MAG2 NEWS MENU

現役アナウンサーが解説。話し方で悩む人に共通する話の始め方

人前で話すあらゆるシーンに役立つプロの技を伝えてくれるメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』の著者で、現役アナウンサーの熊谷章洋さん。前回の記事「話し方の悩みのない人に学ぶ魅力的話術」の最後にあったクイズの種を明かし、話がまとまらず長くなりやすく、途中で何を話しているかもわからなくなる人が、話す前にまず意識すべきことについて、わかりやすく解説しています。

話していて頭が白くなってしまう原因

前回の記事では、最後にこんなクイズを考えていただきました。

Q. 大きなザルのなかに、大豆やら、小豆やら、いろいろな種類のマメ類が、たくさんごちゃ混ぜに入っています。これらの豆を、まとめておいて!と指示されました。あなたは、何をしますか?

…と、いかにもひっかけ問題風の曖昧な設問ですから、おそらく警戒心満載で質問の意図を汲み取ろうとなさった方もいらっしゃるでしょうね。自分の頭の中を表現し尽くしてスッキリする人と、なんかモヤモヤが残る人の、考え方の違いが浮き彫りになる…そういう意図があるクイズ。

これが前提でしたので、その切り口で解説していきますね。

まず、このクイズにおける「あなた」自身が、一番効率的に無駄なく振る舞える方法は、「どういう基準でまとめますか?」と聞くことです。これが、このクイズを作った私の意図であり、このクイズの状況におかれた「あなた」が、第一段階にやるべきことの正解です。

クイズの設定では、その指示をした人が存在しますから、その依頼の意に沿うよう、結果を残す必要があります。よって、まずその依頼の真意から理解する言動、「どういう基準でまとめますか?」と聞くことが、すべての始まりであるべきです。

そのために、わざわざクイズを曖昧にしておきました。なんか怪しい!?と警戒なさった方は、そのあたりの雰囲気を読み取られたのだと思います。いずれにせよ、話してスッキリできる人は、「どういう基準でまとめますか?」と聞ける人。これが第一段階です。考え方の第二段階以降もありますが、その解説は次の機会に譲ることにします。

というのも、このクイズの理解のためには、やっちゃダメなことのほうが、ポイントなんです。頭の中を表現し尽くせずスッキリしない人、モヤモヤが残る人の考え方は、例えば、このクイズのように、豆をまとめるよう指示されたら、「すぐにザルの中に手を突っ込んでしまう」ような人。この違い、わかりますか?

私が「話し方相談オンライン」でご相談を受け、スカイプでトークをしていると、話が長くなりがちな人、うまくまとまらない人、端的に説明できない人、途中で何を言っているのかわからなくなってしまう人、頭が真っ白になってしまう人、オチがない、結論に至れない…。

こういうお悩み、苦手意識を抱えている人に共通する、頭の中のモヤモヤ発生の原因に、毎回必ず気づきます。それは、いざ話そう、話さなくてはいけない、というその瞬間に、たくさんの情報や思いを抱えすぎている、ということです。しかもそれがごっちゃ混ぜであったり、漠然とした状態であったり、です。

このクイズの設問を、ごちゃまぜの豆がザルの中に入っている状態にした意図は、話す時の頭の中の再現です。話すべき情報=豆は、自分の頭の中=ザルに、混在しています。

しかし「話さなくては!」と意気込んで、そのザルの中にいきなり手を突っ込んでも、豆はザルの中で整理できないですよね。豆は細かくて丸いので、ザルの中でまとめようとしても、すぐに他のたくさんの豆に紛れてしまいます。話がうまくまとめられない、端的に表現、説明できない…。まるで、丸い豆が転がって、せっかく整理し始めたのに、台無しになってしまうような状態です。話す途中で頭の中が白くなってしまう、あの感じに似ていませんか?

ましてや、頭の中の情報は、豆のような実体ではありません。言うべきことや、自分が定めた話の方向性ですら、明確に意識できなければ、どんどん消えていくのです。話しながら、ワケが分からなくなってしまうのも、その考え方、話す時の思考回路から生まれる必然なのですね。

そしてこれは、話し手がうまく話してスッキリするという意味だけではありません。豆をまとめて、と依頼されて、とりあえず、まとめ作業に手を付けてしまう。これは、自分の思い込みによる基準で作業を開始してしまう、勝手な判断です。

とりあえず、豆の種類ごとに集めておこうか、ぐらいに思ったのかもしれませんが、もしかしたら、違う種類ひとつずつを集めてワンセットにするのが、依頼の真意かもしれませんよね。

このクイズは「豆のまとめ方」という設定ですから、なんだ、そのぐらいのこと…。と思われたかもしれませんが、では、「〇〇について、説明してください」と依頼されたとしたら、あなたは最初に何をしますか?いきなり、〇〇という情報のザルの中に、手を突っ込んでいないでしょうか?

ここで思い出してください。逆に、頭の中を表現し尽くして、話してスッキリできる人は、まずどういう言動をしていたでしょうか?クイズの例では、「どういう基準でまとめますか?」と聞くことから始まりました。

ポイントは、指示した依頼者に真意を聞くことというよりは、

というところです。より厳密に定義したかったので、相手に質問することから始めた。因果関係はこうなります。

これを、話す時の発想法に変換するならば、「今からどういう話をすべきか」「今から話すことに求められること、必要な情報は何か?」を、

話す前に、話すことの範囲を小さくして、強く明確にそれを意識できているからこそ、話の途中で、頭が白くならないんですよね。

そしてその話す途中での情報の取り出し方、豆の例で言えば、ザルの中から豆をどう取り出すか?この発想、思考過程にも、頭の中をスッキリ表現し尽くすための、第二段階以降があります。

次回はそれについて、解説しますね。

image by: igor kisselev, shutterstock.com

熊谷章洋この著者の記事一覧

アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 話し方を磨く刺激的なひと言 』

【著者】 熊谷章洋 【月額】 ¥346/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け