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食品工場のプロはなぜ名刺に「ひよこ」のマークをつけているのか

食品製造の現場においてはミスは許されず、ひとたび「安全でない食品」を提供してしまった際のダメージは計り知れないものがあります。今回の無料メルマガ『食品工場の工場長の仕事』では著者で食品安全のプロである河岸博和さんが、「食品の製造に携わる人間すべてが持つべき考え方」を記しています。

従業員教育の基本

毎日食べる食品は、安全でなければならないのです。安全と言うのは、食品を食べたときに体に危害を与える食品ではないと言うことです。食中毒にならない、異物が入っていない、アレルゲンが表示通りであると言ったあたり前の事が出来ている商品が安全な商品になります。給食で食べたプリンでノロウイルス中毒になってしまったら、安全な食品とは言えないのです。

食品は毎日毎日食べるものです。一度安全でない食品を製造しお客様に提供してしまうと、お客様は商品に対して安心感が無くなってしまいます。たった1回の異物混入、食品事故で、何十年も培って来た信用がなくなってしまうのです。

食品は、安全でおいしく、機能がなければなりません。毎日毎日同じ物を作り続け、たった1回の異物混入、食品事故で、お客様は会社に対しても安心な会社では無くなるのです。一度のミスも許されないのが食品製造の管理だと思っています。

誰の顔を見て仕事するのか

私が、品質管理のセミナー、教育を行うときに必ず使う言葉です。

あなたの大切な人の顔を思い浮かべてください
大切な方にあなたの工場の製品を食べさせる事が出来ますか

と話します。「あなたの大切な人」、この大切な人をイメージするためのイラストが、私の名刺などに使用して居る「ひよこ」の絵なのです。ひよこの名前は「ぴよちゃん」と言うのですが、ぴよちゃんがアイスクリームを食べています。

もしこのアイスクリームが腐っていたとしたら、異物が入っているとしたら、化学薬品が入っているとしたら、食べてはいけないアレルゲンが入っていたとしたら、期限の過ぎた原材料を使用して居るとしたら、あなたは、工場の中で、製造する事ができますか。工場の中で生産した物をあなたの大切な方に食べて貰うことが出来ますか。「北海道産の牛乳を使用して居る」と表示しながら、他の産地の牛乳を使用してアイスクリームを製造することができますか。と従業員に私は教育をするのです。実際に自分たちが作った製品を食べる方の顔を思い浮かべて作業することで、何をしたらいけないのかが新入社員でも具体的に考える事が出来るのです。

家庭での作業よりも厳しく

自分の赤ちゃんが使用する哺乳瓶は使用する前に必ず洗浄殺菌を行います。もし、自分の子供が、小麦アレルギーだったとしたら、子供専用に鍋を使用し、子供専用の醤油を用意していると思います。

「工場で使用する器具は必ず洗浄殺菌していますか」。特にお客さんがそのまま食べるもの、たとえばスライスハムなどを包装する時に使用して居る備品器具は、使用前に哺乳瓶のような洗浄殺菌をしていますか。アレルゲンが異なる製品を作るときに、自分の子供に対するのと同じような区分を行っていますか

工場で長年作業をしていると、作業に慣れてしまいす。特に大きなクレームが起きていないと「まーーこんなものか」とおもってしまい、基準がどんどん甘くなってしまいます。特に工場の責任者から、作業性、生産性のノルマを課せられると洗浄殺菌、アレルゲンの区分が特に甘くなってしまう傾向にあります。

工場内で働いている方は慣れてしまって問題意識が薄くなってしまうのですが、外部の視点で点検を行うとびっくりすることがままあるものです。毎年定期的な教育が必要な点は外部の目を従業員に意識させることにあるのです。

本当に今行っている作業が大切な人に食べてもらえる食品を作っているのかどうかを気づいてもらうきっかけになるのが定期教育の基本だとおもいます。

あなたの工場の会社の名前、マークに恥ずかしく無い仕事をしていますか。あなたの工場、会社にはマスコットがありますか。あなたの会社のマスコットに恥ずかしく無い作業を今行っていますか。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 河岸宏和(食品安全教育研究所 代表) 【発行周期】 ほぼ 週末刊

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