毎日働きその対価として支払われる給料を生活の糧としている雇用者にとって、会社の倒産はまさに死活問題です。今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では著者で現役弁護士の谷原誠さんが、未払い給料の取り扱いや解雇予告期間など、勤務する会社が倒産した場合の問題点について、法律的な視点を中心に解説しています。
会社が倒産すると会社は?従業員は?
こんにちは。弁護士の谷原誠です。
大型連休が終わりました。一部では、株価暴落があるとか、大型倒産があるとか、色々噂されておりました。
会社員は、自分の会社が倒産するなど、考えたくもないでしょう。しかし、東京商工リサーチの統計をみると、2018年は、8,235件の倒産があったそうです。
倒産といえば、「破産」を思い浮かべるでしょうが、会社が破産した場合には、どうなってしまうのでしょうか。
今回、簡単に説明しておきます。
破産は、裁判所による手続です。裁判所に対して、破産手続開始の申立をします。そうすると、裁判所が、破産手続を開始させてもいいかどうか、つまり、債務超過か支払不能に該当するかどうかを審査し、要件を満たすようであれば、破産開始決定を出すとともに、破産管財人を選任します。
破産管財人は、破産会社と利害関係のない弁護士です。
その後は、破産管財人が破産会社の全権限をもって、全ての会社財産をお金に換え、それを租税や債権者に対し、配当していくことになります。その手続が終了すると、会社は消滅します。
中小企業の場合、会社の代表者が借入金の連帯保証をしていることが多いので、会社と同時に代表者も破産することが多いです。その場合には、代表者は、自宅その他、全ての財産を失うことになります。
さらに詳しくは、こちらをお読みください。
● 会社の破産手続きの流れを徹底解説
● 会社の破産を弁護士に相談したほうがよい5つの理由
では、会社が破産すると、その会社に勤務していた従業員はどうなるのでしょうか?
会社が破産すると、会社はその営業をすべて停止します。営業を停止しますので、従業員は仕事がなくなりますので、破産申立の直前に解雇されるのが通常です。
労働基準法上、会社が従業員を解雇するときには、30日前にこれを予告するか、これに代わる解雇予告手当を支払わなければなりません。
しかし、債務超過や支払不能に陥っている会社が解雇予告手当を支払うことは難しい場合も多いです。つまり、突然解雇を言い渡されて仕事を失い、給料が払われなくなってしまう、ということです。
この場合には、従業員は、会社に対する債権者として、配当を求めていくことになります。給与債権は、取引上の売掛債権などよりは優先されますが、それでも全額払われない場合も多いです。
そのため、「賃金の支払の確保等に関する法律」というものがあり、「独立行政法人労働者健康福祉機構」が破産した会社に代わって未払い給料の一定の部分を立て替え払いする「未払賃金の立替払制度」が設けられています。
この制度により、原則として、未払い給料の8割が立て替え払いされることになっています。
会社から給料をもらっている人は、突然給料が払われなくなる、という事態など想定外だと思いますが、現実問題としては、そのようなことが起きています。
いざという時のためのお金は、なんとかやりくりして貯めておいた方がよいと思います。ご相談は、こちらから。
今回は、ここまでです。
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