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なぜ米スターバックスの離職率は低いのか?現役医師が納得の解説

アメリカでは、ESGという社会や環境をいかに意識しているかを示す指標によって投資判断を行なうのが当たり前になってきている伝えるのは、メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田先生です。日本の企業も続々参加している「RE100」という構想など、投資先や消費先を選別し判断するために、健康や環境、倫理への取り組みに関する指標が益々重みを増していくと指摘しています。

健康を促進する企業を応援しよう

スターバックスは従業員の離職率が低いことで有名です。その最大の理由は、パートを含め、全ての従業員に対して健康保険のカバーを保証してくれているからです。スターバックスはまた、子供の世話のための有給の早引き保証や、性別や人種にかかわらず同一賃金を与えています。

スターバックスはさらに、米国での人種的バイアスを是正するトレーニングも実施しており、不正義を最小限にする努力を行なっています。このような取り組みがスターバックスの低離職率を支えているのです。

以前、米国のスターバックスのある支店で、黒人数人が商品を購入せずにトイレを使おうとしたところ、店員が拒否したというエピソードがありました。それに対して、スターバックスは、どなたでも自由にトイレを使用してよいという声明を世界に向けて発信しました。このような経験の蓄積があって、人種的バイアスを是正するトレーニングを行なっているのでしょう。

健康と環境の企業認証

米国の保険会社のヒューマナ社は「大胆な目標」というイニシアチブを掲げています。フロリダ州タンパベイなどの米国の9つのコミュニティで、地域の健康を増進させる活動を開始しました。具体的な健康の項目を立てて、それらを20%改善させるというイニシアチブです。これらの項目には、平均収入や雇用など、健康の社会的要因も含んでおります。

会社のビルディングをより健康的にする目的で設置されたLEED (Leaders in Energy and Environmental Design) と呼ばれるグリーン認証を取得する企業が増えています。健康的なビルディングで働く従業員は健康状態が良くなり、欠勤が減り、生産性を増すことが証明されています。

RE100という国際イニシアチブがあります。事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟するイニシアチブです。Renewable Energy 100%の頭文字から「RE100」と命名されています。

2050年までに全ての必要エネルギーを再生可能エネルギー(太陽光や風力など)に転換するという企業が参加しています。最近では日本企業もどんどん参加しています。健康と環境先進的な企業は、利益を追求するだけでなく、社会や環境への貢献度を数値として報告しています。

環境倫理からみた企業への投資指標

ESGという投資指標があります。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を並べたものです。社会や環境を意識した投資は、同時に財務リターンも高く、また投資リスクが小さいことから、社会や環境を意識した経営戦略は、企業利益や企業価値向上に繋がるため、今や一般的な投資手法とまでなっています。

ESGにはさまざまな個別指標があります。その中にネガティブスクリーニングという指標があります。環境を破壊し倫理に反する特定の業界の株式や債券を投資対象から除外する投資指標です。業界例には、武器、たばこ、原子力発電、ポルノ、ギャンブル、化石燃料などの会社があります。国際規範スクリーニングという投資指標もあります。環境破壊や人権侵害など国際的な規範を基に、最低限の基準を達していない企業の株や債券を投資対象から除外する手法です。

上記の2指標は除外スクリーニングですが、選抜型の指標もあります。ポジティブ・スクリーニングなどです。これはESGに優れた銘柄のみを選抜して投資する手法です。人権、環境、従業員対応、ダイバーシティなどを評価しています。このように、投資家が企業を評価する基準に、環境や健康、倫理が含まれてきており、私たちも企業が環境や健康を意識する企業を見分けることができるようになりました。日本人もぜひ、これを参考にして、投資だけでなく、消費の選択をすることをお勧めします。

文献Koh, HK. et al. Health as a Way of Doing Business. JAMA. Published online December 6, 2018.

image by: Sorbis, shutterstock.com

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