MAG2 NEWS MENU

景気のいい会社の社長はなぜ皆揃いも揃って中古ベンツに乗るのか

お金に余裕のある方が所有する車、というイメージの強いメルセデス・ベンツですが、そんなベンツの「中古車」が絶好の節税アイテムになるというのは、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。なぜ新車ではなく中古車なのでしょうか。大村さんが自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、その驚きの「税制上のカラクリ」を白日の下に晒しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年2月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

なぜ景気のいい社長は中古ベンツに乗るのか?

ベンツというと、金持ちのアイテムとして定着しています。景気のいい会社の社長さんなどは、ベンツを買うことが多いものです。ベンツを買うのは、もちろん性能がいいし、ステイタスシンボルとしても有効だからでしょう。

が、社長さんたちが好んでベンツを買うのは、もう一つ理由があります。それは、ベンツは節税アイテムとして打ってつけということです。ちょっと会計に鋭い社長さんは、「中古ベンツ」を買うというケースもけっこうあります。なので今回は、なぜ中古ベンツを買うと節税になるのか、ということをご紹介しようと思います。

まず、自動車を購入したときの会計処理から、簡単に説明したいと思います。自動車を買った場合、買ったときに全額を経費で落とすことは出来ません。固定資産に計上して、減価償却をしなければなりません。固定資産というのは、何年にもわたって使えるもので高額なもの(10万円以上)のことを言います。自動車などは、何年にも渡って使いますよね?だから、その購入費を買った年に全額経費にしてしまうと、買った年の車の経費だけが大きくなり、それ以降の年は車の経費がゼロになってしまいます。これは、会計処理的にバランスが悪いので、長く使えるものを買った場合は、購入費を使える期間に案分して経費計上しましょう、ということになっているのです。それが、いわゆる「減価償却」です。

減価償却の方法には、「定額法」と「定率法」という二つの方法があります。定額法というのは耐用年数に応じて毎年同じ額だけ」の減価償却費を計上していくというものです。そして定率法というのは資産の残存価額に毎年同じ率をかけて」、各年の減価償却費を計上していくというものです。両者の特徴としては、定額法は毎年同じ額の減価償却ができ、定率法は耐用年数の前半期での減価償却費が大きく、年数を経るごとに償却費が少なくなっていきます。だから、早めに多く減価償却費を計上したい場合は定率法を選ぶべきでしょう。

なぜ車の買い替えが節税に?

会社の景気がいいとき、今年は儲かりそうだというときには、節税策として車の買い替えをするという手があります。

なぜ車の買い替えが節税になるのか、というと、まずは単純に大きな買い物をすることで経費を膨らませるという意味があります。前述しましたように、車は購入したときに一括して経費として落とすことはできず、減価償却資産として計上し、耐用年数に応じて経費化していかなければなりません。

が、車の場合は、耐用年数が比較的短いのです。新車の普通乗用車でも耐用年数は6年です。耐用年数6年という事は、定率法での減価償却率は0.333です。つまり購入して1年目に購入金額の3分の1を経費計上できるということなのです。そして、購入して2年間で購入費の約55%を減価償却できます。

中古車は格好の節税アイテム

そして中古車は新車よりもさらに節税効果が高くなります。中古資産というのは、新品を買ったときよりも、当然、耐用年数は短くなります。耐用年数が短いということは、1年間に計上できる減価償却費がそれだけ大きいということです。そして中古資産の耐用年数というのは、次のような計算方法で算出されます。

(耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)

たとえば、5年落ち(5年経過)の普通車の中古車を買った場合、次のような計算になります。

(耐用年数6年-経過年数5年)+(経過年数5年×20%)=2年

1年未満の端数が出た場合は切り捨てとなり、最短耐用年数は2年です。計算式で2年以下になった場合は2年が耐用年数となります。ざっと中古車の耐用年数を並べてみますと次のようになります。

年式      耐用年数

 

1年落ち     5年
2年落ち     4年
3年落ち     3年
4年落ち     2年
5年落ち     2年
それ以上古いもの  2年

これを見ればわかるように、4年落ちの中古車を買えば耐用年数は2年となるので、これがもっとも減価償却費では有利になります。これ以上、古いものを買っても耐用年数は減りません。耐用年数が2年ということは、定率法では償却率は1.000になっています。つまり買ってから1年間で全額を経費に計上できるのです。

新車と中古車では1年目の減価償却費が3倍違う

たとえば200万円で車を購入する場合、新車と中古車ではどう違うかを比べてみましょう。200万円の新車を期首に購入した場合は、その年に計上できる減価償却費は66万6,000円です。

一方、200万円の4年落ちの中古車を、同じように期首に購入した場合、200万円全額が減価償却費として計上できます。

つまり、4年落ちの中古車の場合、購入した年に新車の3倍の減価償却費を計上できるのです。だから、中古車というのは、急に儲かった年の税金対策としては打ってつけだといえます。

