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【書評】中国の明日の姿は今の日本。少子高齢化に蝕まれる大国

中国の「ブルーカラー人口」の急激な減少により日本企業も打撃を受けるなか、製造業を発展させるために中国政府が急ピッチで進めているものがあります。頼れるのはロボットやAIしかないのかもしれないという、これからの中国の未来予想を綴った1冊の本を、今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんがレビューしています。

未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること
近藤大介 著・講談社

近藤大介『未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること』を読んだ。2025年、「中国製造2025」は労働力減少を補えるか。「世界一の科学技術強国の実現」という野望を実現させるべく、AI、量子力学、自動運転車、次世代通信ほか、いまオールジャンルで凄まじい投資と開発競争が行われている。

誰も聞いたことのない「中国製造2025」は、2015年3月5日の「政府活動報告」で李克強首相がブチあげた。その内容は「5大工程10大分野」に集約されてなかなか壮観だが、中国が本当に製造強国になれるかは、AI、ロボット、IoTなど製造業の技術革新のスピードが、労働力減少を補えるかにかかっている。

中国の生産年齢は今後一直線に減り続ける。なかでも致命的なのが、ブルーカラー人口の急激な減少だ。1980年代以降の中国人は基本的に一人っ子で、工場での単純労働などやりたくない。製造業における人手不足は、日増しに深刻になっている。ブルーカラーよりホワイトカラーの方が多いという頭でっかちの構造になり、待遇の逆転現象も起こっている。日系企業も深刻に悩んでいる。

人口ピラミッドと生産年齢が逆三角形現象の中国が、今後の製造業を発展させる方法は二つ。移民の導入ロボットやAIなどに人間の労働の肩代わりをさせる。後者が李克強の目指す方向で、深センで「双創」なる新語を用いて熱弁を振るった。インターネット・プラスの時代において、創業プラス創新(イノベーション)を結合せよという意味だ。中国の政治家のかけ声だけは立派だ。

双創の奨励は短期的には新規雇用の増加を目論む。年間600万社の創業だ。いわば「究極の自転車操業社会」である。急速に減少していくブルーカラー対策でもあり、工場のオートメーション化、AI化が急務になっている。そして、中国は世界最強のAI大国を目指す。これから起こる第4次産業革命において、20世紀には果たせなかった、先進国入りの悲願を21世紀に実現するとしている。

著者の観察によれば、まことに「鬼気迫る中国政府の力の入れようだという。AI分野で世界のトップを走るという気概は、アメリカの調査会社によれば2017年のAI分野での資金調達額で、中国は世界全体の48%を占め(2016年は11.3%だった)、アメリカの38%を抜いて世界一になった。中国の「IT社会主義」の成否は、21世紀前半の人類を左右する最大のテーマかもしれない。

2035年、総人口が減少しインドの脅威にさらされる。中国の歴史上初めて人口が減少。インドは2024年に中国を総人口で追い越したあとも、若い国民が中心のエネルギー満ちあふれた社会が続く。中国は急速に少子高齢化の道を進んでいく。「経済的に見て明日の中国の姿は今の日本でいまの中国の姿は明日のインドということだ」。中国は仮想敵国を日本からインドにシフトしつつある。

2049年、建国100周年を祝うのは5億人の老人。日本と同じ急速な高齢化を、日本のような社会保障制度、インフラが整備されていないまま迎える。しかも日本の10倍の規模の、人類が体験したことのない、要介護人口2億人、未曾有の超高齢化社会が誕生する。日本の高齢化ビジネス輸出のチャンスである。

著者は、習近平が台湾統一を果たす可能性を示唆する。第二首都の建設の目的は、台湾統一戦争になった場合の首都移転先の確保にある。国家主席の任期撤廃は、長老達に自分の代で必ず台湾統一を果たすという約束、取引をしたからではないのか。台湾統一は中国にとってプラスばかりである。人口2,355万人を加えれば、将来の人口減をかなり補える。そういう見方もあるのか。

編集長 柴田忠男

image by: Mirko Kuzmanovic / Shutterstock.com

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