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ノーベル賞学者が「人生は自分が主役のドラマ」と断言する理由

江崎玲於奈氏の「玲於奈」はラテン語の獅子が由来で、「世界に通用する人物に」との想いが込められているそうです。その後、ノーベル賞を受賞し願いは現実のものとなりました。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、江崎氏へのインタビューを通じ、氏の人生における原点がどこにあるのか、生きる上で自らのミッションをいかに見定めたのかが紹介されています。

ドラマの主演を演じる 江崎玲於奈(茨城県科学技術振興財団理事長)

93歳のいまも矍鑠とされている、ノーベル物理学賞受賞の江崎玲於奈さん。その原点は若い頃の心掛けにありました。


──江崎先生ご自身は、若い頃にどうやって自らの創造力を高めてこられたのでしょうか。

江崎 「原点は大学時代にありまして、人生というのは自分が主役を演じるドラマなのだから、脇役ではなく、主役を演じようと決めたことですね」

──ドラマの主役を演じる。

江崎 「ええ。なぜそのように考えたかというと、一つのきっかけになったのが、日本が戦争に負けた1945年のことです。ちょうど私が20歳の時のことで、日本は封建的な国家主義から民主主義の世の中へと変わりました。

それまでの封建的な社会では、自分の人生は生まれながらにしてある程度決められていましたが、民主主義はそうではありません。自分の人生は自分が決めるこれが民主主義の基本です。

当時、私は東京大学に在籍していましたが、私にとって大学とは自分が生きていくミッションを見つける場でした。自分は何を得意とするかを見極め自分の能力が最大限に発揮できるようなシナリオを創作する。いま思えば、これが私の創造力を伸ばす上で大きな要因になったのだと思います。

──大学時代にどのようなシナリオを創作されたのですか。

江崎 「物理の力学の分野では大きく分けて古典力学と量子力学の2つがあります。古典力学はアイザック・ニュートンなどによってほとんど完成されていたのに対して、量子力学は1900年に生まれた新しい分野でした。

私は大学に入ってその量子力学に出逢い、非常に大きな衝撃を受けたんです。当時は戦争の影響で学問の進歩がヨーロッパに比べて大きく離されていたこともあって、企業においても量子力学を知っている人はほとんどいませんでした。

──江崎先生は学生時代から、既に量子力学に大きな可能性を見出されたと。

江崎 「そうです。単に興味を持っただけでなく、量子力学を企業で活用するというシナリオを書きました。当時、大学で物理を学んだ学生はそのまま残って勉強するケースがほとんどでしたが、私は自分のシナリオに従って企業に就職する道を選んだのです。

さらに私が兵庫の川西機械製作所(後の神戸工業)で働き始めて間もなく、真空管に代わる半導体トランジスタがアメリカで発明されました。これはもう本当に画期的なことで、真空管の研究に従事していた私にとって大変な驚きでした。

そしていち早く半導体の研究に乗り出したんです。自然科学においては、新しい分野を開拓することが1つの使命ですからね」

──川西機械製作所では、研究テーマを自由に選べるという柔軟性があったのですね。

江崎 「幸い戦争の後だったこともあって、企業のマネジメントがまだほとんど機能していない状態でした。いまではとても考えられないことですが、あの当時は私のように若い人間でもかなり自由に働ける環境があったんですよ。そのおかげで半導体の研究に方向転換することができました。

そして、そういった研究過程を経る中で32歳にしてエサキダイオードを発見し後にノーベル物理学賞をいただくことに繋がったのです」

image by: Wikimedia Commons

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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