中古ベンツの効率の良さ

しかも、これがベンツとなると、さらに節税効果は高まります。なぜなら、ベンツは耐久性に非常に優れているからです。ベンツの特徴は、なんといっても優秀な性能ですが、それと同時に丈夫で長持ちということが挙げられるでしょう。そしてこの「丈夫で長持ち」ということが、節税で大きな意味を持ってくるんです。

たとえば、2013年モデルの「メルセデス・ベンツ A18ブルーエフィシェンシースポーツ」の場合、新車時には330万円程度で売られていましたが、現在、中古車として200万円程度で売られています。つまり5年以上経過しても価格は4割くらいしか下がっていないのです。

これは節税上、非常に有利になります。というのは、4年落ちのベンツを買えば耐用年数が2年なので、最初の1年間で全額を減価償却してしまいます。1,000万円の中古ベンツを買ったとしても、2年目には帳簿上の価値はゼロになってしまうのです。

でも4年落ちの1,000万円のベンツを数年間乗ったとしても、まだまだ市場価値はあります。よほどのことが無い限り、最低でも500万円、状態がよければ800万円くらいの価格で売れるでしょう。ということは、帳簿上は無価値ということになっているのに、実際には500万円から800万円の資産が残っていることになります。

中古ベンツは「隠し資産」になる

中古ベンツを購入し、減価償却が終わってしまいますと、帳簿上の資産としてのベンツは消滅します。つまり帳簿上の価値はゼロということです。

しかし、先ほども述べましたように、中古ベンツは耐用年数が過ぎても、市場価値は大きく残っています。いってみれば、「含み資産」ということです。この固定資産における「含み資産」は、現在の税法では計上しなくていいということになっています。だから会社は、裏金を500万円から800万円持っているのと同じことなのです。

そして、あまり景気がよくないときには、ベンツを売り払ってしまえば、会社の資金繰りに大きく貢献するというわけです。もちろん、ベンツを売った時には、売却益は収益として計上しなければなりませんが、そのときは会社の収益が悪い時なので節税のことは考えなくてもいいのです。

2ドアのベンツでも会社の金で購入できる

企業の経理担当者や、税務関係者の間では、こういう都市伝説がありました。「2ドアの車は会社の経費社用車にはできない」と。このことは、かなり以前から、経理関係では言われていたことなのです。そして10年ほど前に『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか(小堺桂悦郎著・フォレスト出版)』という本が大ベストセラーになったことをきっかけに、この都市伝説は広まったようです。

しかし、実はこれは誤解に過ぎません。なぜ、2ドアの車はダメと言われるようになったのかというと、その理由は「2ドアの車は後部座席にお客さんを乗せることができない。社用車というものは、お客さんを乗せるためにあるのだから、2ドアの車は社用車にはできない」というわけです。

でも、裁判の判例で、この都市伝説は明確に覆されているのです。ある社長が2ドアの車を社用車とし、税務署はそれを否認したために、裁判となったのです。この社長は、2ドアの車を、出勤や出張の際に使っており、「会社の業務で使っているのだから社用車として認められるべきだ」と訴えたわけです。そして、判決ではこの社長の言い分が通りました。この社長は、プライベート用に別の車を持っており、この2ドアの車は会社のために使っているということが、はっきりしたからです。

この判決のポイントは、この社長がプライベート用の車を別に持っていたことでしょう。税務署側の主張は次の二点でした。

しかし、この社長はプライベート用に別に車を持っていたし、きちんと会社の業務で使っているという事が客観的にわかったので、社長の言い分が認められたのです。つまりは、2ドアの車であっても、会社の業務で使用してさえいれば立派に社用車として認められるわけです。

この裁判で、社長が勝った理由をここで整理しておきましょう。判決では、次の2点をポイントとして、社長の主張が認められました。

これを見ると、2ドアの車でも実際に会社の業務に使っていれば、会社の経費で購入できるということがわかります。社用車というのは、顧客を乗せるためだけではなく、役員や社員が移動のために使うことも認められているのです。だから、スポーツタイプの車であっても、立派にその役目をはたしていれば、社用車として認められるということです。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年2月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

初月無料購読ですぐ読める! 2月配信済みバックナンバー

※2019年2月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、2月分のメルマガがすべてすぐに届きます。

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

初月無料の定期購読手続きを完了後各月バックナンバーをお求めください。

2019年1月分

※1ヶ月分324円(税込)で購入できます。

大村大次郎この著者の記事一覧

元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授する有料メルマガ。自営業、経営者にオススメ。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 大村大次郎の本音で役に立つ税金情報 』

【著者】 大村大次郎 【月額】 初月無料!¥330(税込)/月 【発行周期】 毎月 1日・16日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け