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脂肪燃焼のメカニズム。肉の中でも羊肉は太らないと言われる理由

せっかく運動をするなら、効率的に脂肪を燃やしたい、減らしたい。でも、さまざまな情報があふれる中、運動前後の栄養補給をどうしたらいいのかわからなくなってくるという声も聞こえてきます。メルマガ『届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ』では、桑原塾長が糖質燃焼と脂肪燃焼のメカニズムを解説。少し難しいかもしれませんが、身体の仕組みを知った方が、迷わず効率の良い「脂肪燃焼」が可能となりますよ。

糖質を摂ると脂肪が燃えない?

Q. 糖質を摂ると脂肪が燃えなくなるのでしょうか。持久系の運動をする場合に糖質を摂った方がいいという人と、摂らない方がいいという人がいます。

例えば朝一での軽い運動の場合は、糖質を摂らずに行った方が脂肪は燃えやすいと思うのですが、その際に糖質を摂ってしまうと脂肪は燃えないことになりますか?

糖質を摂ることで脂肪が燃えにくくなるというメカニズムみたいなものは解明されているのでしょうか。(53歳、男性)

桑原塾長からの回答

糖質は即効型のエネルギー源ですから、すべての運動にとって重要であることは間違いありません。特に運動後にグリコーゲンリカバリーとして糖質を摂取することは、グリコーゲンのタンクを充満させることから持久系の運動に役立つのみならず、筋肉の合成を促進させますから、仮に減量やダイエットの時でもお勧めをしています。

一方、脂肪を減らす(燃やす)という観点においては、ケースによって分かれるかもしれません。糖質が着火剤的な役割を担うことから多少の糖質は可であるものの、取り過ぎると脂肪の活用が抑えられてしまうというメカニズムも存在するからです。

長時間運動やトレーニングをしていくと、やがて脂肪組織から脂肪が分解されて、血中の遊離脂肪酸濃度があがっていきます。この状態に合わせて、エネルギー代謝は解糖系から脂肪酸化系へとシフトするようになります。

脂肪はイメージ的には悪者といった感じを持ちますが、トレーニングや運動の際には重要な持久的な運動のためのエネルギー源であると言えます。これは同時に、エネルギー源の中心でもあるグリコーゲンの節約という効果ももたらしています。

脂肪が脂肪酸へと分解された後、脂肪酸が酸化分解されていくのはミトコンドリア内にあるβ酸化系という場所で行われています。脂肪がクエン酸回路に入るまでの流れを簡単に記せば、脂肪⇒脂肪酸⇒アシルCOA⇒カルニチン(⇒ミドコンドリア内⇒)⇒アシルCOA⇒アセチルCOA⇒クエン酸回路といった感じになります。

ここで一つのハードルとなっているのが、ミトコンドリアの外から中へ脂肪酸が入る部分です。このハードルが脂肪酸の酸化を調整しているとも言えるのですが、この取り込みに不可欠なのがご存知のL-カルニチンです。

L-カルニチンはアミノ酸の一種で生体内では、リジンとメチオニンという必須アミノ酸から合成されるアミノ酸の一種です。L-カルニチンはヒトでは生体内に通常、20,000mgが蓄えられているとされていて、およそ70mgが1日に消費されているといわれています。

そしてそれを補うために、私たちの体内ではL-カルニチン約20mgを生合成し、別途50mgを食事から摂取するといわれています。ちなみにL-カルニチンは赤身の肉に多く含まれており、特に羊肉に多く含有されています。

大のジンギスカン好きな知人がいるのですが、決してスリムとはいえないその知人が体型を気にしながらもジンギスカンだけは胸を張って食べに行く理由は、ジンギスカンに使用する肉が羊だからということでした。

サプリメントにはまったく関心がない人なので、カルニチンという素材までは理解していないものの、ジンギスカン=羊肉は太らないというちょっとした話題になっているようです。(カルニチンが豊富なのは事実ですが、カロリーオーバー分は当然太ります。…念のため)

このL-カルニチンというアミノ酸はタンパク質を構成するアミノ酸ではありませんが、脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ担体という重責を担っているのです。

通常、体脂肪は運動などの刺激により脂肪細胞の脂肪が脂肪酸に変換され、その脂肪酸は細胞内に存在するミトコンドリアと呼ばれる場所で燃焼されてエネルギーに変換されます。このミトコンドリア内には、クエン酸回路と呼ばれるエネルギーを生み出す部分が存在しています。

しかし、このミトコンドリアは細胞内に存在するものの、独立した核を持つ生命体ですので、ミトコンドリアの中に何でも入ることが出来るというわけではありません。つまり、脂肪酸はそのままではミトコンドリアの膜を通過することが出来ないのです。

L-カルニチンは脂肪酸が変換したアシルCoAという物質と結合して、ミトコンドリア内に脂肪酸を通過させる働きがあるのです。機械に例えていうと、ガソリン(脂肪酸)をエンジン部分(ミトコンドリア)まで運ぶ輸送体(L-カルニチン)ということになります。

しかし、L-カルニチンがあるだけでは事はうまく機能してくれません。それは、ミトコンドリアへの脂肪酸の取り込みを調整する酵素が鍵を握っているのです。その酵素とは、カルニチン-パルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)です。そして、このCPT1を強く阻害するのがマロニルCOAという物質です。

マロニルCOAはクエン酸回路で処理しきれずに過剰となったクエン酸が、再びアセチルCOAを経てマロニルCOAへと変わっていくのですが、ミトコンドリア内で脂肪酸とグルコースのどちらをメインに使うのかを調整している物質として注目されています。

持久系の運動を続けることで脂肪酸の分解が促進されると、ミトコンドリア内のアシルCOAが増えるのですが、この物質はグルコースから代謝されてきたミトコンドリア内のピルビン酸がアセチルCOAへと変化する際の酵素(PDH)を不活性化させます。簡単に言えばミトコンドリア内でのグルコースの酸化を抑制するのです(グルコースを利用しにくくする)。

ところが逆にその状態でグルコースを摂取すると、今度はグルコースからマロニルCOAが生成されて、CPT1が阻害されるために脂肪酸をミトコンドリア内に取り込みにくくなります。その結果、PDHが活性化されてグルコースの酸化が促進されるようになります。

このように、グルコースと脂肪酸はどちらもがそれぞれの酵素の反応によって調整をし合っているのです。グルコースの摂取による脂肪酸酸化の抑制のメカニズムは、マロニルCOAによるCPT1阻害という点で説明することが出来ます。

理屈っぽい説明に感じたかもしれませんが、朝一の軽めのジョグ程度であれば、敢えて糖質を摂らずに行うことで脂肪酸がよりスムースに使われるという理屈は成り立つと言えます。

image by: Nata Bene, shutterstock.com

桑原弘樹この著者の記事一覧

桑原塾塾長 桑原弘樹は、国内大手食品メーカーでサプリメント事業を立ち上げ、全商品の企画開発に携わる一方、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部PDAなどの立場で、国内外問わず多くのトップアスリートに直にコンディショニング指導を行ってきた。サプリメントは作るだけにとどまらず、「日本で一番使っているのでは」と豪語するほどのユーザーでもあり、年間300回のワークアウトも欠かさない。サプリメントやダイエットなどの分野で、多くの情報が散乱する昨今。サプリメントを作り、自ら試し、活用法を指導してきた、桑原塾長が、本物で価値あるボディメイク情報を提供すべく、スクランブル発進する!!!

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