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「防衛は最大の福祉」中谷元防衛大臣の発言につきまとう違和感

12月18日に閣議決定された新防衛大綱。日本最大の護衛艦「いずも」の事実上の空母化が盛り込まれたことに対して、野党からは「専守防衛逸脱」という批判の声が上がっていますが、与党サイドは今回の改定についてどのように説明するのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、自身のラジオ番組にゲストとして迎えた中谷元元防衛大臣とのやり取りを紹介しつつ、「平和」について考察しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年12月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

防衛は最大の福祉?

ラジオは、国会の答弁や記者の囲み取材、あるいはテレビでは決して出てこない「言葉」を拾うことができるメディアです。

カメラのない小さなスタジオで気が緩む、というか思わず「本音がポロリとこぼれる。ラジオのメインが「パーソナリティ」と呼ばれる所以です。

私がコメンテーターで出演している「サキドリ(文化放送)」では、17日(月曜)に元防衛大臣で衆議院議員の中谷元氏にゲスト出演していただきました。

18日(火曜)に日本の新たな防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」と「中期の防衛力整備計画」が、閣議決定される見通しであるため、「ニッポンの防衛力ってどうなってるの?これからどうなるの?」という素朴な疑問を教えていただくのが目的でした。

中谷さんには初めてお会いしたのですが、とてもとても丁寧な方で、打ち合わせのときから周りをリラックスさせる心遣いのある紳士でした。

本番直前も「防衛のことはわかりづらいから、わかりやすく話しますね」とご自身で準備してきたメモを見直すなど、好印象。

オンエアが始まってからもメインパーソナリティの斎藤一美アナや、アシスタントの水谷加奈アナウンサーの質問にも、わかりやすく答えていました。

…etc., etc.

とまぁ、あれこれ具体的な数字を出して教えてくださいましたが、「ん?日本って結構兵力高くない?」と、内心思うわけです。でも、中谷さんは「周辺国が軍事力を強めている状況がある」ということを繰り返しアピールし、「パワーバランス」という言葉を繰り返しました。

でも、やっぱり納得がいかないのです。そこで「いずもの空母化への疑問をぶつけたのですが、「母艦であって空母ではない」と。

「でも、事実上の空母ですよね?」と質問すると、「いわゆる空母ではない」と。

「でも、周辺国は空母としかみないですよね?」と食い下がると、「一般社会の常識の空母じゃない自衛隊の常識での空母」だと。

ふむ。なんだか「いわゆる移民ではない」によく似ています。

そこで「過去最大規模の予算を戦闘機やらにつぎ込むより、社会福祉に回して欲しい」と言ったところ、「防衛は最大の福祉」と返されました。

…こ、これは飛躍しすぎです。防衛費の膨張は「あくまでも攻撃された場合の備え」とするなら社会福祉費用にはたらればはありません

確実に急ピッチで高齢化は進んでいて、介護をする人は不足し、待遇も悪い。空前の人手不足といいながら、介護離職を余儀なくされている人はいっこうに減りません。孤立する高齢者は増えているし、貧困に苦しむ高齢者問題もあります。

歳をとること、老いることは、誰にも止めることはできない。でも、ミサイルを飛んでこないようにすることは、「ならできるのではないか

「相手がたくさん武器を持つから、オレたちも持たないとやられちゃうよ」と考えるのではなく、「武器など持たなくていい世界を実現するには、どうしたらいいのか?」と考えられないのか。

「じゃ、ミサイル打ち込まれてやられちゃったときどうするんだよ?お花畑だな!!」と、パワーバランスを信仰する人に総攻撃されるとは思いますが、中谷さんが目の前で語った言葉に、全く納得できませんでした。

戦争経験者の人たちはみな言います。「気がついたら戦争になっていた」と。

戦争を始めることを決断した偉い人たちは戦場には行きません。行くのは偉い人たちが「守る」と繰り返した一般の人たちです。

平和とは何か。みなさんのご意見もお聞かせください。

image by: akiyoko / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2018年12月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

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2018年11月分

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※『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2018年12月19日号)より一部抜粋

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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