教育委員会はこの件を山梨県教育委員会に報告しなかったために、文科省の問題行動などの調査結果には反映されなかったという。

これについて北杜市教育委員会は、メディアの取材に対して、こう回答している。

いじめと自殺未遂は無関係、現在も重大事態としては認定していない。教育委員会はやるべきことはやっていたし、第三者委員会を絶対に設置しなければならないという法はない。

なぜ、いじめと自殺未遂を無関係としたがるのか?

この一連のいじめ事件について、学校が作成したという書面がある。数十枚に及ぶこの報告書は、作成者が書かれていないが、当該中学校によれば、学校長が作成したのだという。

この内容がすごいのだ。

この報告書の主旨は、親子関係に問題がありA子さんは自殺未遂まで追い詰められたのだということなのだが、そこには、教員らがA子さんとよく関わり精神的な支えであったとされている。

ところが、学校長はまず、A子さんと直接話したことはほぼないと言える状態であり、そんなことだから、教員らが精神的な支えにはなってはいない。むしろ、不信感すらあった

さらに、担任教諭や学年主任などの教員とA子さんや保護者が会っていない日時の記録や会話の内容がある。

こうしたねつ造は、録音や書面記録などで容易に否定できるものが複数ある。

この報告書を分析したが、1項目に相反する内容があったり、児童虐待を思わせる内容があるが、これについて児童相談所への通報や相談などは一切存在しない

裏を返せば、学校の通報義務が機能していないことにもなるが、事実、虐待はなかったのであるから、通報や相談がないのは当然なのだ。

例えば、1項目の中に「親子関係は口をきかないほどに悪い」という趣旨が書かれているが、そのすぐ後に、「親子関係は良好な様子だった」という趣旨が書かれている。

これは、もはや架空のストーリーで被害家族を陥れるために作られた捏造報告書、いや、フィクションドラマの杜撰な台本とも言える。ただ、こうした内容は、「重大ないじめなど起きない!」としたい北杜市教育委員会には都合が良かったのかもしれない。だから、市の担当者は、ろくな調査もせずに、いじめと自殺未遂は無関係だというのだ。

文科省の指導

こうした事態に文部科学省は山梨県教育委員会を通じて、北杜市教育委員会に指導を入れている。その内容は噛み砕けば、「いじめ防止対策推進法に則りちゃんと対応してください」というものだ。

ところが、独立組織とされる教育委員会はこの指導を突っぱねることもできるという現実問題がある。さらに、山梨県教育委員会も北杜市教育委員会も指導は、単なる被害家族からの嫌がらせに過ぎないと判断しているようだ。

山梨県教育庁義務教育課 しなやかな心の育成担当 課長補佐から北杜市教育委員会指導監に送られたメールにはこうある。

遅くまで、お疲れ様でした。文科省へ送ったメモを添付します。私が形式を少し変えましたが、内容は全く変えていません。明日また、連絡があるということでした。現段階では理解が得られていないので、どうなるかわかりませんが、また次の手が出てくると予想されます。(略)堀内教育庁様にもご自愛くださるようお伝えください。(略)

このメールについては、2018年11月9日、山梨県日日新聞でもスクープされ、ここまでそのままの内容ではないが、教育委員会は釈明会見を行っている。そこでは、「次の手とは次の要望のことだと見苦しい詭弁を記者らに答えている。

さて、「現段階では理解」という内容があるが、これには2つのことが考えられる。

それは文科省側へ自分たちは十分やっているんですという甘えた主張か、それとも、第三者委員会設置について被害保護者側から理解が得られず設置が遅れているということを指す可能性が高いと考えられる。

第三者委員会設置に被害保護者はなぜ懸念を示すのか?

ここまでくると、多くの読者は「第三者委員会を設置せよ!」と考えるだろう。それを、市の教育委員会が提案しているなら、応じようとしない被害保護者側に何か思惑があるのかと思うかもしれない。

ただ、下記の写真を見て欲しい。これならば、100人いれば100人応じられないはずなのだ。

そもそも、北杜市教育委員会は、第三者委員会を設置するにあたり、誰が委員になるのかを被害保護者に明かしてはいない(文部科学省もこの非開示で第三者委員会のメンバーを開示するように強く指導を入れたのだ。法の要件以前に到底受け入れ難いし、考えられない。としている)。

肩書や所属だけを示し、「私たちとは関係の深い信頼できる人たちで構成しますから」と被害保護者らに説明している。

つまり、誰に頼むかはすでに名指しで決まっているが、被害保護者にも被害者にも第三者委員会の委員の名前は明かさずでも承認しろ。というなんとも横柄で乱暴な対応なのだ。

被害保護者らは、公平性を担保するためにも、自分たちからも推薦する委員を入れてほしいという要望を出すが、それには応じられないとされている。聞く耳を持たず、中立公平などという言葉は彼らの辞書には別の意味で書かれているに違いない。

いじめ防止対策推進法や文部科学省のガイドラインに照らせば、容易にこのいじめ自殺未遂事件は重大事案にあたる問題であるが、なんらの根拠もなく、北杜市教育委員会は「重大事案の認識はある」と言いながらも「重大事案とはしない」と記者らに話している。

