インテリアにこだわりを持つ人やSNSでの「映え」を家選びの基準にする人が増えてきている昨今にあって、エアコンをインテリアの一部として考える企業が注目を集めています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、ダイキン工業が展開する「risora」というエアコンに注目し、同社の戦術と戦略を分析しています。
消費者の立場に立って考える
今号は、注目を集めている「エアコン」を分析します。
● 株式会社ダイキン工業が展開しているエアコンブランド「risora(リソラ)」
戦略ショートストーリー
自分の部屋に合わせてエアコンを選びたい方をターゲットに「デザインへのこだわり」に支えられた「自分の部屋に合ったエアコンが見つかる」等の強みで差別化しています。
エアコンが理想の空間づくりの一部になってくれるという価値が高く評価されており、3Dシミュレーションなどをとおして確認できることも、顧客から支持されています。
■分析のポイント
これまでエアコンを提供している各社は機能を向上させることで差別化を図ってきました。これは、エアコンを部屋を冷やしたり、温めたりすることで部屋の状態を快適にする道具として見てきたことの表れです。
そのような中でダイキン工業の「risora(リソラ)」は、機能に加えて理想の空間づくりに貢献する道具として位置付けています。言い換えれば、エアコンをインテリア(室内装飾品)と考えたということですね。このことが新しい価値の提供につながっていると思います。
インテリアと言えば、カーテンや壁紙などが該当しますが、壁紙の色を変えたことに合わせて、カーテンの色を変えることはあっても、エアコンの色を変えるという発想は、いままでなかったですからね。ですから、自分の部屋を理想の空間にしようとしてもエアコンがネックになってしまうこともあったはずです。
以前、ログハウスに宿泊したことがありますが、壁も床も天井も木材である空間に、白いエアコンが付いていることで、雰囲気を壊しているように感じたことがあります。もし、木目調のエアコンであれば、馴染んでいたかもしれませんね。
そういったことから考えても正面パネルを600色から好きな色に塗装できるサービスは特にインテリアにこだわる方にとっては、価値あるサービスと言えるでしょう。
大手家電メーカーが提供している家電製品(電話、冷蔵庫、TV、洗濯機など)には、パネルの色を600色から選べる(カスタマイズできる)ようなサービスは見当たりませんので、ダイキン工業の「risora custom style(リソラ カスタム スタイル)」が消費者の立場に立って考えられたサービスであることが際立っています。
今後、ダイキン工業のエアコン「risora(リソラ)」が消費者にどのように受け入れられていくのか、そして、様々な家電にカスタマイズできるサービスが広がっていくのか注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):ルームエアコン
- 競合(お客様の選択肢):大手家電メーカーの既存エアコンブランドなど
- 状況:エアコン市場は好調に推移しているようです。
■強み
「自分の部屋に合ったエアコンが見つかる」
- 自分が理想とする(自分好みの)空間が作れる
- 居住空間の雰囲気を損なわない
- 和洋どちらにも合わせられる
- 内装と合わせてシミュレーションしながら選ぶことができる
- 選ぶのが楽しい
- 600色のカラーバリエーションに塗装で対応
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
「フォルムだけでなく、カラーや質感にまで及んだデザインへのこだわり」
- 運転してパネルが開いても、美しいシルエットを保つデザイン(運転中も美しさを追求する)
- 独自の質感を作り出すために幾重にも色、質感を重ねるインモールド成型技術を採用
上記のような、こだわりなどが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 自分の部屋に合わせてエアコンを選びたい方
- 自分の部屋の空間づくりにこだわる方
- 自分の部屋のインテリアにこだわる方
◆戦術分析
■売り物
ルームエアコン「risora(リソラ)」
→コンセプトは「理想の空間の一部になり、心地よさを届ける」
- risora custom style(リソラ カスタム スタイル)
→正面パネルを600色から好きな色に塗装できる有料オプションサービス - 室内機は、圧迫感を無くし室内に溶け込むために奥行きを抑え業界最薄を実現(自社調べ)
- 表面加飾により、マットな質感やツヤ感を実現
- 部屋に馴染ませるために、室内機の両側面を内側に絞り込むことで、圧迫感の軽減
■売り値
- 「6畳用で約9万円、14畳用で約13万円(ヤフーショッピング価格)」
→「risora(リソラ)」は中級機という位置づけ。ダイキン工業が展開している「うるさら7」は上級機 - 「risora custom style(リソラ カスタム スタイル)」の料金は約4万円~約6万円
■売り方
- 「risora」をリビングダイニングを模した3Dモデル上に配置して、豊富な種類の壁紙、カーテン、床材との組み合わせを確認できるWebツール『risora 3Dシミュレーション」を展開
- ノルトライン・ヴェストファーレン・ デザインセンター(ドイツ)主催レッド・ドット・デザイン賞 プロダクト・デザイン2018 受賞
■売り場
- ダイキンプロショップ、家電量販店、ヤフーショッピングなど
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by: 『 DAIKIN risora』公式ホームページ