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まさかの長期政権。神輿の上で笑う安倍首相、ほくそ笑む官房長官

今年2月、首相連続在任日数で吉田茂を抜き歴代2位となった安倍総理。短命政権が続いた平成にあって「異例の長期政権」とも言えるわけですが、何がここまで長きに渡る政権運営を可能にしたのでしょうか。ジャーナリストの嶌信彦さんが、自身の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』でその要因を探っています。

異例な安倍長期政権のわけ

安倍政権が発足してから5年が過ぎた。歴代政権の中では、74ヵ月目に突入し、戦後二番目の長さだ。日本の政権はくるくる変わり、一つの政権が70ヵ月を越したのは極めて珍しく戦後では佐藤栄作首相の2,798日に次いで二番目、異例の長期政権といえる。第一次安倍政権は体調不良で、わずか366日で身を引いているだけにこれほど長期になるとは驚きだ。

第二次安倍政権が誕生したのは、ひとえに菅義偉氏の巧みな根回しによるところが大きかった。菅氏が安倍氏を御輿として担ぎ、政権の座にいた民主党が落ち着いた安定的な政治を出来なかったため、再び安倍氏に出番が廻ってきたのだ。

結果的には1993年に野党勢力だった細川護煕連立内閣、1年後の1994年に自民・社会・さきがけの自・社・さ 村山富一社会連立内閣が成立したが、結局長続きしなかった。自民党はその後、公明党と組んで再び1996年から橋本龍太郎、小渕恵三(1998年)、森喜朗(2000年)、小泉純一郎(2001年)、安倍晋三(2006年)などと自民党政権に逆戻りすることに成功していったのである。

2009年から2012年まで民主党が政権をとるものの、第二次安倍政権になると公明党と組んで安定多数を確保し、アメリカのトランプ政権と親密さを演出することで外交的な安定感も得て長期政権の基盤作りに成功した。

ただ景気拡大の期間は長かったがかつての「岩戸景気」「オリンピック景気」「列島改造景気」などの6~7%成長と比べると1%前後で景気拡大の実感に乏しいのも事実だ。

しかし、このだらだらと低成長で長く続いているアベノミクス景気が安倍政権を長持ちさせているともみえる。民主党政権の失敗はまだ記憶から消えていないし、自民党内にも5年間続いた安倍政権を倒すエネルギーがほとんどみえてこない。対抗馬とされる石破茂氏には国民を沸かす人気やエネルギーが感じられないし、宮澤派の岸田文雄氏も自ら立ち上がって政権を取りに行くガッツがみられない。そうそうしているうちに安倍氏は海外で顔を売りすっかり日本の代表としての存在感をみせてきてしまった。

拉致問題、北方領土交渉、対中国関係も遅々として進んでいないが、日本の中では誰がやってもそう変わらないだろうという諦念が当たり前のようになっているし、他の候補も野党もこれっ!といったアイデアも行動もみせないため、安倍氏でいいんじゃないかという雰囲気に落ち込んでしまっている状況のようである。誰かが「なるほどそんな手を打ってみたら面白い」と思うようなアイデア、行動が出てくれば、今の沈滞した政治状況は変わると思うが、どこにもアイデアや構想力行動が出てきていない

そんな状況だから、政治家はもちろん企業や国民の中からも胸のすくような提案は出ず、平々凡々たる安倍政治にまかせておいた方が安心だという雰囲気に取り囲まれているのではないか。世界をみても、どの国の政治にも新風は吹いておらず、日本もその渦の中に飲み込まれ、国民も「仕方なしとあきらめているようにみえて仕方がない。

「三・角・大・福・中」時代や「安・竹・宮」の頃のほうがそのうち何かが起こるのではないかという“期待”感があったような気がする。政治が小粒になってきたということなのだろうか。いまや外交は安倍、国内の政治の操縦は菅官房長官が一手に引き受けて政局は一見、安定しているようにみえるが、実際は国民の政治的関心が薄れてきてしまっているだけではないのか。

(Japan In-depth 2019年3月16日)

image by: 安倍晋三 - Home | Facebook

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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