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日本のマスコミが伝えない「米ロ代理戦争」勃発秒読みの世界情勢

米中貿易戦争が勃発した年として長く記憶に残ることが確実な2018年ですが、2019年はその上を行く「破滅的で歴史的な年」になるようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、景気後退の兆候が見えてきた日米経済や米国発の金融危機の可能性、さらに日本でほぼ報道されていない中東戦争勃発の危機等を記しつつ、2019年を占っています。

今後の株価はどうなるのか?

米国と日本の株価の変動率が大きいし、景気後退の兆候も見えてきた。米中ハイテク戦争では、中国が大きく譲歩するようであるが、その裏には中国の景気減速が深刻なためである。また、メイ首相が保守党で信任されたが、ブレクジットできるかどうかわからない状態は変わらない。このような状況で、今後の株価を検討しよう。

NY株価

NYダウは、12月10日2万3,881ドルの米中貿易戦争激化予想から米中ハイテク戦争の交渉がうまくいくと期待されて、12月12日2万4,527ドルのまで上昇したきたが、12月14日496ドル安の2万4,100ドルまで下げた。

ファーウェイ副会長が釈放され、中国も「中国製造2025」の修正で、外資にも開放することなどの米国の要求を相当程度盛り込んでいるようである。はじめに、中国は米国との交渉開始に当たり、米輸入自動車の関税を現行の40%から15%に引き下げることに合意し大量の大豆の緊急輸入も検討しているという。

このような中国の大幅譲歩で、トランプ米大統領は、ファーウェイ副会長の逮捕について「貿易で(中国と)過去最大の取引をすることや安全保障にプラスになるのであれば必ず介入するだろう」と述べ、米司法省の捜査に介入する可能性を示唆した。トランプ大統領の頭には財政破綻回避と2020年再選の方が重要であり、安全保障問題を軽視しているが、側近に介入を注意されたという。

しかし、中国や欧州の景気減速を示す経済指標を受け世界経済の先行き不安と、その上に、デフェンシブ株の代表であるジョンソン&ジョンソンが、アスベストを含んだ赤ちゃん用パウダーを10年間販売していたというニュースが伝わり、一転して、投資家が運用リスクを回避する姿勢を強め、幅広い銘柄が売られ、14日は大幅に下げた。

ファーウェイと日経平均株価

米国政府がファーウェイとZTEの2社のネット製品を使う企業とは取引をしないとしたことで、世界市場を封鎖されるので、中国は譲歩せざるを得ないことになった。ファーウェイはバックドアのチップを積み込み、ネットに流れる情報を盗むことができるようにしていると言われていた。とうとう、米国は、実害が大きくなり、ファーウェイを退治することにしたようだ。

ファーウェイは人民解放軍の情報部門幹部が起こした会社で、中国国家の最重要企業で、人民の行動を監視したり、グレートファイヤーウォールの仕組みを作り、米国の軍事機密情報を奪うことを目的にした会社である。そして、非上場であり情報を一切出さないようにもしている。

ソフトバンクの基地局は、ほとんどファーウェイ製品を使っていたが、すべて取り換えると孫社長は言う。しかも、この転換を2020年8月までに完了する必要がある。しないと、最悪、その後は米国のインターネット網に接続ができなくなる可能性がある。これは、ネットとして機能できないことになる。安い装置には理由があるということだ。

日経平均は、米中貿易戦争激化予想で12月11日2万1,062円と値下がりしたが、米中貿易戦争の緩和やメイ首相の信任などの情報から、一転、12月13日2万1,816円まで上昇してきた。しかし、12月14日441円安の2万1,374円になっている。14日はメジャーSQであり、朝方までは、それほど下がっていなかったが、SQ値が確定してから下げ始めた。中国や欧州の景気減速を示す経済指標を受け、夜間取引のNY先物が下げたことで、日経平均も下げたようである。

どちらにしても、レンジ相場であり、良い情報が出ると、それまで空売りしていたヘッジファンドは、買戻しを行い、値上がりする。しかし、戻ると、悪材料を探して空売りになる。高値波乱相場になっている。株価が上昇すると株価が下がる理由を求めて悪いニュースを探しているような感じになってきた。

このため、下げないと上がらないという現象が起きている。徐々に株価が切り下がってきている。200日移動平均線から5日移動平均線の全ての平均線が下げ方向になっている。弱気相場であり、空売りや日経ダブルインバース(1357)から入らないと儲からない。

今は、下がると買い時と買いを入れる人がいるが、その内、買いが入らないことになる。そして、出来高が減ってくる。結果、空売り優勢で大暴落になるが、その可能性を見ることが必要になってきた。1日700億円程度の日銀のTOPIX中心のETF買いでは日経平均の値下がりを押しとどめられない。買いが少なくなり、日銀買入れを材料にした買いがなくなっている。エリオット波動の5波からABC波の暴落局面に入ってきたようである。

そして、12月19日の米FOMCでの声明で大きく動くことになる。12月利上げは織り込んでいるが、来年利上げ回数がどうなるかで相場は大きく動くことになる。据え置きでも利上げでも株価は下げる方向であるが、その下げ方の違いがあるだけかもしれない。

2018年の相場は、米国では、すべての資産が高値になってしまい、その反動で全セクター(株、債券、不動産)が値下がりしているので、運用成績が上がらずヘッジファンドの閉鎖が拡大している。日本のTOPIXも2018年1月23日に今年の高値を付けて、その後は下がっている。このため、ほとんどの投資家が損をしている状況である。