つまり、北杜市教育委員会が設置しようとする第三者委員会は、「いじめと自殺未遂は無関係」とし、「そもそも重大事案ではないとしたい北杜市教育委員会の判断を裏付けるという目的を持った名目第三者委員会なのではないだろうか。

市長逃げる

ちなみに、この問題は今、山梨県内ではトピックスで扱われ、連日メディアが追求しているが、元体育教師だという渡辺市長はメディアの取材には一切答えていない記者会見の予定も急遽逃げ出し、副市長と教育長が対応するという事態も発生している。もはや、北杜市自体、市としていじめの対応はできないと判断せざるを得ないのだ。

私は本件事件について関係者らから話聞き、はじめはにわかに信じられなかった。私も様々な隠蔽事案を暴いたり、構成から瑕疵のある第三者委員会と対峙したこともあるし、その結論を証拠によってひっくり返したこともある。遺族を恫喝する担当指導主事を告発するなどもした。信じられないような不法かつ不当な対応も多くこの目で見てきた。

その私でも、「現代日本で起きる問題」とは思えないほど、差別や封建的で、自己保身のためには、弱い立場の被災者や被災生徒の権利は踏みにじってもいいのだという、人間とは思えない対応がここでは起きていた。

本来、市長が機能していれば、市長の音頭で第三者委員会設置を行い、コントロールしようとする教育委員会から離して、調査が行われるはずだが、その市長が記者会見を逃げ出し、市長室にこもるようでは、やはり北杜市ではいじめは解消できないと考えた方がいいし、県の教育委員会の実務担当者が、「次の手」と被害者や被害保護者を敵視するような発言を、メールでもしているようでは、山梨県自体もこの問題に対応できるのか?疑問が生じ得るのが自然だろう。

最後に

中心となった加害者グループは明らかになっている。実際、保護者の間では有名ないじめ加害者である。

エピソードがある。

いわゆる主犯となる女子生徒の父親と被害保護者はある武道で共通点があり、この父親は、一緒にやろうと誘ったそうだ。その際、被害保護者がやんわりと断ると、この父親は、こう言った。

「そうか、津波で道具もみんな流されちゃったんだもんなぁ。それじゃ、できないわ」

もしも、あなたが暮らす地域に被災して移住してきた一家がいたとして、この言葉を吐けるだろうか?普通は想像もつかない言葉だろう。

もしも、同じシチュエーションで、隣の親父が、こんな言葉を吐いたら、どうするだろうか?少なからず批判するだろうし、注意するだろう。そして、詫びるはずだ。自分が吐いた言葉でなくても、もともといた住民として、移住して不安な一家に、心から詫びるはずだ。

子供は親を見ている、なるほど、この親あってのこの加害生徒か…

呆れて何も言えない。

本件については、NPO法人ユース・ガーディアンとして容赦の無い徹底的な追及と継続的な調査及び対策を行いたいと思う。山梨の方、北杜市の方、みんながこんな不当な人ではないということはわかっています。でもこれだけは言わせてください。今、声をあげる時です。肩書や所属ではなく、本当の言葉を見極めてください。絶対にこの問題を見逃してはいけません。

編集後記

今回の北杜市のいじめ自殺未遂事件は、本当に驚きました。

愛知・名古屋の件もなんじゃこりゃ!?となって、継続事案として追跡していますが、これまた、どーなっているの!?です。

私の本職というか、本来の範疇はいじめの証拠や情報を収集することですが、こんな学校、地域行政、教育委員会では、どんなに誰もがいじめだ!となる証拠を掴んでも、それが活かされることは絶対にないと言えます。

真実を捻じ曲げ、いじめをいじめとして認めない。一方で加害者は助長し、いじめの成功体験として、以後、よりひどいいじめを行なっていくわけです。これは加害者に対しても、いじめをしないようにするための教育指導を放棄していることになりますから、それはそれで罰かもしれません。

以前、別の機会で取材に応じた東京MXの「5時に夢中」という番組で、マツコデラックスさんが、「証拠があれば学校がいじめの対応ができるっていうなら、探偵さんに頼らなくてももっとちゃんとやっていると思うの。もちろん、そういう専門の人の方が向いていることもあるんだろうけど、結局、学校は対応できないんじゃないの?いじめには

この意見、私はこの人は鋭いな、本質も容易に見抜くなと思ったのです。

なぜ、私が探偵調査業務でのいじめ介入のみでは不十分だと感じたか、NPOを立ち上げ、無償化していじめを追うのか、それはこのマツコデラックスさんと同様の感想を何度も持ったからです。

どんな良い武器を持たせても、道具を持たせても、その使い手がダメなら何の意味も無い

もはや、教育界はここまでいじめ対策に成果を出せていないのだから、いっそ、法務省とか別機関に介入してもらって、手放してはどうか。2017年度のいじめの数は9万件以上増加し41万件となったそうです。もう限界では無いでしょうか。

学校が子供達が苦しむ場でないところになるように、私たち大人は、全力を尽くす時ではないかと思います。仮に、私一人でも、行動し、それを示します。

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阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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