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女子生徒を死に追いやった八王子市立中学校の「人でなし発言」

以前掲載の記事『いじめ撲滅に本気で乗り出した文科省と、教育現場の呆れる本音』では、学校側のいじめに対する姿勢が良い方向に変わりつつあると記した無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』でしたが、依然、認識の浅い学校や教師が存在することに変わりはないようです。今回の記事では東京都八王子市で起きた中学生自殺事件を巡る学校側の対応をとりあげ、厳しく批判しています。

八王子の中2自殺事件、子供たちに寄り添う心を大切にして欲しい

11月になって、ひやっと寒さを感じる朝が多くなりました。見回せば、風邪気味の方もちらほらみられます。

先週は、このような相談を受けました。中学生のお母さんからでした。娘さんはいじめで不登校になっていたのですが、先月からまた学校に通えるようになりました。本人には、まだ辛さが残っていて、なんとか頑張って学校に行っているという状況でした。

そんな中、下の学年の男の子たちがいきなり指をさして笑ってきたというのです。泣きながら帰ってきたので、どう対処したら良いのかというお電話でした。

いじめを受けたあとというのは、簡単に元気にはなれないものです。いじめが突然、襲ってくるかもしれないという不安と恐怖が常につきまといます。さらに、「あの時こうすれば良かったのに」という後悔の思いがなんども湧いてきますし、「自分なんかだめなんだ」と自分を責める心にさいなまれ続けている状況です。その状態にある子にとって、ちょっとした言葉や仕草であっても、計り知れないほどのショックを与えてしまいます。

そのお母さんには、すぐに学校に電話して対処を依頼するようにお願いしましたスピードが最優先です。今回は、学校もお母さんからの連絡を受けて、すぐに対処し、娘さんも再不登校に至らずにすみました。

今年の8月に八王子市の中2女子生徒がいじめで自殺した事件が大きく報道されていますが、この事件も初期対応の失敗が引き起こした事件でしょう。

10月6日、八王子市の教育委員会は、中学2年13歳の女子生徒が8月に自殺を図りその後死亡したと発表しました。遺書には部活動でいじめられたとメッセージが遺されており、市教委はいじめがあったことを認め、有識者による第三者委員会を設置し、自殺との因果関係を調べるとしています。

事件は、昨年、2017年8月、家族旅行で部活動を休んだことでSNSでの非難や無視などのいじめが続き不登校となったものです。9月になって両親が学校側に相談し、部活顧問が上級生に謝罪させたようですが、その後も不登校となっていました。

今年の4月には、転校したのですが不登校は続いていて、8月28日に八王子市内の駅で電車に飛び込み約2週間後に死亡したというものです。悲しいことに、遺書には、部活動でのトラブルを乗り越えられなかった自分を責める言葉が並んでいたといいます。

保護者は、「上級生の批判後、同級生からも無視されるようになった」、「学校に相談に行ったときには『当校には悪い子は一切いません』と相談にのっていただけなかった」、「転校後もSNSによるいじめが続いていた」と話しています。

さらに、学校側の発言では、上級生に謝罪するように伝え、本人からも「大丈夫です」という回答があったので解決した、いじめではないと認識していたとの言葉に対して、ご両親は「謝罪をうけたとは聞いていない謝罪があれば娘は一言いうはず」と質問に答えています。これを読む限り、学校は、不登校になった後になんらかのフォローもする気はなかったようにも、アリバイ作りのための発言をしているだけのようにも感じられます。

加えて、学校長は、11月6日に「非常に重く受け止めています。これは重大事態だとそういうふうに認識したところです」とインタビューに答えています。もしかしたらいい間違いなのかもしれませんが、「認識したところです」という言葉に違和感を覚えます。亡くなってしまった後、教育委員会の発表を受けてはじめていじめの重大事態ということを初めて理解しましたと言っているように聞こえるのです。「何を考えているんだ。そんな言葉を出すなんて。ご両親をさらに傷つけることがわからないのか」と言いたくなります。

いじめ撲滅に本気で乗り出した文科省と、教育現場の呆れる本音」では「文科省主導のもとでいじめに対する学校の対応が良くなってきている」と述べたばかりですが、まだまだ、こんな認識しかできない学校教員がいるのが現実です。この浅い認識のままいじめに対応していたなら、その対応がおざなりになるのは当然でしょうし、親身になってくれる先生もいなかったでしょう。遺書に「もっと不登校にやさしい世界だったらな」という言葉を遺さずにはいられなかった気持ちを理解できる教師であって欲しいものです。

私達は、いじめられている子の辛さや苦しみが理解できない人間には、「いじめの相談を受けることは難しい」とセミナーやシンポジウムで訴えておりますが、教師が例外であってはなりません。教師だからこそ、共感力、つまり子供たちに寄り添い、その心に寄り添おうとする気持ちを忘れてはならないはずです。ここが、いじめ問題の解決へのスタート地点であると思うのです。

お父さんは「いじめに目を背け、対応が遅れた。事実を明らかにし、二度と起こさないようにしてほしい」と話されていたとのことですか、冒頭の事例のように、いじめは早期発見そして早期解決がなにより大切です。保護者、そして教師が力を合わせて子供たちを守ろうという決意、志が必要です。なにかお困りのことや、不安なことがありましたら、ご遠慮無くご相談ください。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

image by: Shutterstock.com

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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