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ノートを使え。自らの強みとなるスキルの見極め方と伸ばし方

グローバル人材として海外で活躍するには、どのようなスキルを伸ばしていけばいいのでしょうか。英語力と仕事力の両方を向上させる「ノート術」を紹介しているメルマガ『金田博之のたった一冊のノートで出世する「一流のグローバル人材」への確実な道』の著者・金田博之さんはが、自らの強みとなるスキルの見極め方と伸ばし方の手順を解説しています。

攻の能力「圧倒的スキル」を特定せよ!

このメルマガのモットーに掲げている「グローバル」という言葉。漠然と、外国で仕事をしたり海外と英語でやり取りをするような状況が思い浮かぶかもしれません。ですが、このメルマガでわたしがお伝えしたいグローバル像はそことはまったく違った次元にあります。

どこの国の人であるとかあるいは、なんという企業で働いているかさえ何の保証もしてくれない状況。そんな中あなたは何者で何ができるのか。それこそが、わたしが捉えている「グローバル」人材です。

今までのように◎◎ならアメリカ、◎◎ならドイツといった国の枠や会社やブランドの看板を掲げればやっていける時代ではなくなっています。実力そのものが問われる時代になっているのです。個人のスキルや経験そのものが評価されますし、逆にそれを持っていなければパスポートを持っていないのと同じ。

あなたの会社や肩書きという看板を外してもなお語れるものがあるかどうか。「日本は世界において特別な存在である」という先入観をなくしあなた個人が国という概念を捨てて自分が提供できるなにかを持つこと。こうした感覚をを身につけている人が「グローバル人材」ということなのです。

じゃあ、そんなビジネスパーソンになるためにどうしたらよいか?

その質問にダイレクトにお答えします。それにあたって、フレームワークを設けました。

※ 個性、信念の詳細については今後のメルマガにて、お楽しみに!

一番上に赤字で示した一文が前回のメルマガでお伝えしたグローバル人材としてあるべき姿です。そのために必要な武器は、3つあります。

1. 能力(スキル)
2. 個性(キャラクター)
3. 信念(ビジョン)

この3つの柱に加え英語 が必須の道具になるというイメージです。かつ、3つの柱の中には「攻」「走」「守」の3つの観点 があります。ここに掲げた「能力」「個性」「信念」の3つはグローバルに限らず、国内で仕事をするうえでも欠かせない3要素です。

ですが、ローカルなレベルで要求されるものとグローバルのレベルで要求される状態との間には大きな差があります。このギャップを埋めるための実践法を毎回ご紹介していくというフレームワークです。

攻=圧倒的スキル

このフレームワークにおける第1回のテーマは「能力」についてです。さきほど、各項目の中に「攻」「走」「守」の3つの観点があるというお話をしました。「能力」における「攻」「走」「守」は以下の3つです。

攻=圧倒的スキル
走=スピード感
守=受容スキル

今回は攻=圧倒的スキルについて、たっぷりとお話いたします。

まず、なぜ「攻」「走」「守」が必要なのか。スポーツでいえばただ点を取るだけでななく相手に点を取られないよう守ることも必要だしボールがうまく運ばれるよう走ることも重要ですよね。仕事にも、まったく同じことがいえます。

「能力」は、仕事のスキルそのものを示していますが中でも直接売上につながったりビジネスチャンスを呼び込んだりと仕事の中核になるアクションの能力が圧倒的スキル」にあたります。

例えば・営業でアポをとる・ マーケティング業務を推敲する・ よいプレゼンでコンペを勝ち抜くといったアクションのことです。仕事の能力の中でも一番目に見えやすいものだといえます。実は、この「圧倒的スキル」、まずは 「一点突破」 で育てましょう。

日本人は感覚的に「守」が得意という印象です。マニュアルや業務プロセスがしっかりしており一貫性や、変化に流されない強さがある。集団全体を平均点まで引き上げるのに優れている。そんな長所があります。

反面、意思決定プロセスが煩雑で変化に対応する力に欠けている。平均点以上に突き抜ける人材が育ちにくい。これが短所でもあります。

つまり、世界の誰もが知っているような圧倒的な存在感を示すには日本のビジネスモデルでは不十分なのは否めませんでした。会社の看板にぶら下がっているだけでは世界で通用するような圧倒的にスキルを身に付けるのは難しいのです。

そんななか、どのようにすれば「圧倒的スキル」を身につけられるのか?これが、今回のテーマです。

日本のメリットを活かしながらスキルを磨く

圧倒的スキルを身に付けるといってもいきなり一足飛びに業界No.1の営業力が発揮できるわけではありません。圧倒的スキルを身に付けるにあたっては以下のような二段構えの意識を持つことが必要です。

