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臨床心理士も実感。白鵬の横綱相撲に学ぶ、「怒り」のいなし方

怒りをコントロールするための「アンガーマネジメント」に関する書籍や記事は数多くありますが、いざ実践しようとなるとなかなかうまくいかない、ということもままあるようです。そんな方のために、今回の無料メルマガ『生きる!活きる!『臨床力』』では、著者で獣医師と臨床心理士の資格を持ち、大学で教鞭も執られている渡邊力生さんが効果を実感したという、ある意味感動的とも言える「怒りのコントロール法」を紹介しています。

感動的なアンガーマネジメントの方法は、横綱の取り組みから学ぶことができる!

人間関係におけるトラブルの最大の要因は“怒り”にあるように思います。様々な“アンガーマネジメント”に関する書籍が発行されたり、セミナーも各所で開かれていると聞いたことがあります。色々な知見、考え方、スキルがあるようですね。それらをここで詳らかに紹介することはいたしませんが、「怒り コントロール」と入力して検索するだけでもかなりの記事が出てきます。

その中で個人的には、説得力があって、効果を実感できているなぁと思っているのが「怒りの6秒ルール」というものです。有名な話ですのでご存知の方も多いかと思いますが、ご存知でなければ以下の記事をお読みいただければ、私と同じように「あ、なるほどー」とお感じになられる方もおられるかもしれませんね。科学的根拠に乏しい、という声もあるようですが、少なくとも私には合っているな、と感じています。

6秒間で怒りを可視化~感情的ではなく理性的に~

とはいえ、そう簡単にはいかないから怒りとは厄介なものです(汗)。自分の【怒りという感情】との戦いにおいてそれまで、15戦15敗だった私も、この方法でいけたところはせいぜい3勝12敗ぐらいでした(涙)。

怒りの暴発というのは相手を傷つけたり相手に嫌な思いをさせるにとどまらず、「またやってしまった…」という自尊心の毀損も引き起こしてしまいます。本当に誰も得をしないんですよね。

実はここであえて10戦10敗としなかったのにはワケがあるのです。

言葉では「6秒ルールというのは理解できたけれども、やはり何かガツンとくるイメージが必要なんじゃないか」。そんなふうに思っていたところ、先日「これは!」というイメージに出会い感動しましたので、紹介させていただきたいと思います。

私がお世話になっているトレーナーさんはあの白鵬関とも親交があるらしく、間近で取り組みを見られたことがあるそうです。トレーナーさんですから「凄い!」と思うことはいくつもあると思うのですが、最も凄いと感じたのが下半身の安定さと腰から上の柔らかさ、この対比なんだそうです。特にこの上半身の柔らかさがとんでもないのだとか。

私の説明でうまくお伝えできるか甚だ不安ではありますが(汗)、白鵬関は相手から攻めてこられてもその場から足が動くことなく、その相手の攻めの手をことごとくその柔らかい上半身で、相撲で言うところの“いなしで無力化してしまうように見えるんだそうです。

相手は訳も分からないまま体力を奪われ、気づいた時には横綱にまわしをとられ、投げや寄りに対抗する力をもはや残されてはいない状態で負けてしまうんだそうです。

今でこそ怪我の影響や体力の衰えは隠せないところあるみたいですが、全盛期は本当に他の力士の勝ち目がなかったようです。

私はこの話を聞いて、横綱の強さの秘密の一端を垣間見ることができたということと、そのような慧眼を持っておられるプロのトレーナーの凄さに感動を覚えました。そして後日、このイメージが自分の怒りを鎮めようとする時に使えるな、と思いついてさらに感動しました。

すなわち、自分の中から湧き上がってくる感情を差し手や張り手で攻めてくる相手の力士に見立てるわけです。相撲の一番が10分も15分続かないように、怒りの感情が攻めてくるのはせいぜい数十秒、いわゆる「大相撲」となっても数分です。怒りの攻撃を全ていなすことができれば、もはや自分の怒りのエネルギーは枯渇しているでしょう。

そしてこのイメージが良いなと思うところは、自分の怒りだけではなく、怒っている他者と相対する時にも使えるという点なのです。自分に怒りを向けて来られる方の中には、その理由が全くもってこちらとしては納得できないことも少なくないのではないでしょうか。怒りに限らずネガティブな感情全般と言ってもいいかもしれませんね。

そういったネガティブな感情が理不尽にぶつけられるシチュエーションは、自分の怒りと相撲を取るのとは比べものにならないぐらいのパワーやテクニックが求められます。どんな攻撃を繰り出してくるか、予想もできないからですからね。

ましてそれが、「そう簡単にこちらも退くわけには折れるわけにはいかない!と自分が感じているような場合相手)だと、もう本当に大一番です。

ただその時も基本は同じ。股関節を曲げてぐっと腰を落とします。それで足を動かさない(譲らない)のは大事なことですが、そこで自分が壁となってしまっては、エネルギーのある相手(怒っている人)であればより強力に攻めてくるかもしれません。

そんな時は自分から攻めることを一旦封じ、相手の攻撃をひたすら受けると良いでしょう。一旦【いなす・吸収する】と決めると、人の心というのは案外柔らかくなれるもの。そう、白鵬関のあの上半身のようにです。

そうしているうちに攻め疲れた相手は、早ければ6秒でその怒りのエネルギーを全て失っているはずです。そうなればあとはこっちのもの。寄り切るなり、投げるなり、はたき込むなり、思うがままです。

いや…、和解して健闘を称え合って“引き分け”でもいいですよね。過去には実際の大相撲で引き分けが宣言されたことがあったそうです。

そこでこちらが相手を完膚なきまでたたきのめすのか、それとも、「あぁ、横綱に立ち向かっていってもこれは完全に負けてしまうな」と痛感させたところで終わりにするのか。そこは人間性が問われるところかもしれませんね。

ともかく私はこのイメージが自分の中ではすごくしっくりきたんです。おかげで今は…、まぁなんとか“勝ち越し”ぐらいまではもってこれるようになったのかな、と感じています。

もし自分の怒りの感情、そして誰かにぶつけられる怒りをはじめとするネガティブな感情への対処にお困りの方がいらっしゃいましたら、是非この“横綱相撲のイメージを試してみてください。もしかしたら私のように感動的な体験をしていただけるかもしれません。

目指せカド番脱出。

みなさまにとって素敵な1日となりますように。Ci vediamo!!

image by: J. Henning Buchholz / Shutterstock.com

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「臨床」という言葉は、人が横たわる床や寝台というギリシア語をルーツとし、元々は宗教的な言葉として用いられていました。それが医療、心理学、教育の世界でも用いられるようになり、徐々に「現場」という意味合いが強くなってきました。  しかし現場というのは何も医療などの専門的な分野に限ったことではありません。人が人に出会う場面は全て「現場」であり「臨床」であると言えます。様々な場面で「生きる」方にとって「活きる」知識や気づきを提供する、すなわち「臨床力」のヒントとなるようなメルマガを目指します。

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【著者】 渡邊力生 【発行周期】 ほぼ 日刊

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