結果にコミットできず。ライザップ赤字70億円という「約束破り」

 

避けられぬブランドイメージ低下による客離れ

RIZAPはM&Aで手に入れる企業の条件として「自己投資産業」に該当するかどうかを挙げている。例えばジーンズメイトは、「おしゃれになるという自己投資」を実現するための商品・サービスを提供する「自己投資産業」に該当するということになり、M&Aの対象となったわけだ。

ただ、この「自己投資産業」という言葉は非常に曖昧だ。いくらでも拡大解釈ができる。自己投資とは無縁と思われる産業であっても、ちょっとした工夫を凝らすだけで自己投資産業になり得る。例えば、飲食店は一般的に自己投資産業とは見られないだろうが、健康に良いとされる飲食物だけを扱えば、「健康になるという自己投資を実現するための商品・サービスを提供する自己投資産業と考えることもできるだろう。ジーンズメイトを自己投資産業とするならば、この解釈は十分可能といえる。

RIZAPは自己投資産業という概念を都合よく拡大解釈してM&Aを進めてきた。はたから見れば、無秩序なM&Aだったように思うが、当人たちはそうは思っていなかったようだ。ジーンズメイトの業績が上向くようになったのは、自己投資産業だからという理由ではない。たまたま上手くいったのがジーンズメイトだったというだけだ。それに、ジーンズメイトの再建が成功したと判断するのはまだ早計といえる。

一方で、自己投資産業でなくても、本業との相乗効果が見込める企業であれば問題はなかった。ただ、RIZAPがM&Aで手に入れた企業を見渡す限り、本業との相乗効果が見込めそうな企業はそう多くはない。ジーンズメイトやワンダーコーポレーションなどは本業との相乗効果は相当低いと言っていいだろう。

例えば、RIZAPで痩せた人がおしゃれに目覚め、ジーンズメイトで衣料品を買うようになるという構想を描いていたが、決して安くはないRIZAPを利用する人がおしゃれに目覚めて大衆向けのジーンズメイトを利用するかというとはなはだ疑問だ。相乗効果は相当低いといえるだろう。

また、グループ内のファッション企業同士の相互送客など、本業以外のグループ内企業同士の相乗効果は多少見込んでもいいだろうが、とはいえ、相乗効果を生むために必要なコストを吸収できるだけの相乗効果を生むとなるとハードルは相当高くなる。片手間でできることではないが、RIZAPは闇雲に手を広げすぎたがために片手間となってしまい、次第に無理が生じるようになり、期待したほどの相乗効果を生み出すことができなかったといえるだろう。

M&Aは本来、手段であって目的ではないはずだ。しかし、RIZAPはM&Aが手段ではなく目的となっていったのではないか。

こうしたM&Aの失敗は、本業にも影響が及ぶ可能性がある。RIZAPはグループ企業の再建という結果にコミットすることができなかったのだから、本業において、痩せるという結果にコミットすることもできないのではないかと疑問に思う人が出てきてもなんら不思議はない。いずれにせよ、ブランドイメージの低下による客離れが避けられないだろう。

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