1. いかに早く平均点に到達するか
2. 自分が伸ばすべきスキルを発掘する

わたしが海外のエグゼクティブたちを見ていて実感したのが圧倒的スキルをみずから意識して発揮している人が多いということでした。日本では、さきほども述べたように会社のシステムとして、全体を引き上げる力には優れているものの、いわゆる「出る杭」を叩くような風土から周りと横並びの行動を求められることが多くユニークな発想や、リスクを取る行動をしづらい状況にあります。つまり、圧倒的スキルを育てにくく個人の能力が埋もれやすい環境にあるのです。

ですが、うまくその仕組みを利用すれば労少なくして平均点に達しやすい環境だともいえます。そこで、まずは現在与えられている仕事を効率よく回しすみやかに平均点に到達すること。そしてその上で自分が一番になれるようなスキルを見つけ、磨き上げることがグローバルレベルの圧倒的スキルを育てる近道となります。

圧倒的スキルを育てるために

あえて「圧倒的スキル」と言っているのは、「そこそこのスキルではグローバルレベルでは通用しないからです。

またスポーツの話になりますが海外のスポーツチームでは平均的になんでもできるというだけでは誰もが名前と顔を思い浮かべられるようなプレーヤーにはならないですよね。企業やビジネスパーソンにおいてもそれは同じです。なんらかのスキルを圧倒的といえるレベルに高めるためには伸ばすものを取捨選択する必要があります。

私が実際に見てきた世界のビジネスパーソンたちも同じです。意思決定力やいろんな人の意見を引き出すファシリテーションスキル。あるいは「マーケティングならこの人が一番」などすごいと思える人々は必ず何らかの圧倒的スキルをもって存在感を発揮していました。個人がこうした圧倒的スキルを持ちかつ会社がもたらす平均点自体も圧倒的な企業。それがAmazonのような世界的企業になりうるということです。

自分の伸ばすべきスキルを特定

まず、自分の置かれた環境においてあなたがすでに「一番」であるもの、あるいは「一番になりうるもの」を特定することから始めましょう。いきなり世界に通用するアイディアを生み出すとか業界一の営業成績を達成するといった大きな「一番」をめざす必要はありません。わざわざ人に言うのもはばかられるくらいの小さな一番」でいいのです。

例えば帳簿の入力のミスが少ない。
誰よりも財務会計の資格を持っている。
誰よりも初回のアポを確実に取ってこられる。
顧客のアフターフォローの連絡を誰よりもこまめに行っている。

こんなふうに、数値化すらできないものでもいいのです。まずは自分の所属するグループ、あるいは会社、業界で一番になれるものを見つけてください。そして、そこに徹底的に時間を注ぎ、スキルを磨き上げます。

ひとつひとつのスキル自体は直接大きな成功や評価に結びつくものではないかもしれません。ですが、これを続けることで小さい一番が広がって大きな一番になっていくのです。

そのスキルを特定するにあたっては人からの評価を軸にすることをおすすめします。ここで活躍するのがいつものノートです。日々の成功体験を記録するときに人から褒められたことが書かれていると思います。蓄積された成功体験の中から共通する要素を見つけてみてください。

例えばある週は「顧客に気に入ってもらえた」
次の月も「上司から『一緒に商談に行くと会話が和む』と言われた」
最近もまた「顧客から『こんなにスムーズに取引できたのは初めて』とお礼のメールが届いた」などとノートに書いてあったとします。

こうした評価から「誰よりもお客さんの立場に立ってなごやかな場づくりができる」という、あなたのスキルが浮かび上がってきます。人からの評価は客観的な事実に基づいていることがほとんどです。一度や二度ではなく頻繁に人から言われることの中にはあなたの「圧倒的スキルの芽が潜んでいます。成長日記をすでにつけている方はノートを振り返って。もしノートをつけていない方は過去の記憶を振り返りながら箇条書きにしてみてください。

ポイントは、2番3番ではダメということ。集団の中で一番といえるレベルでないと圧倒的スキルとはいえません。わかりやすくいうと「◎◎なら◎◎さん」と人から共通で認識されるレベル。最低1つは思い当たることがあるはずです。逆に、10個以上あるとしたら2、3の要素をひとつにまとめてシンプルなものにしてみてください。数が多すぎるとそこに注ぎ込める時間が相対的に減ってしまうからです。

そしてその要素を職人レベルに磨き上げます。具体的には「3年以上」をそのスキル向上に集中して費やしてください。人が職人レベルにスキルアップするのに10,000時間が必要 と言われます。それくらい磨き込む のです。

その業務に割く時間を増やしたり関連する本を読んだりそのスキルに関わる人物に会ったり。誰よりも時間を投入して磨きこむことで小さな「一番」がより大きなスケールの「一番」に育っていきます。

例えば営業の世界ならさきほどの「誰よりもお客さんの立場に立ってなごやかな場づくりができる」というスキルが「初回アポから次の商談に進む」スキルに成長し、そこから発展して「成約件数No.1」につながるといった具合です。

