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なぜ男は「動く物」が好きか?でも行き着く先は動かない「石」だ

男の子はロボットで遊び、女の子はお人形で遊ぶ。幼児期の遊び方に大差はなくても、徐々に大きな違いが出てくると、メルマガ『8人ばなし』の著者・山崎勝義さん。その違いを生む理由として、男は動く物が好きだという考えに思い至ったようです。そして、そういう男子の好む対象物が、自身の活力に比例するように、より速く、複雑で高価な物へ上り詰め、やがて衰えに比例して収束していくということを発見しています。

動く物のこと

男は動く物が好きである」。偏見はないが独断に基づいた私見である。ただ、これを男性の一生に当てはめてみると、意外な符合を見出すことができるのである。

生まれてから物心がつくまでは、男女の差に関係なく動く物なら何にでも興味を示す。ということで、上がお兄ちゃんでもお姉ちゃんでも、おさがりで十分という訳である。

好みが分かれ始めるのは、自分は男の子あるいは女の子なんだ、という自覚が芽生えてからである。この頃、男の子はロボットで、女の子は人形で遊び始める。物としては一見随分違うようだが遊び方にはそう大差はない。ロボットにしろ人形にしろ、手足を動かして遊ぶということには変わりがないからだ。

このロボット・人形遊びが二次的段階になるとその遊び方にも違いが出て来る。ロボットには合体や武器などの、人形には着せ替えやアクセサリーなどといった新要素が加わるのである。この違いは、単に取り合わせの違いとも取れるが、よく観察してみるとやはり遊び方そのものが違って来ているようなのである。

例えば、男の子の場合「ガシーン!」「ドカーン!」といった具合に、動きそのものを擬音化して遊ぶ。これに対し女の子は「お着替えしましょうね」というふうに相手との関係性を意識した言葉を口にしながら遊ぶ。同じ「ごっこ」つまりは「ロールプレイング」でもこの違いは大きいのではないか。ここで何となく見えて来る。男は動く物が好きなのである。

小学生くらいになると、ベイブレード・ミニ四駆・ラジコン、といった具合に女子との差は幾分決定的となる。動きの方もより速く、激しくなっているのがよく分かる。

中学生にもなると、自分の身体も一緒に動く物、例えばスケボーとか自転車(マウンテンバイク等)で遊ぶ男子も出て来る。遊びにおける危険度が急激に増すのもこの段階である。勿論、女子も同じような物で遊んだりもするだろうが、危険なことやバカなことをするところまで行くのはおそらくほとんどが男子であろう。

青年期になると、それが車やバイクになり、危険度も掛かる金も一気に上がる。これが一つの極相である。実際、経済的な余裕さえあれば、値の張るスーパーカーやスーパーバイクが欲しいという男性は結構いるのではないだろうか。さらに陸上だけで満足できない人は、船舶や航空機のライセンスを取得するところまで行くのである。

面白いのはこれからである。だんだん年を取って体力がなくなってくると、今度は逆に動きの少ない物に惹かれ始めるのである。

その第一段階が、庭いじりである。それが花でも野菜でも、植物だから動きはほとんどない。ほとんどないが全くない訳でもない。半年から一年単位で見ると、種から花、そして実、というふうに結構劇的に変化していることが分かる。とは言え、気長なことには違いない。

第二段階になると、さらに気長になって盆栽をやり始める。ここまでくると、動きは数年単位でも僅かしかない。それでもゼロではない。

いよいよ最終段階になると、に凝り始める。もう動かない。せいぜい苔が生える程度の表面的な変化があるくらいである。逆に言えば、石に興味が出始めたら(勿論、地質学や鉱物学など学問的興味は除く)、自分もそろそろだな、と思っていいのであろう。

ただ近年、小学校中学年くらいから別ルートが現れた。ゲームである。これは青年期の車・バイク時代をも含めて、長期の間、第一の遊びとなり得る物である。

今、自分の興味は、このようなゲーム世代の男性が年を取って動きというものに辟易し始めた時に一体どうするのか、というところにある。ひょっとして庭いじりも盆栽も石もやっぱりゲームの中でやったりするのだろうか。

これはこれで(正直、違和感を禁じ得ないが)、男の新しい年の取り方と言えるのかもしれない。

image by: UvGroup, shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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