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また横やり。中国が台湾をスポーツ界から排除したがる真の理由

台中市で開催予定だった「東アジアユースゲームズ」が中国の圧力により中止に追い込まれたことは話題となりましたが、それと前後してラグビーでも台湾での大会開催を阻止する中国の動きがあったことが明らかになりました。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の著者で台湾出身の評論家・黄文雄さんは、これらスポーツ界で続く中国の動きは、多方面で展開される中国式侵略主義の一つと解説しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年12月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】スポーツですら侵略主義をむき出しにする中国

中国、再び圧力 ラグビー国際大会の台湾開催阻止試みる

「台湾での開催が有力視されていた国際大会『アジアラグビーU18セブンズシリーズ』について、カザフスタンで今年7月に開かれたアジアラグビーの年会で、中国が台湾での開催を阻止しようとしたことを明らかにした」という報道がありました。具体的には、以下の通りです。

「ラグビーのアジア地域の統括団体、アジアラグビーが今年5月、各加盟国・地域に書簡を送り同大会の開催地を募ったところ、唯一名乗りを上げたのが台湾で、3年連続の開催を団体側に提案。7月の年会で確認がとれれば、招致が可能だと目されていた。

だが年会の直前、台中で来年開催予定だった東アジアユースゲームズが中国の圧力により中止に追い込まれる事態が発生。アジアラグビーの年会でも、中国が突如、U18セブンズ大会の5年連続の開催を申し出た。同団体は多数決を行わず、台湾と中国に話し合いによる解決を要請。約1カ月にわたる協議の結果、両岸で交互に実施することで落ち着いたという」

台湾で開催予定だった国際的なスポーツ大会を、中国が阻止させた例としては、2018年8月に予定していた「東アジアユース競技大会」があります。そのことは、以前このメルマガでも取り上げました。これは、国際的に台中市で開催が決定していた大会であり、台中市も大会実施に向けて25億円を投じて施設を整備していた経緯があります。それを突然、中国の横やりによって台湾開催が中止となり、急遽ジャカルタで開催されることとなったのです。

この時の中国による台湾への言いがかりは、台湾は参加団体における名称でもめているため、というものでした。いわゆる台湾の「正名運動」です。台湾は、スポーツの国際大会に参加する際には、これまで「中華台北」という名称で参加してきましたが、それを「台湾」に変更しようという運動が有志によって行われているのです。

中国はそのことを口実に、台湾は国際大会を開催する資格はない、と言って開催を阻止したのです。ちなみに、先だっての台湾における選挙では、国際大会での呼称としての「台湾」を支持するかという住民投票も行われましたが、結果は「支持しない」が多数を占めました。

すでに台湾では、自分を「台湾人」だと考える者が6割を超え、とくに若者では8割近いとされています。一方で、自分を「中国人」だと考える者は10%以下です。にもかかわらず、「台湾」という呼称を支持しない人のほうが勝ったのは、そんなことで中国と揉めるのは嫌だという台湾人の本音が現れた投票だったからです。

話が逸れましたが、今回のラグビー国際大会も同じような経緯で、中国が台湾開催にストップをかけてきたのです。「東アジアユース競技大会」の時は、中国の申し出に対して、統括団体が参加国間で多数決を取った結果、台湾での開催が中止となりました。当然、参加国の代表者たちには中国の息がかかっていたのでしょう。

しかし、今回のラグビー国際大会では、統括団体が多数決を取らず、中台両国による話し合いで解決することを要請しました。そして、約一か月にわたる協議の結果、両岸で交互に行うことで決着したそうです。

ちょうど今、台湾では「亜州冬季棒球聯盟」(アジアウインターベースボール)が開催されています。日本のプロチームや社会人チームも活躍しています。

亜州冬季棒球聯盟

アジアで野球が強いのは台湾、韓国、日本の3か国です。そのかなり後ろに中国がいて、その他のアジア諸国は中国からさらに遠くにいるのが現状です。一部では、中国がこの野球大会開催をも阻止しようとしたとの噂もありましたが、無事に台湾で開催されています。

こうしてみると、台湾は小さな島ですが、多くの国際大会を開催してきています。それはひとえに高度なインフラと高度な交通網を有しているからにほかなりません。そして、それは日本統治時代の遺産が基礎になっています。中国がどんなに台湾いじめをしてきても、大気汚染で黒い空に覆われているわりには国内のインフラ整備が遅々として進まない中国には台湾を追い抜くことはできません

日本では、スポーツや音楽などは万国共通だと思うかもしれませんが、大中華や小中華にとっては「政治」なのです。特に北朝鮮や韓国にとって、サッカーや野球は領土問題に絡む重要な「政治」です。サッカーでは韓国が日本チームに対して暴行する事件がたびたび起こりますが、韓国対ロシアや韓国対中国といったスポーツの試合でも、暴行沙汰をふくめてトラブルが絶えません。

アジア大会でも色々あった、中国と韓国の「小競り合い」=中国メディア

中国は、日台の一部の有志が行っている正名運動が気に入らないようですが、かつて台湾は「台湾」という名前で三回もオリンピックに参加しています。1964年の東京オリンピックでも台湾は「台湾」名義で参加しています。しかしその後、中華人民共和国が正式な中国の代表と決議されてからは、中国側は台湾も中国の絶対不可分の神聖なる固有領土だと主張し、各国もそれに応じて「承認」しました。

一方、日本では、日中国交の樹立に際し、国会でも中国の主張を「尊重する」と答弁に止まっているだけで、「中国の絶対不可分の一部」だということを「承認」するには至っていません。そのため、2020の東京オリンピックでの台湾の呼称は、「中華民国」「台湾」「中華台北」のどれなのかはまだ決まっていません。先だっての台湾での住民投票で、オリンピックでの「台湾」という呼称についての投票は結果的に否定されましたが、賛成意見は43%もありました。その声は無視できないと私は思います。

中国が、台湾をスポーツ界から排除しようとしている目的は、台湾は中国の一部という政治主張を既成事実にしたいからにほかなりません。しかし現在のトランプ政権は台湾との関係を強化すると同時に、ウイグル問題を国際社会に広く提起しています。民族自決の原則からすれば、台湾の呼称については台湾人が決めるべきであり、中国がとやかく言う筋合いのものではありません。

国境をなくして人とモノとカネの移動を自由にしようというのがグローバリズムでしたが、それによって富める国や地域にはどんどん人とカネが集まり、民族的な対立を生み、貧富の差が拡大し、かえってカオスの状態を生み出してしまいました。だから反グローバリズムが世界に拡散しているわけです。

一方、中国のグローバリズムは力によって強引に国境をなくそうというものです。香港について返還から50年間は一国二制度を守るというイギリスとの約束を反故にし、チベットやウイグルを併合したように台湾を飲み込もうとしています。さらには、他国に経済協力を持ちかけ、借金漬けにして、他国の空港や港湾を乗っ取ってしまう。それが中国式のグローバリズムであり、言い換えれば「侵略」なのです。

そして中国は同じことをハイテク分野でも行おうとしているのです。国家の力とカネに支えられた国有企業が海外で欧米企業を買収し、強制的に技術移転を行おうとしており、だから欧米諸国は警戒し、通信分野を中心に、中国企業を排除しようとしているのです。中国の本質がわかれば、中国式グローバリズムがいかにとんでもないことかがわかるはずですし、台湾の未来は台湾が決めるということは、きわめて「常識的」な話なのです。

image by: shutterstock.com

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