初めは幼稚で子供っぽいスキルに思えるものもあるかもしれません。数値で表せず人に言うほどではない、という抽象的なスキルもあるでしょう。でも、そのスキルを磨いていくことが「日本」という看板にも「◎◎社」という看板にも頼らない、あなたという個人のグローバルで戦える武器を身に付けることにつながるのです。

どんなスーパープレイヤーもあらゆる項目において圧倒的スキルを持っているわけではありません。グローバルの世界では、そんな平均点、あるいは平均以下のスキルには関心がなく、むしろ一つでも目立つスキルがあれば個性になり、そして周囲から評価や羨望の眼差しを得ます。全項目でそこそこのレベルをめざすのではなく小さな、でも「一番といえるスキルを1つでいいから見つけることが必要です。

ちなみに私の場合、それにあたるのが誰よりもいろんな人の意見を汲み取るファシリテーションスキルだと考えています。よく、「金田さんとは仕事がしやすい」と言っていただけることが多いことから自分の圧倒的スキルの芽がそこにあることに気づきました。みんなの意見をまとめるだけでなく一つの目標に向かって導くことにわたし自身、とてもやりがいと適性を感じています。

このスキルに気づき、磨き上げていったことで今では某食品メーカーの課長研修の講師を毎年務め、プログラム評価で常にトップ5に入るまでになりました。その会社の研修は某研修専門の企業が複数社、プログラムを提供しているのですがわたしはその中で唯一個人としてお招きいただいています。今の職場においてはまだ入社から半年程度ということもあり製品知識はもちろん下の下ですし営業スキルは海外の仲間たちに及ばない部分もあるかもしれません。ですが、ファシリテーションに関しては入社時点から存在感を示せていると感じていますし会社の内外から評価されている手応えを感じています。さらにこのファシリテーションスキルが仲間を導くことにつながり「リスクを取ってチャレンジするべきだ」という意思決定力も育んでいます。結果、2018年は早々に昨対比200%を超える結果を出すことができました。

このように、自分の「圧倒的スキルを武器にすることができれば結果が出やすくなるという効果も付与されます。その積み重ねで一つのスキルがどんどん大きな輪になっていくイメージ。抽象的な個人レベルのスキルが誰の目にも明らかな数字で表せるような一目瞭然の結果となって表れた状態です。このステップの先に「顧客満足度95%」「世界No.1シェア」といったような誰の目にもわかる圧倒的な存在感を示せる段階が待っています。いろいろなスキルをつまみ食いしていてはなかなかそこまでのレベルに磨き上げることはできません。一点突破することによって圧倒的な違いが出てきます。

平均点主義で横に技術を広げるのではなくスキルを特定して時間を注ぎ込む「職人」になってほしいんです。日本のメリットである誰もが平均点に到達できるプロセスの恩恵を受けながら自分のスキルは自分で見つけ一本の柱を立てる。現時点で、完成されたスキルになっている必要はありません。「ここは人より明らかに得意」と言えるなにかを見つけることが圧倒的スキルという「攻」の武器になるのです。

わたしも、SAPに初年度入社したときすぐには一番を見つけられませんでした。帰国子女やITに詳しい同期がたくさんいる中でどちらも持っていないわたしは完全に劣等生。それでも、毎朝5時に起きて日経新聞やIT雑誌を誰よりも読みこんでいるという自負はありました。それが私の当時の「一番」でした。

そこにスキルを特定して毎朝ノートにまとめる時間を作り自社に関連する情報を抜き出してファイリングしました。そうすることで「自社の情報と業界に関する知識」では誰にも負けない「一番」になれたのです。

これは直接すぐに売上につながるわけではありません。でも、こうして自分だけの一番を磨き続けたことが今の仕事や立場につながっています。子供のような気持ちで自分の「一番」を見つけること。それがグローバルで通用するレベルのスキルを磨くことにつながるのです。

image by: Shutterstock.com

金田博之この著者の記事一覧

世界MBAランキング首位のINSEADエグゼクティブMBA卒業。1998年、外資系大手ソフトウェア企業のSAPに新卒入社。30歳からマネジメントを歴任、7年連続グローバル・トップタレント選出。 2014年、日本の大手製造・流通企業ミスミグループでGMとしてグローバルDX新規事業を推進後、最先端AI/チャットの外資系IT企業、ライブパーソン(LivePerson、NASDAQ上場)の代表取締役に就任。3年間で毎年300%超成長(アジア全体売上の76%)。 2020年12月、クラウド型ネットワークセキュリティのトップ企業ゼットスケーラー(Zscaler、NASDAQ上場)にて、日本を含むアジア全体を統括する代表取締役に就任。 セミナー、企業、大学等で講師経験10年以上、受講者のべ5,000名以上。日経BP、東洋経済ほかメディア掲載多数。

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