新しい年度が始まり子供たちも気分一新、なにかを決意し目標を立てるタイミングになりました。今回の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』では著者で漫画『ドラゴン桜』の指南役としても知られる親野智可等さんが、親子の間で話し合う夢や目標、そしてその達成に向けての具体的な進め方を紹介しています。
学年始めにやっておくこと
子どもたちにとって4月の新年度の始まりはお正月と並んで大きな節目だ。新学年で何をがんばるか、新しい決意をするのにこれほどふさわしい時はない。
この時期、子どもは子どもなりに新学年への希望を持っている。たとえ、それを口にしない子でも「今年こそ○○をやりたい」「いままでにない自分を出したい」と思っている。
前回、学年末と春休みの過ごし方について述べたが、子どもたちの成長を振り返って、褒めてやり、モチベーションが上がったときに、親子で新しい年の夢や目標を話し合ってみよう。
「去年は漢字ができなかったから、今年はがんばろう」ではモチベーションが上がらない。また、いきなり「夢や目標を言ってごらん」では子どもが構えてしまって、お説教された気持ちになってしまう。
これまでのがんばりを褒めて、楽しくおしゃべりするなかで、自然に夢や目標が形になっていくのが理想的だ。
「がんばり表」と「見届け表」を壁に張る
目標を立てる上で大事なことは「抽象的目標」と「具体的目標」の両方を決めること。
つまり、「漢字をがんばろう」という抽象的目標が決まったら、そのために「毎日書取りを1ページやろう」と具体的に目標を立てること。この具体策がないと、掛け声だけに終わる可能性が高い。
だから、目標の書き方は「○○するために○○する」という書き方がよい。「漢字博士になるために毎日1ページ書取りをする」というようにだ。
勉強だけでなく、家のお手伝いや生活面も目標に入れるといい。例えば、「みんなにきれいなお風呂に入ってもらうためにお風呂掃除をする」とか「気持ちのいいスタートのために毎朝6時に起きる」などだ。そして、目標を立てたら、紙に書いて目立つところに張っておく。
その次に、この下にある「がんばり表」を作って、壁に張っておこう。
欲張って無理に強制してはいけないが、もしお子さんに余裕があるなら「生活」「学習」「運動」「仕事(学校あるいは家庭)」の4分野で、それぞれ一つずつ目標を立てて、この表で毎日、できたかどうかチェックする。
それぞれの目標について、よくできたら◎、できたら○、やったけどあまりよくないときは△、やらなかったら×、やらなくていいときは/と、5つの記号で評価する。
同時に親自身も、子どもの目標をサポートして、子どもを褒めたかどうかチェックする「見届け表」を作って、壁に張り、子どもと同じように5つの記号で評価する。
なぜ、見届け表が必要かといえば、親が三日坊主にならないようにするためだ。目標を立てたのに、やったかどうか見届けもせず、1週間後にいきなり「何もやっていないじゃないか!!」と怒るのが一番いけない。
がんばり表はしかるためではなく、子どもにできるようにしてやり、自信をつけさせるのが目的だ。そのために親が毎日、見守り、実行したら褒めてやるために活用する。
目標を達成したら、記念に写真を撮り、飾っておくと、より意欲が高まる。お風呂掃除などを始めた日にお風呂場で写真を撮り、「お風呂場掃除開始記念日」と書いて張っておくのもいい。
ちなみに目標の期間は長すぎるとだれてしまうので、1学期だけにして、夏休みはまた別の目標を立てた方がいいだろう。
教科書の目次をコピーして楽勉を始めよう
新学年では、年間の学校行事の予定表が配られるので、それを基に話し合うのもいい。例えば、運動会や学芸会、音楽会、縄跳び大会など、去年のがんばりを褒めた上で、今年はどうしたいか相談する。
徒競走で順位を上げたいなら、走るトレーニングを毎日するとか、縄跳びを1日○回するとか、具体的に目標を決めよう。
学級委員や児童会役員もこの時期に決めるので、子どもの背中をそっと押してあげよう。多くの子はやってみようかと思っても、恥ずかしくて立候補できない。
そのとき、お父さんやお母さんが子ども時代の学級委員や何かの委員長を思い切ってやってみた経験などを話してあげると、子どもも勇気が出てくる。こうした体験は心の成長にとても役立つ。
新しい教科書を持ち帰ってきたら、パラパラと目を通し、国語・算数・理科・社会の4教科でいいから、目次だけコピーをして、目の届く場所に張っておくといい。
というのも、親が年間の授業スケジュールを頭に入れておくと、「楽勉」に役立つからだ。楽勉とは、生活や遊びの中で楽しみながら子どもの頭を鍛えること。
算数で分数の授業が始まることが分かったら、ピザを食べるとき、切り分けながら2分の1や4分の1の意味を教えたり、4分の2と2分の1が同じ量であることなども学べる。これをやっておくのとやっておかないのでは、授業の理解のスピードがまるで違う。
理科で気温の話が出てくる前に、寒暖計で毎日の気温を測ったり、植物を学ぶ前に、散歩しながら花の名前を教えたり、社会で工場が出てくるときに、お父さんの会社の工場の話をするなど、どんな些細なことでもいいから、事前に少しでもその話題に触れていると、子どもは勉強が楽しくなり、学習意欲が高まる。
親がこうした楽勉を始めるのにも、4月はふさわしい時期だ。家庭で楽勉を実践すると、きっと子どもの学力はグンと向上するだろう。
初出「親力養成講座」日経BP 2008年4月4日
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