反ウォール街のトランプ大統領が行うこと

トランプ大統領は、FOMCが18日、19日の会合で追加の利上げを決めるなら「愚かなことだ」と述べて、重ねて強い不満を示した。米中貿易戦争の最中、短期金利を上昇させて、景気懸念から株から国債にシフトする投資家が増えると、長期金利が下降して「逆イールド」になりかねない。2年と10年の米国債金利が逆転すると、銀行の貸出業務が止まり、景気後退を一層早めることになるからである。

それと、トランプ大統領の警告を無視して利上げすることで株が大暴落したら、FRBのせいにできるからである。

トランプ大統領は、ウォール街が民主党を支持したために、反ウォール街の人である。しかし、ウォール街の要望を聞いて、規制を緩和して高レバレッジを行える環境を投資銀行に許したことで、投資銀行は、2007年と同じレベルの借金を抱えている。

この状況で株価大暴落が起きると、投資銀行が潰れる可能性が高い。しかし、潰れる投資銀行を国は救済しないで、ウォール街全体を潰すことを狙っている可能性もある。オプション取引が市場で多いが、その受け手の1つの投資銀行が潰れると、オプション取引が広範囲で影響して、多くの関係する投資銀行や投資家が損を出すことになる。これにより、金融界は大混乱に陥ることになる。このようにして、金融の既得権益者を排除したいようである。そして、それがトランプ支持者たちの意見でもある。

一方、FRBは、利上げと資産売却の2つでバブル生成を抑えたいとしているが、株価が下がり、利上げも資産売却もできなくなっている。その上に関税UPで、インフレも起きている。一番恐ろしいのが景気後退時のインフレ(スタグフレーション)になることであるが、その方向に事態は向かっている

よって、2019年は、景気後退局面でハイインフレになり、株価は大暴落になる可能性が出てきた。トランプ大統領は、景気対策としてインフラ投資と米軍の予算を増やして米軍を利用した壁投資はするが、それ以外の対応策はしないようだ。特に投資銀行が潰れて、オプション取引などで大混乱が起きても政府は静観する。米国や関係の深い英国などの金融業全体が潰れることになる。日本の証券会社も危ないかもしれない。

そして、株価大暴落後、それまで積極的に投資を拡大していた企業の倒産が起きてくる。例えば、ダイエーの中内さんや西武百貨店、西武鉄道の堤兄弟などであるが、それと同じことが起きる可能性が出てきたように感じている。

今までの大活躍が逆回転すると難しいことになる。借金の多い企業は要注意である。そして、日経平均の寄与度が大きい企業の倒産や株価暴落は、その影響が大きいことになる。日経平均が大暴落後も一段下げを演じるような気がする。この局面では、カラ売り優勢であり、日銀の買入れは効果がない

そして、その下げ後が底値であろうと見ている。

しかし、そうならないように、特に借金の多い企業は、早く優良株を売って借金を軽くするなど、早く手を打つべきであると忠告したい。新しい投資も手控えるべきである。

英国の状況

英国国会でのEU離脱法案が通らないために、11日の投票を延期したが、保守党内でメイ首相の不信任投票を行い、逆に大差で信任され、メイ首相のEU離脱案が再度国会内で審議されることになるが、保守党の50名以上、労働党とスコットランド国民党が反対であり、通らないことが確実である。

ということで、総選挙か再度の国民投票になる可能性が高い。総選挙になると、労働党に政権を奪われることになり、コービン党首は社会主義者であり、政権に着いたら英国企業の国有化が行われる方向である。このため、経営者が支持母体である保守党としては総選挙はしないし、できない。よって、再度、国民投票になる可能性が高い

世論調査では、離脱反対が50%以上であり、撤回の可能性も出てくる。これを見越して、無条件でEU離脱撤回を認めるとEU裁判所は見解を出している。

というように、流れは変わり、メイ首相の温和なEU離脱案かEU離脱撤回の方向になってきたようである。

しかし、労働党は、メイ首相の責任を問いただして、総選挙に持っていきたいので、その攻防が見ものである。特に金融業が大打撃を受けると、英国が社会主義国になる可能性も出てくることになる。貧富の差が拡大すると、社会主義か全体主義なるかの選択になってしまうことが、歴史上で再度起こることになる。常々、注意喚起した新自由主義の大失敗が起きようとしている。

中東戦争が開始か?

とうとう、トルコのエルドアン大統領は、シリア北東部のユーフラテス川の東側で数日以内に、クルド人の武装勢力の掃討を目的とした軍事作戦を開始すると発表。一方、米国防総省は、クルド人地域に駐留する米軍への攻撃になると、一方的な軍事行動は受け入れられない」との見解を示した。これは米軍とトルコ軍の戦いになることが確実であり、そのトルコ軍をシリアのロシア雇用兵軍がサポートすることになる。中東戦争が開始する。

一方、イスラエル軍は、イスラエル人を殺したテロに対応して、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府の首都ラマラを封鎖した。これに対して、ヒズボラとシリアにいるイランがイスラエルへの攻撃を準備しているが、この理由を与えているような感じになっている。トルコの裏にもイランの裏にもロシア雇用兵やロシア軍がいるので、ロシア対米国の代理戦争という様相になっている。

このような感じであると、中東の各地で同時多発的に戦争が開始される可能性が高いし、黙示録の状況になっている。それにしても、この動きを伝える日本のマスコミがないことに危惧を抱くかどうであろうか?

というように、2019年は、破滅的で歴史的な年になりそうである。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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